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十一話 お食事会一

前回のあらすじ

ここ一月のソロでの活躍が評価され、テレビ出演が決まった。だが、そこでの話は俺にとって答えづらいものも多く、、。

  「はぁ、疲れた。収録ってテレビと同じ長さではないってわかってたけど、それにしても長いな。」


 

  一時間番組の収録だったのだが、時間は四時間を越えた。おそらく予定よりも長かっただろう。

  理由は当然雷帝にあると思うが。


  今回守護者状態の俺を一番近くで見たのは彼だ。彼の話が注目されるのは当然だ。


 

  「さっさと帰ろう。てかタクシーチケットってホントにもらえるんだな。初めて見たわ。」


  「あぁ、鹿取くん。」



  俺は突然の事にタクシーチケットを落としそうになるも、なんとか手に戻した。


  「は、はい。えっと、雷帝さんとお弟子さん。どうしました?」


  二人もこれから帰るようで、荷物を持って上着を着ていた。というか二人一緒に帰るんだな。結構歳の差あるだろうに。さすが雷帝さんだ。



  「うん。少し君と話がしたくてね。少し時間大丈夫かな?」


  「はいっ。大丈夫です!」



  即答だ。雷帝さんと話すことが出来るというのが一番だが、隣の弟子が「断ったらどうなるかわかってんだろうな?」って顔で睨むんだ。


  若いのにこんな顔出来るのか。今の若い子は凄いな。


  「助かるよ。行きつけのレストランがあるんだ。そこでもいいかい?交通費は出すから。」


  当然ここでも睨みは効いてるわけで。



  「とっ、当然です!交通費は大丈夫です!タクシーチケット貰ったので!」


  そういってチケットを見せる。緊張の手汗でビショビショだ。



  「そうか。なら行こうか。」


  「はい!」



  雷帝は駐車場の先に止まっているタクシーに向かって歩き出した。


  それについて行こうと振り返ったとき


 

  「師匠の邪魔だけはしないで。」



  とお弟子さんが言う。


  年下だけど凄みが効いていて鳥肌がたった。











 


  「ほんとに凄いレストランですね。」



  つれてこられたレストランは明らかに普通のものとは違った。どこが違うと言えば、名前も知らないような高層ビルの上の階にあり、東京を一望できる夜景が窓一面を占めている。極めつけは食事の説明にシェフがいちいち出てくる始末だ。


  庶民気質の俺にとっては、作法はわからんしマナーだってなってるかわからない。ただ二人の見よう見まねで頑張っているとしか。


 

  「だよな。俺も五年前までは考えられなかった。ダンジョンができて俺の人生は変わったよ。運が良かった。」


  雷帝は過去を懐かしむように笑う。



  「運が良かったなんてないです。師匠は自分の力で手に入れたものですよ。」


  弟子が食いぎみに言った。相当入れ込んでいるようだ。


 

  「ははっ、だが実際スキルは運だしな。それに、あの時自衛隊を続けていたらこうはなっていなかったよ。」


  「え、自衛隊に所属されていたのですか?」


  「ああ。ただ、ちょうどそのときやめようと思っていた頃だったんだ。」


  「それはどうしてか聞いても?」


  聞いてもいいものかと悩んだが聞くことにした。


 

  「いいよ。隠すことでもないしね。ちょうど親が病気にかかっていたんだよ。両親共にね。だから介護をしないといけなかったんだ。だけど自衛隊はなかなか自由のきくところではなくてね。」


  「なるほど、だから。ではご両親は?」


  「うん。今も元気さ。ダンジョンに入ると体が強くなるからさ。本当にダンジョンは俺の人生を救ってくれたんだ。」



  人生を救った……か。確かにこの話を聞くとそう思えるな。それに、これから同じようなケースも出てくるかもしれない。

  そうなったら俺が目的とするダンジョンの撲滅は、本当に地球のためになるのか?



