8話
どれくらい経っただろうか
周りには魔物の死体だらけ、迷宮とは違い消えることはない、血溜まりが地面に染み込んでいく
向かってくる魔物は無差別に殺していく
棍棒を振り回すだけの小鬼はただ斬り殺す
多少頭の良い豚人は守りを固めながら後退していく
だが逃げる事は許されない、否許す訳がない
足元にある小鬼の死体を蹴り豚人へぶつける
同時に側に移動し豚人の後ろに回り込むと逃げ出そうとしていた者の首を切り落とす
狼型魔物は連携を取って向かってくるもののやはり魔物、知性はあまりない様で向かって飛んできた所を上下に真っ二つにしてやる
どんどん増えていく死体の山
そんなのに見向きもしないでただ魔物の多い方へと向かっていく
身体が熱い、喉がカラカラだ…
それでも進むのはやめない、ただ前進するのみ
仇を打つそれまでは俺止まらない
もうどれくらい経つだろう、もう魔物は見る限りいない
月明かりが辺りを照らす
遠くの方で冒険者達だろう声が聞こえる
『終わったぞー!』
『やった…やったぞ!!』
『うぉぉぉおおおおお!!』
『よかった…よかった!』
そんな声が聞こえてくる
「あぁ…終わりか…疲れたなぁ…」
ゆっくり目を閉じる
もう二度とやりたくない…
大切なモノを失いたくないけど…
ゆっくりゆっくりと俺は意識を離す
カランと音を立てて手から剣が滑り落ち倒れ込む
だが地面に倒れはしない、誰かが受け止めてくれたのだろう
「やっと……」
だが聞く気力も話す気力も立つ力も無い、もう疲れた…今は休みたい……もうやりたくないなぁ…でもなんだか不思議と懐かしい匂いがした
〜???〜
やっと彼の元にたどり着いた
だがその時にはもう終わっていた
私は倒れそうな彼を受け止める
「やっと…会えた…」
彼には聞こえない、力を使い疲れて眠ってしまった
私は彼を木に寄り掛からせると剣を拾い彼の側に置く
「やっぱり使ってしまったのね………」
私は涙目で彼を見つめる
私のせいで彼は囚われてしまった
アレに魅入られて願ってしまった
力と引き換えに何を失ったかは私には分からない
ただ使えば使う程に戻れなくなる
鍵を掛けたのはアレと対を成す者だろう
強固だが使うたびに脆くなるのが暗示、何かの弾みで効かなくなってしまう
そうなればアレは彼を引き摺り込むだろう
そうなってしまったら彼はもう……
私の頬に涙が伝う
だがゆっくりしてる暇ない、時期に彼を探して誰かが来るだろう
その前に私は彼に魔法を掛ける
そっと彼に口付けをして私は離れる
これが解ける時は私が死ぬ時か
彼がアレと決別した時のみ
私は彼から離れると闇が私を覆い隠し地面に引き摺り込む
私は彼がきっと迎えに来てくれると信じて待つ、闇は私を閉じ込めて元居た場所へと戻っていく
次に目を覚ました時俺は見知らぬ天井を見つめた、周りを見渡すと個室の様だ
「どこだここ…」
体を起こそうとするが力が入らない、しばらく唸っているとノックの音と同時に人が入ってくる
「む、やっと目を覚ましたロストよ」
「あー…レイナ様、一体ここは…それに俺はどうなって…魔物軍勢は」
「うむ、まず魔物軍勢は無事終息した、残党は逃げ他の冒険者達が掃討しているところだ。ロストはかなり奥の方で冒険者が見つけギルドの医務室にに運んでもらいったぞ」
「そうでしたか…はぁ…」
「まぁあれから2日程だっているがな!」
マジか…2日も寝てたのか俺は…
まぁいいか…誰にも迷惑は掛けていない筈だ…多分…
「ロストよ、そろそろギルドランクを上げないか?その力を燻らせるのは惜しいぞ」
「いえ…俺は今のランクで十分です…それに上がると指名依頼も来るので……面倒なのは避けたい…」
最後の方は小声で聞こえない様に言った…筈…
「うーむ…上がればこちらとしては指名を出すつもりだったからな」
…でしょうね、何度も誘われてるのでそのつもりでしょうね…
俺は面倒な事はやりたくないし…生活分の金銭さえ稼げればそれでいい、今回の様なことが多いともう嫌になる…
「それは置いといてだ、ロストが倒した魔物は他冒険者が死体を回収してギルドに渡してあるぞ後で報酬を受け取るといい」
「あ、そうですか…わかりました」
いくらになるだろ…殆ど素材にもならないくらいになってると思うけど…
とりあえず、酒場で回収してくれた冒険者達に奢れるくらいはあるだろう…迷惑分は出さないとな
「私はそろそろ戻るとしよう」
「そうですか」
「うむ、ではまた会うロストよ」
そう言い残し部屋を出て行くレイナ様
俺は後ろ姿を見送り窓を見つめて溜息を吐く
「はぁ…なんだか懐かしい匂いがしたな…」
もう居ない会うことのない親友と彼女を思い出しながら外を眺めるのであった
ゆっくりゆっくり書いてます