一話 始まりの出会い
よろしくお願いします!!!
「はぁ、引き返すべきだったなぁ。」
俺は二時間前の自分を恨んだ。最近腹に肉がついてきてしまったために、運動をしようと決めたのが昨日。そして、ネットサーフィンをしていたら、海辺を気持ち良さそうにサイクリングしている動画を見つけたのが今朝。今まで一度もやったこともないのに、高校時代運動部だった頃を思い出しながら、行けるだろうと決心した。
俺は現在都心から少し離れた場所のアパートに一人暮らしだ。一番近い東京湾までも四十キロほど離れている。だけど行ける気がしたんだ。
そして二時間前、四十キロこいで海まで出ることが出来た。そのときの達成感といったらここ最近では感じなかったほどだ。
仕事仕事の毎日で、本当にやりたかったことはこれか?と思うほどの激務だった。ちなみに俺の仕事は芸能マネージャー業で、休みはほとんどないと言ってもよかった。
海についたはいいものの、俺の足はその時点で限界を迎えた。限界も限界。一歩進めばどこかがつるという現象が俺を襲った。ほとんど景色を堪能することなど出来ない。
そして、俺はホテルに泊まるため、海辺を歩き続けていたのだ。何個か回ったが、ほとんどが満室だった。理由は当然。ダンジョンだ。いや、迷宮?まぁ、そんな感じのやつだ。
五年前。世界に突如現れた地下や空に続く迷宮。そして二年前に迷宮省発足。世界でも同様の動きで、民間開放を進めた。最初は軍が対応に当たっていたが、国民がデモやら何やらで訴えまくった結果、安全性も確認されたとして開放された。らしい。
「はぁ、ダンジョンの近くのホテルはほとんど空いてないとか、もう無理じゃんか。家に戻る気力もないし、本当もう無理。」
俺は自転車を海沿いのガードレールに立て掛けて、自分以外いない状態の海岸を休める場所を探し歩いた。砂に足を取られながらも、岩壁沿いに手をつきながら進んだ。
「ん?ここなんか緩いな。」
ここまで歩いてきた砂浜とは異なり、足下が異様に沈む。気を抜けば足首まで砂に埋まりそうだ。
すると突然足元から砂の中に吸い込まれる。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うっ」
気付くと洞窟の中にいた。いや、正確には洞窟なのかもわからない。ただそう説明せざるを得ないような場所だった。
「砂がない。」
砂と一緒に落ちてきたはずだ。だが、自分の足下には何もなかった。靴の中にも入り込んでいなかった。いや、落ちてきたというのがそもそも違うのか。俺はすぐに上を向いて確認した。
「っ!!!!」
そこには何も、そう、何もなかったのだ。落ちてきたはずの穴はなく、完全に塞がれていた。岩肌は異様にきれいで、もはや岩かすらも疑問だ。そして、どこからも日が差していない。なのに、
「視界がはっきりしている。それに陰もない。ここはどこだ?」
そこで、ふと先のホテルでの出来事を思い出す。
「ここは、ダンジョン?」
だとするなら、俺はどうしたらいいのかわからない。なぜなら、俺はダンジョンに入ったことがないからだ。俺のような人間は希有だろう。
今の時代、ほとんどの人間が観光で言ったことがあるようだし、ダンジョンに入るだけで体が強くなったり、寿命も二、三年位伸びるらしい。だから行かない理由はないとすら言われている。
だが、俺は最近仕事が忙しかったし、正直ダンジョンが気持ち悪かった。なにせそっくりなのだ。世界的に有名なファンタジー映画に出てくるキャラクターと、完全にそっくりな見た目の魔物やらモンスターやらが出てくるらしい。俺はそれが気持ち悪かった。
どうして人間の考えた空想の産物がここまで狙ったように出てくるのか。
そしてそれらを倒すといろんなものをドロップし、それで生計を立てている人も増え、彼らは冒険者と呼ばれるようになった。俺は別に動物愛護等の取り組みをしているわけではないが、少なからず批判する人が出ると読んでいたのだが、ここ一年で彼らは消えてしまった。
倒すことに疑問を持たなくなったのだ。それも気持ち悪い。
まあ、そんなのは置いといて。とにかくこれからどうすればいいのか。そう考えたときだった。
音はなかったし、においも、見えたわけでもない。だが、なにか、意思ある物の気配がした。すぐに立ち上がり周りを見渡すがなにもいない。
「だ、誰かいるのか?」
恐る恐る声を絞り出すと、また気配がする。ただ、今回はその気配は、洞窟全体から感じた。
「君は誰だ?」
もう一度問いかける。
すると、洞窟全体から声が響いた。
「私は、地球。あなたたちの暮らす星の意思だ。」
「地球?理解できないんだが。」
「理解する必要はない。ただ時間がない。聞いてくれ。」
早く話している訳ではないのだが、焦燥感が伝わった。
「今私に、寄生しているもの。あなたたち、滅ぼす。あなたに力と抗体与える。これしか私できない。子どもたちを、守ってほしい。頼む。」
「おいっ!!まて!!どういう」
その瞬間、俺は眠りにつくように意識がとぎれた。
気づくと、さっき落ちた砂浜にいた。色々ありすぎて、まともに考えられない俺は無心でビジネスホテルを見つけ、宿泊することができた。
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