十三話 デート??
よろしくお願いします!!!
「こんにちは。」
俺は上野駅構内で辺りをキョロキョロしている倉木さんを見つけた。
まぁわかる。上野駅はどっちの口から出るのが正しいか分かりづらいから。
俺もはじめは何度か迷ったし、駅員さんの手を借りることもあった。
彼女は俺の存在に気づくと、すぐに不安そうな表情は消し飛んだ。
「こんにちは。すみません。分からなくなってしまって。」
「いいよ、分かりづらいし。こっちだ。」
俺は彼女を先導することにした。
休日ともあって、周りは家族連れやカップルが多い。後は学生か。
人の波にのっていれば大抵は着くのだが、博物館の周りには動物園と美術館もある。
適当な人についていくと迷ってしまう。
俺は辺りを見回して、昔を思い出しながら進んだ。
「あの、来たことあるんですか?」
倉木さんがふとたずねる。確かに不思議には思うだろう。
自分から誘った博物館への道のりを、相手の方が知っているのだから。
「うん。小さい頃は毎週母さんに連れてきてもらってたし、社会科見学もここだったなぁ。」
「社会科見学が博物館ですか?それって面白いのかな?」
「中1のころだからな。動物園、博物館、美術館を自由に回れるんだ。それも友達と計画して。それまでは親とか付き添いとかいたけどそれがなくなると、一気に大人になった気がするだろ?」
あの頃はなにも考えずに生活するだけで、日々成長できたのだから、日本の教育も侮れないよな。
「そうなんですね。私は名古屋出身だったので全然違うな。」
「どこだった?」
「えっと、工場美術館みたいな?あの頃の私には全く面白味が感じられませんでした。」
確かに。そこに小学生中学生の女の子がいくのはつまらないだろう。
そんなこんな色々話せた。まぁ他愛もない話だが、彼女の家族の話だとか、上野についてとかだ。
「ついたね。ここだ。」
「うわっ、大きい。」
彼女は大きなシロナガスクジラの像を見て驚いている。
「凄いよね、とにかく入ろうか。」
俺と倉木さんはチケットを買い、並んで中に入った。
懐かしい。少し変わっている部分もあるが、まぁほとんど同じかな?
こんな風に変わってないと嬉しいな。子供に帰った気分になれる。
「それじゃあどうする?博物館に興味がないなら化石だけ買って帰ろうか?」
「あ、いえ。今日は博物館の中も観て回ろうかなって思います。お姉ちゃんにもそう言われたので。」
「そっか、きっと休んでほしいんだな。でもここのまわりだと動物園もあるけど?」
「た、確かにそれもいい案ですね。どうしよう。」
迷ってるなぁ。ここは凄く広いから一日十分にいれるんだよな。
それに午後から動物園にいってもそれはそれで時間が足りなくて後悔するんだよ。
子供の頃よく泣いたなぁ。
「とりあえず入って回ってみて決めようか。」
「そうですね。」
午前中は恐竜の化石や動物の剥製などを見て回った。
俺は楽しかったが、彼女はどうなのだろうと不安だったが、俺より楽しんでいそうだった。
特に動物の剥製のところでは一つのところにずっといたりしていて、はぐれそうになったこともあった。
きっと動物が好きなのだろう。
「やっとレストラン入れたね。」
「そうですね。混んでましたから。」
まぁ昔からのことだが、レストランはめちゃくちゃ混んでいたので、二十分は並んだと思う。
ただ、ここは窓から化石やらなんやらが見えるので、並んででも来る価値はあると思う。
「それで、午前はどうだった?っていっても少ししか回ってないけど。こういうのって男の方が好きそうだから。」
「とても楽しかったですよ。私、高校に入ってからいままで遊んだりっていうのがほとんどなかったので。それに私は動物が好きですから。」
「そっか。そういえば高校からダンジョンに入ってるって聞いたけど?」
「はい。最初はずっと家にいた私を見かねて、お姉ちゃんと師匠がダンジョンに観光がてら連れていってくれたんです。」
高校生の時から姉夫婦が同じ家にいるのって気まずっ!
お互いになんか嫌でしょ。なんか。
「そこで私、ダンジョンに魅了されてしまって。夢にまで見た魔法が使える世界に。それから私師匠についていくようになったんです。」
「なるほどね。」
魅了……か。やっぱりこの子もダンジョンに影響を受けているんだろうな。
きっとそんなものなかったら、彼女はこんなに戦ったりすることも無かったんだろう。
もし、今ここで彼女に精神の侵食について教えたらどう思うだろう。
きっと混乱しておかしくなってしまうな。人は自分を疑うことが難しいから。
「鹿取さんはどうしてダンジョンに入ったんですか?ほら、ついこの間まで入ったことすらなかったんですよね?なにか理由があるのかと。」
「たまたまだよ。仕事で忙しかったからね。入りにいくことが遅れたんだ。」
ここで本当のことを言っても仕方ないな。
「仕事されてたんですもんね。それじゃあそっか。」
「おっ、ご飯来た。食べようか。」
「はい。」
ちょうど頼んでいた料理が来たので、話をそらすことができた。
ただ、自分がダンジョンを攻略すれば本当に彼女たちの心は返ってくるのか。
それだけ疑問が残った。
それからまた博物館を回った。
科学博物館と言うくらいだから、科学についても楽しめるエリアがあったのだが、そこでは自分がはしゃいでしまった。
科学はやっぱりロマンがあるよな。
宇宙、星、UFO!男なら一度は夢見たことがあるだろう。
いつかあってみたいものだ、宇宙人。
「楽しそうでしたね。」
全部見終わって、お土産屋にいこうとしているときに言われた。
ニヤニヤしながらだったのでからかっているんだろう。
恥ずかしい思いもあったが、笑顔が見れたのはよかったと思う。
今日も思ったが彼女は滅多に笑わない。だから笑っているのを見ると、少し安心する。
なんだか保護欲的なものが生まれてしまった。雷帝さん、あなたの気持ちがわかるよ。
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