7話
野原が広がる視界の先には地面を揺らしながら土煙をあげる黒い影が視認出来た
「うへぇ……」
見ただけでも2000はいるんじゃないか…アレは…
見える範囲で分かる魔物は豚人に小鬼、狼型魔物…
どれも白プレートで対処可能な魔物だ…だが量が多い
「お、俺たちだけで大丈夫か…?」
「に、逃げた方が…」
「おい!馬鹿なこと言うんじゃねぇよ!」
周りにいる冒険者は口々に弱音を吐いていた
俺も吐きたい…逃げていいなら逃げたい…
それでもやらないといけないんだよな…
面倒くさい…本気でやらなきゃ危ないな…
俺が強い理由、あの技量もあるが…
それとは別に本気でやる時は違う、俺は自身に施された暗示を使う
あの日からやる気が無い俺は危険になった時に使う暗示だ、暗示が切れるのは全てが終わった時だ
目を閉じる
瞼の裏に浮かび上がる景色は村の事
力無く何も出来なかった自分を憎み
最愛の者、親友の死を嘆くしかなかった自分を許す事はない
さぁ…やろう、目の前の魔物は全て仇だ
瞼を開け見える魔物、動く魔物は皆敵だ
師匠と呼ぶ人物は俺に暗示をかけた
普段からやる気がない俺にやる気が出る様に
真っ当な人だがやる事がえげつなかった
俺をこうも変えてくれたのだから…
『これをやる時は自分で暗示の内容を決めろ、始まりも終わりもだ。その間お前は誰よりも強いだろうよ…まぁ俺よりは弱いけどな!わははははは!』
あー…思い出しただけでもムカつく…
事実だけど…そろそろ暗示が効いてくる…
目が熱い、腕が軽い、周りの音が遠ざかっていく…
感じるのは風の音に自分の鼓動
吸う息は冷たく、吐く息は熱い
剣を引き抜き構える、ゆっくり目を開ければ…
「お、おい!あいつ向かって行ったぞ!死ぬ気か!?」
「お、おい!逃げろ!」
冒険者が走り出した俺に向かって叫ぶ
だが気にしない、魔物軍勢は目の前に迫る
恐怖は無い、寧ろ笑いが止まらない
棍棒を振り下ろす小鬼、斧を横から振り抜く豚人、牙を剥き爪を立てる狼型魔物
下から蹴り上げ小鬼の顎を砕き倒れた所を踏み殺す
剣の面を体に当て身体全体で斧を受け止め弾き返すそのまま豚人の手首を下から上へと剣を振り切り落とす、怯み後ろに少し下がったのを確認し身体を横にして狼型魔物の攻撃を回避、前と同じように振り上げた剣を振り下ろし首を落とす
再び向かってくる豚人に向かって切り落とした頭を投げつける
豚人の視界から俺は消えた
それが命取り、顎から頭にかけて剣を突き立てそのまま胴体を縦に切る
返り血がかかるが気にしない、剣に付いた血を振り払い
まだ向かってくる魔物達と対峙する
さぁ、始まった魔物軍勢を潰してしまおう
〜???〜
「駄目…それは…」
やっと見えたがまだ遠い、焦る気持ちを抑えながら走り続ける
彼が使っている力は彼が思っているモノとは違う
早く…早く伝えなければ…
月明かりは道を照らす、闇は光を遮る様に邪魔をする
行かせはしない、行かせはせんと…するかの様に
それでも進む彼の為…
伝える為に…私は走り続ける
長々と書けないのが自分の駄目なとこです