十八話 エピローグ
前回のあらすじ
謎のモンスターとの最終決戦に無事二人は勝利した。
気づくとそこは自分の知らない場所だった。
自分の正面が真っ白な天井だから、きっとベッドの上なのだろう。
右をみると、サイドテーブルに名前も知らないような花が生けてあり、窓からは青空がみえる。
辺りを見回すと、ここは個室のようだ。
「病院か。」
自身の腕には点滴の針が刺さっている。
頭に違和感があるのは包帯かなにかだろう。
「うっ………」
体を動かそうとするが、全身に痛みが走った。まだ回復してないようだ。
記憶は鮮明に残っている。それだけは安心材料だ。
しかし、ナースコールを押すにも腕が動かないんじゃ厳しい。
次に人が来るのがいつになるのやら。
「はぁ。」
サイドテーブルにある電子時計をみると、あれから一日がたっているようだ。
一日寝たくらいでは力を使いきる代償を払いきれないんだな。
俺はそこから人が来るまでいろんなことを考えた。幸い看護師さんが来たのがそれから一時間半後だったからなんともなかったけど。
トイレ行きたくなったら終わってた。
今回の戦いでの問題を洗い出しているうちに、俺の頭のなかはこんがらがってしまった。
なんとか絞り出したのが以下のことだ。
俺が倉木さんを助ける直前、何か光がモンスターからの攻撃を守った。
俺の正体がばれた。
それについての口封じができないままに気絶してしまった。
あのモンスターが何者かについての謎が解けなかった。
どれも考えても仕方のないことばかりで、特に正体については早く広めないでほしいとの意思を伝えたいが動けないと言う状況に歯噛みしていた。
看護師さんは俺が起きたのを確認すると、すぐに医者を連れてきた。
一応担当医らしいが、ただの全身の筋疲労と全身打撲と貧血らしい。ただ、と言われていい気分はしないな。
まぁ、実際そんなに大きな怪我もなく、一週間ほどでもとのように動けるようになるようだ。
筋肉痛については我慢するしかないようだ。
そして最重要問題。
「トイレは、どうすれば…」
「動けないなら瓶や、オムツと言う選択肢もありますけど、どうしますか?少しでも動けるなら、トイレまで車イスで移動しますが。」
いまは動けない。だが、あと何時間かあればちょっとは動けるようになるかもしれない。
とにかく俺は漢としての尊厳を守るため、
「車イスで。」
キメ顔で言ってやった。
聞くと近くに倉木さんの病室もあるようで、彼女はもう起きているが、あちらも今は動けないらしい。
それから一時間ほどで迷宮省の方がわざわざ病院までやってきてくれて、ことの顛末を教えてくれた。
まず、雷帝から迷宮省に救助要請が入った。
そしてその時近くにいたランカーが助けに来てくれた。
着くとそこには二人が気絶して倒れていて、近くに巨大な魔石が落ちていた。
ランカーは救護班を呼び病院まで付き添ってくれた。
しかもそのランカーというのが、倉木さんの幼なじみらしい。
魔石に関しては、二人でどうするかを決めると言うことになったと言う。
まぁなんとも偶然があるものだ。
だが、それで助かっているのだから感謝しかない。
魔石に関しては、正直お金がほしいが口止め料として全てあちらに渡そうと思う。
というか俺が倒したのではなく、彼女が倒したと言う見解が迷宮省や第三者ではなされているようで、そもそも俺がもらうものはないと言う雰囲気だった。
ちょっと悔しい。オカネホシカッタ。
それから全身に湿布を張り、痛み止を飲んだ俺は効いてきたのか無事トイレにも行けるようになりました。
トイレに行く途中(車イスで看護師さんに押してもらってます。)、倉木と書いてある病室を見つけた。
だけど中に誰かいるみたいだったので声をかけるのはやめておいた。
病院にかかってしまったことは親にも話が行ったらしく、親から連絡が来た。
結構本気で心配してくれてたみたいで、大人ながら少し感動した。
雷帝さんからも連絡が来た。
どんなに怒られるか、と思ったが、そんなことはなく無事でよかった、と言われた。
でも、やはり弟子が心配なようで、奥さんと共に今横浜まで向かっているらしい。
本当は昨日には行きたかったらしいのだが、奥さんが私も行くと聞かなかったようで、準備を整えて車で向かってきているようだ。
まぁ色々あったが、久しぶりに一日中ベッドの上で過ごすというだらけた生活をした。
「うーん。めっちゃカットされてるのな。」
もう夜になろうかというところで、ちょうどこの前の収録した回のテレビ番組がやっていた。
あんなに収録したのにほとんど使われていない。
これがテレビの闇か!!なんてふざけて言ってみたり。
「闇ではないんじゃないか?ははっ。」
ビックリしてドアの方をみると、雷帝さんがいた。
「あっ、こんにちは。今回は本当に迷惑をかけてしまってすみませんでした。」
「いやいや、君も全身ぼろぼろだったみたいじゃないか。謝ることはないよ。」
彼はとても優しく笑ってくれる。だが、俺がもっと早く、、と思ってしまうのはしょうがないだろう。
雷帝はふと俺のベッドの横をみて目を見開き言う。
「鹿取くんまさかそれを使ったのかい!?」
視線の先には尿瓶が。
「使ってません!!意地でトイレまで行きましたよ。」
「ははっ!そうだよな。俺も昔入院したとき、尊厳を守るため意地でもとトイレまで行ったよ。」
それから十分ほどことの経緯を嘘を織り混ぜながら語った。
「それじゃあ俺と妻は近くのホテルをとってあるから。また明日来るよ。あっ、そうだ。大悟くんとはあったかい?」
「ああ、助けてくれた倉木さんの幼なじみの。自分まだ倉木さんとも話せてないので。」
「そっか、きっと明日も来るだろうから少し話したらどうかな?」
「はい。わかりました。今日はありがとうございました。」
雷帝さんが病室から出るときに、ドアを開けたタイミングで車イスに乗る女性が見えた。
きっと彼女が雷帝さんの奥さんなのだろう。
会釈するときにはすでにドアはしまっていた。
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