  「おい、大丈夫かい?なんか悩んでいるようだったけど。」


  「ああ、いえ。大丈夫です。あの、ところでお二人はダンジョンについてどう考えていらっしゃるのですか?」



  ふと聞いてみた。話の流れ的には別にぶれていないし、変に怪しまれないだろう。

  精神へ何かしらの介入がなされた人の意見はどうなんだろうと興味が湧いたのだ。

  あの時ヒーローだったこの人でさえ、ダンジョンによる精神攻撃を受けているのだから。



  「……いきなりだね。そうか。それはきっとこの前の事件も含めての事だよな。」


  「はい。横浜で世界初のモンスターパレードと呼ばれるものが起きました。今までダンジョンは体を健康的にし、エネルギー面でも地球に優しく、人類に新たな進化をもたらすと言われてきました。でも……」


  「うん。言い面だけとは言えなくなってきているな。特にあのドラゴン。俺では手に負えなかった。もし、彼がきていなければ世界がどうなっていたかもわからない。それに、別のダンジョンも、と考えると。」



  そこでお弟子さんが話しを繋ぐ。


  「日本に三つ、世界には百を越えるダンジョンがあります。もしこれからあのようなことが起これば、世界は滅亡しますね。」



  なかなか悲観的なんだな。なにか希望を持っているのかと思っていたが。



  「何ですかその顔は。あなたも私が子供の癖にって思うんですか?」


  「い、いや。結構現実的なんだなって。」


 

  やっぱり最近の女の子怖ぇぇ。


  「そうですか。まぁ、それはいいです。師匠でも手に終えない敵がダンジョンにいるとしたら、世界でそれが起きれば止められなくなる可能性は100%です。」



  「ああ。日本だけで言えば、一位の皇帝ならまだやりあえるかもしれないが、三つのダンジョン一斉となれば終わりだ。まぁ、彼がいれば別だがな。」


  「彼、ですか。」


  「ああ。」


  「私は信じられませんね。得たいが知れません。」


  正直その通りだ。俺からあの状態でなにかを発信することはできない。出きるならモンスターを相手にして、奴らの敵であると示すことだけだ。

 


  「あっ、すまない。少し電話にでないといけない。少し若いもの同士で話をしていてくれ。」


  「わかりました。ですが師匠はまだ若いです。34は。」


  「ははっ、そう言うのは君だけだ。では行くね。」



  34か。まぁ人生百年時代だからな。それで言うとまだまだ若いと言えるだろう。それに、日本二位で現役なんだからそれでおじさんって言われたら、世の中皆おじさんだ。


 

  だが、それにしても気まずい。彼が行ってから一分は経つがまだ話の一言すらない。

  いや、ここは大人である俺が言うべきか。



  「あ、あの。俺は鹿取といいます。よろしくお願いします。」


  「ああ、はい。よろしくお願いします。」


  「えっと、倉木愛唯さんであってるよね。凄いね。19であんなに戦えて。あの時凄くかっこ良かったよ。」


  「私は26から探索者始める方が凄いと思いますけどね。見た感じ全くの素人でしたし。」


 

  うわっ、感じ悪いな。少し美人で少し若いからって。


  まぁそんなこと言えるはずもないんだけど。


  「そうだよね。ねぇ、君って雷帝さんのこと好きなの?」



  俺は少し小声で彼女に言った。



  「なっ!?そんなことありません!そもそも恋愛なんてほとんどしたことないし!強いて言うなら憧れです。変なこと言わないでください。セクハラで訴えますよ。」



  最初は顔を赤くしたものの一瞬で捲し立てられた。

 

  て言うかこれだけでセクハラになってしまうのか。今の世の中生きづらいな。


  「ご、ごめん。てっきり付き合っているものかと。」


  「ありません。それに師匠には奥さんがいます。」


  「え、そうなんだ。知らなかった。」



  ほへー。奥さんがいると。そりゃ手出せないわけだ。


  「おう、すまない。どうだ、仲良くなれたか?」


  ちょうど話が途切れたタイミングで雷帝が帰ってきた。



  「いえ、ありません。」


  淡々と彼女が答える。まぁ、べつに俺も異論はない。


  「なんだぁ、今の若いのはコミュ障なのか。お前もそれじゃあ結婚できねぇぞ。なぁ、鹿取くん。」


  「よ、余計なお世話です!それに、鹿取さんも頷かないでください。」



  おっといけない。今までで一番スムーズに首が動いてしまった。


  「あ、そうだ。一ヶ月やってみてどうかな?注目されるくらいだからスキルとかいいのがとれたとか?」


  「ああ、いえ、そんなことはありません。魔法系は一つもなくて。」


  「えぇ!?一月やってかい?相当運が悪いんだね。」



  そういって雷帝が倉木さんに同意を求める。


  「運命ですね。」


  嘲るように言った彼女に俺は少しカチンときた。



  「でも、ついこないだ新しいスキルを手に入れたんですよ!」



  「おぉ!それはなんだい?」


  「はい、でも自分も知らなくて。名前は化石覚醒って言うんですが。…」

 

 

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