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十六話 謎とのエンカウント

前回のあらすじ

ダンジョンに倉木さんとスキルの検証にやってきた。色々試してみるうちに、彼女のダンジョンに対する気持ちなども聞くことができ、少し信頼関係ができる。

  異様な空気を感じたのは、俺が倒したラットの魔石を拾おうとしたときだった。


 

  「鹿取さんっ。音がしません。」


  「どう言うこと?」


  俺はすぐに自身で音を立てるのをやめて、耳を澄ませる。


  「確かに。だけどなんでだろうな。人がいない階層でも、モンスターはいるはず。」


  「はい。気を付けてくださいね。何かあってからでは遅いので。とりあえずすぐに帰りましょう。」


  「上に行く?下に行く?」


  ここは16層。下の20層に行けば安全だが。


  「上です!!」


  「どうしてって!?!?」


  俺は倉木さんに突き飛ばされた。


  そして、俺のいたところは音もなくなにかが居座っている。


 

  「スライム?それにしてもでかいな。5メートルはあるか?」


  「私はこのモンスターを見たことがありません!また、ダンジョンでは変異種というのは確認されてませんし、もしかしたら下から来てるかもしれません!!」


 

  下から……。それはすなわち



  「モンスターパレード?」


  「パレードではないですけどね!」


  すぐに俺たちは臨戦態勢をとる。


  腕の化石はそのままだ。


  こちらの様子を見るや否や、相手の体から全方位に触手が延びる。



  なんだこいつは?本当にこいつが何者なのか。それがわからないことが"わからない"。



  「解析!!」



  ???????


  スキル超速再生




  「倉木さん!!こいつは再生もちだ!」


  「わかりました!」


 

  言うとすぐに俺と倉木さんの間に触手の弾丸が撃ち込まれる。


  触手が地面に突き刺さり、大きな穴が空いた。


  「当たると不味いな。」


  全身には100本以上もの触手が生えているように見えるし、再生能力があるとなれば、おそらく核があるはずだ。



  「とりあえず触手からの攻撃をかわしながら作戦を考えましょう!!」


  俺と倉木さんは、モンスターを挟むようにしながら触手たちの攻撃をかわしたり止め続ける。


  幸いなことに、触手はそんなに固くはなかったので、切ることができることも判明。



  「倉木さん!!爪!早速役立ってます!!」


  「良かったですね!!」


 

  常にかわしたりしながら会話をする。


  だが、実際には余裕がない。


  決め手がないのだ。お互いに体力だけが奪われていく。


  ちなみに、スピノサウルスの爪についてだが、ラットの肉を切ったときに新たなことが判明。


  指先の筋肉が一気に発達していたのだ。つまり、骨だけではなく、それを支えるための健や筋肉も再現されると言うことなのだろう。


 



  俺は常に動き続け、腕で触手を止めて爪で抉り切ることを繰り返す。


  倉木さんは風系統の移動系魔法で全部避けながら、風の刃を出して応戦している。



  「どうしますか!?」


  俺は耐えきれなくなり言う。倉木さんは年下だが、探索者としては先輩だ。彼女の指示に従うのが最善だろう。


  「わかりません!とりあえず私が持たされている危険信号を発信する機械を使いました!師匠が迷宮省に連絡して、助けが来るはずです!」



  だが、それが来るのはあと一時間はかかるだろう。それまでというのは厳しい。



  「ともかくこいつを倒すことを考えましょう!通常再生能力を持つモンスターは、全て核を持っています!!私が魔法で表面の触手とあらかたの肉を吹き飛ばすので、核が見えたら破壊してもらえますか!?」


  「はい!」



  俺はすぐに倉木さんの方へ回った。


  それを合図とするように、倉木さんが魔法を放つ。



  「風烈陣!!」


  モンスターはほとんどが吹き飛んだ。しかし核はない。


  「無いです!!」


  「そんな!?」


  吹き飛んだはずの肉片は一気にモンスターの体に戻り、完全体になっていた。


  「再生が速すぎる…。それに魔力が。」


  不味い、魔法を使いすぎている倉木さんは魔力が持たなそうだ。


  きっと雷帝さんと戦うときは、お互いにマジックポーションを飲むタイミングがとれるのだろう。


  だが、俺だとそれもできないと言うことか。




  「俺が倉木さんの前で攻撃を受け止めます!!できるだけ回復させてください!!」


  俺は腕についている盾に加えて、装甲をクロスさせ攻撃を受け止める覚悟を決めた。


  「すみませんっ!お願いします!」


  すぐに彼女はマジックポーションを飲み始めるが、彼女の強い魔法の消費量からいって、一本では足りないだろう。


  「二分くらいか。」


  触手の攻撃はとどまるところを知らない。一番厄介なのが、後ろ手しゃがんで回復している倉木さんを脇から狙おうとする触手があることだ。


  「卑怯ものがっ!」


  ただ止めることしかできない。全身に武器をつけているが、一瞬でも防御を緩めれば倉木さんだけでなく、俺も体を貫かれるだろう。



  「そもそもなんなんだ?こいつは!!」


  「わかりません!!私は見たことありません!」


  そう。見たことがない。


  見たことが。


  知らない。




  今まで知らないことがあっただろうか?


  「今まで知らないモンスターを見たことがありますか??俺たち人間が説明できないようなものを!」


  今までのモンスターはすべて、俺たちの知っている、もしくは人間が作り出した想像の産物だった。


  ゴブリン、スライム、ドラゴン。


  だからこそ、俺達は疑うこともせずダンジョンに入ることが出来ていた。


  「……ありません!!」


  そうだ。ない。


  であるならばこいつは…。




  「俺の敵か?」


 

  ダンジョンと言う未知の存在が、精神攻撃や、ステータス、魔法による好奇心で人類をダンジョンに引き寄せようとしていたことは明白だ。


  であるとすれば、こいつは逸脱した存在。


  ダンジョンの真理に近づけるものかもしれない。



  「回復終わりました!!行けます!!」


  「了解!!」


  再び二人は別れる。



  「さっきの再生だと、一片のこらず消すしかないみたいです!!」


  そうだ。それしかない。


  だが、俺が足を引っ張っている。魔法が使えない俺は、波状攻撃やなにかを消すと言うことを短所としている。


  俺は切ったり殴ったりすることしかできないからだ。


  俺にできることは、



  「こいつの気を引くから、攻撃は頼んだ!!」


  囮しかない。



  「来い!!化け物!!」


  俺は頻繁に全身の武器でこいつの注意を引く。


  できるだけ倉木さんの方へ行く触手を減らす。


  剣で切り落とし、槍で突き刺し、爪で抉る。ただそれだけしかできない。


  そしてそれらの攻撃総じてこいつにはほとんど意味をなさない。




  「鹿取さん!!行きます!!」


  最後の攻防だ!!

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