十七話 覚醒の決意
前回のあらすじ
ダンジョンにスキルの検証に来ていた二人は、突如謎のモンスターに襲われる。
「嵐滅天!!!!」
倉木さんの体の周りに竜巻が起こり、それがモンスターに向かっていく。
ふれる触手は魔法に抉りとられていく。
モンスターも危険を察知したのか逃げようとするが、それは時既に遅く全身を覆い尽くされる。
ゴガガガガガガァァァァアアアア!!!!
地面とモンスターの削れる音が16層一体に響く。
どんどんとモンスターの血肉を削る。
それらが飛び散っている。
しかし、その際後の一片まで差し迫ったところだった。
「???????????」
言葉になら無い音を発した途端、全方位に熱風を放った。
俺は吹き飛ばされ、十メートルほど後退する。
全身を地面に打ち付けられ傷だらけだし、正面は火傷している部分がほとんどだ。
「倉木さん!!」
俺はすぐに彼女を探す。ここから30メートルは離れているだろう。
そこへ向かおうとするが、あるはずの無いものに妨げられる。
触手だ。
「どうして、消し飛んだはずなのに!!」
やつは先ほどの二倍の大きさになって復活していた。
どういうことだ!?倒すとでかくなられたら倒しようがないじゃないか。
ともかく俺は触手を避けながら倉木さんのもとへ向かう。
彼女は遠目から見ても、スーツが焼け肌が見えているし、気絶している。
「あと、十メートル!!っ!?!?」
あと少しと言うところで、俺への攻撃をやめた触手は、すべてを倉木さんの方向へ向ける。
いまは三百本、いや、わからないくらいある触手すべてが、彼女に向かう。
「!?ふざけんな!!」
俺は全力で止めに向かう。
しかし、間に合わない!!
守れない!!
「やめろぉぉぉぉおおお!!!!」
触手は無情にも倉木さんをとらえる。
その瞬間だった。
青白い光が倉木さんを包み込んだ。そして触手が弾け飛び、倉木さんは何かに守られている。
俺は勢いのままに倒れている彼女のもとへ膝をつく。
そのまま抱き上げる。
全身が火傷をおっているが、触手の攻撃の影響はなさそうだ。
「大丈夫!?」
「うっ、に、逃げて」
彼女は俺の手を取り、逃げるよう言う。
弾かれた触手が、もう一度こちらに攻撃をしようとする。
俺はつかまれた手を、反対の手で覆い返す。
「逃げない。」
俺はすくっと立ち上がり振り返る。
眼前に触手が迫ってきている。
こんな時もっと粋な言葉をかけられれば安心させることができたんだろうけど。
なんなら、もっと早くそうするべきだった。
そうすれば彼女は傷つかずにすんだのに。
俺はどこかで、この力を自分の力と思わずに、使いたくないと感じている部分があった。
それさえなければ…。
「貴様は絶対に許さない。」
目の前のモンスターと俺へ向けて。
「力を寄越せ!!!」
瞬間俺の周りに金の光の竜巻が起こる。
それはうねり触手を弾き、抉っていく。
それらの光の粒が収束し、俺の体の中に入ってくる。
「う、そ。」
倉木さんは俺を信じられないようだ。
無理はない。訳のわからない生命体の正体が俺なのだから。
なんならこのモンスターよりも俺の方が不可解だ。
俺は安心させるように彼女を見つめる。
目はないし、口もないが、伝わっていてくれると嬉しい。
触手がほとんど抉りとられた肉塊は再生しようとしている。
先ほどの倉木さんの攻撃。少し残っているところからの超再生だった。
であれば一気に消し去るしか方法はないのだろう。
俺は一気に距離を詰め、周りの触手をどんどんと抉りとっていく。
その触手は総じて炭化して崩れ落ちる。
(本当にきりがないな!!)
この体は制限がある。長い時間いればいるほど苦しくなるし、動きが鈍くなる。
ほとんど触手を抉りとったところで、俺は肉塊に飛び込む。
(中から消し飛ばす!!)
一片も残さない。残せばまた大きくなって帰ってくるだろう。
そうなれば、俺のエネルギーも限界に達するし、次こそ二人とも死ぬ。
肉塊の中心に入ったところで、全身のエネルギーを解放する。
ただ、これは自分の守護者として存在するためのエネルギーを放出しているわけだから苦しい。
俺の近くからだんだんと炭になっていくのがわかる。
(苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい!!!)
制限のあるものを一気に出すのは、想像以上に厳しい。
(しぼりだせぇぇぇええええ!!)
最後の一滴まで。もうなにも残らないほどに。
周りの温度が一気に上がっていく。モンスターの体ももうほとんどが炭となり、最後の皮まで消し飛んだ。
自分の体を見ると、体は既にもとに戻ってしまっていた。
勝ったのか。
ザザッ
嘘だろ!?これで倒しきれないと、終わる!!
振り向くとそこには
「わた、しが、やりました。」
最後の一片を魔法で潰しきり、笑う倉木さんがいた。
「ありが、とう。」
守護者の力を使いきった代償は大きいらしい。
もう息をするのも苦しいし、死んでしまいたいとすら思うほど全身が痛い。
俺は地面に倒れこんだ。もう地面が痛い。
帰りたい。
なけなしの力で目蓋を持ち上げる。重い。
二ミリほどしか空かないが、倉木さんが俺の目の前で倒れていることを確認する。
「だ、いじ………」
そこで俺の意識は途絶えた。
感想、評価、ブックマークありがとうございます!!!!!!
とても励みになってます!!!
感謝感激です!