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福山兼

新連載です


宜しくお願いします

 僕は福山(かねる)、どこにでもいる普通の高校生で、同年代の女子に興味津々の年頃の男子だ。彼女達の気持ちを知る為に心理学の本を読んだりするものの、あまりよく分からない。

 特に得意なものもなく至って平均的な人間だ。しかし強いて得意なものを挙げるとしたら、


「まったく福山はしょうがない奴だな~っ」

「本当本当」

「だって仕方ないだろ~っ。本当にズボンの股辺りが破れてしまってたんだからーっ」

「あははっ、かっこ(わり)~」


 それは誰とも分け隔てなく話せることだ。勉強平均、運動平均の僕からしたら唯一の取り柄かもしれない。しかしその一方でこのクラスには成績優秀、スポーツ万能と学校生活において十分評価させるに値する天才もいるもので、


「乃木坂さん凄~い」

「今回も乃木坂さん一位だったわねーっ」


 それは乃木坂真昼さんだ。常に成績は学年一位で、その上この前の部活の大会で優勝したほどだ。そして腰まで伸ばしたロングの艶やかな黒髪、綺麗に整った容姿は誰がどう見てもかなりの美少女である。


「別に……、大したことじゃないわ」


 そう言い放った彼女はクラスから出て行く。


「お高く止まっちゃって、やな感じっ」

「本当よねーっ」

「……」


 彼女は少しつんとすました性格のせいか、多少なりとも周り(特に女子)からのやっかみがある。

 出る杭は打たれると言うが、素直に他人を評価出来ないのは人間の悪いところのような気がする。

 そして乃木坂さんがクラスに戻ってきた時、彼女はちらっと僕を見てきた気がする。

 ……気のせいか?

 期末試験も終わり、これで夏休みまでにある学校の行事と言えばもう球技大会ぐらいのものだ。これで気楽に過ごせるな。


「やっほー」

「おーっ、みゆりじゃん。どした~?」


 こいつは皆藤(かいとう)みゆり、少し茶髪の入ったショートの美少女でクラスでも人気が高い。僕とは中学からの同級生で中高含めてクラスが4連続同じと、いわゆる腐れ縁だ。


「一緒にカラオケ行かない?」

「良いよ~。行こ行こ~」

「まったく福山は相変わらず皆藤さんと仲良いな」

「ご両人お熱いねーっ」

「よせよっ」


 周りはそう茶化すが、仲が良いだけで別にこいつとはそういった間柄ではない。ただの女友達だ。


「まったく~、山瀬君達ったらそう言っては煽ってくるんだから」

「ほんとそれ」

「カラオケ行くだけなのにね~、兼?」

「それ」

「…………カ」

「うん、何か言ったか?」

「うんうん、何でもない。早く行こーっ」


 そうして僕達は特にさして変わることのない平穏な日々を過ごした。

 しかしそれから数日経ったある日のこと、少しばかりの人間関係の変化が訪れる。ある日のこと、僕がいつものように登校して、靴を下駄箱に入れたら、そこに手紙が入っていた。

(何だろう……?)

 その手紙を読んでみると、こう書かれていた。


『本日の昼休み、第一校舎の裏にて待つ』


 こ、これはラブレター!!? い、一体誰から……? いや、というより……そもそも第一校舎ってどの校舎のことだ?

 昼休みになり、僕は職員室で聞いた第一校舎に急いで向かった。そこは要するに職員室側の校舎のことだった。そしてその校舎の裏に行ったが、そこには誰もいない。


「あれ? おかしいな……」


 手紙の文章を見直してみたが、やはりこの場所だった。


「少し待ってみるか」


 地面に座り校舎裏の風景を眺める。木々は風で揺らぎ、さざめき、そこの太い幹にはもう蝉が土から出てきて鳴いている。夏を呼ぶ蝉の鳴き声や頬に当たる風が心地よい。

 もう夏だな。


「……というか帰るか」


 結局贈り主は誰かも分からず仕舞いだ。

 そう思いながらよいしょと立ち上がると、遠めの場所からはぁはぁと息を切らす声が聞こえてくる。そっちの方を見ると、乃木坂さんがいた。


「乃木坂さん!?」

「ゴメンなさい……。クラスに戻ってみたら、もう福山君いないから。……しばらく待たせちゃったかしら?」

「それよりこれを書いた手紙の相手って……」

「えぇ、私よ」

「えっ!?」


 さっきまで穏やかにいた気持ちが一気に吹き飛んだ。

(あの学校一の天才美少女が僕に告白!? 彼女とはあんまり接点が無かったけど、一体僕のどこに惹かれた……いやいや、まだ告白されると決まった訳では……いや、しかし……)

 僕は彼女といるこの状況に気が気でならなかった。


「それでね、福山君……」


 ドキドキッ。


「私……」


 ドキドキッ。


「……貴方に頼みがあるの」


 ドキドキ…………ん? 頼み?


「私に男女のこと……いえっ、男子のことを色々教えて欲しい」


 …………………………ふぇ?

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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