2話
馬小屋の掃除も終わり外に出した馬達を見に行こう
外に出ると太陽は真上よりもやや傾きかけ、昼過ぎくらいだろうか
「木陰でいいか…」
馬小屋横にある木の影に座り腰に結んだポーチから干し肉を取り出しゆっくりと噛む
味付けはしっかりとしていてただ乾燥した肉とは違い嚙み切りやすい様に手が加えられている
「コナーさんには感謝だなぁ…」
そう言いながら馬達を見つつ空を見あげる
綺麗な青が空に広がり雲が時折太陽を隠す、平和で長閑な日常…
(村にいた時も…三人で………)
はぁ…とため息を吐き干し肉を食べると腕で頭を抱える様に縮こまる…
何かに怯える様に、誰かに謝罪をする様に…
そんな様子を馬達が見るとゆっくり近寄ってまた頭や鼻を擦り付ける、まるで慰める様で…
「…ありがとな」
馬の頭を優しく撫で憂鬱な気分を流す
仕事中は忘れよう、今は馬達の世話だ…
そう言い聞かせる様にして立ち上がり、馬小屋からブラシを取りまた外へ
……………夕方
「いや〜馬の世話ありがとう、これ依頼完了書」
「いえ…依頼ですから…」
「まさかあいつ等があんなに懐くなって驚いたわ、普段は邪魔とかしてくるのに…」
一通りの仕事が終わりしばらく外に出してたはいいがずっと馬達は側から離れなかったのだ、そんな様子を帰ってきたローナは見て驚き俺を牧場で働かないかと誘ってきたが俺は適当に断り早々にギルドへ戻った
………
夕方のギルドは依頼完了書を持つ冒険者で溢れかえっていた、ギルド内の酒場では仲間同士が酒を飲み交わし報酬の分配などをしている様だ
そんな様子を横目に俺は受付へ、依頼完了書とギルドカードを渡す
「はい、こちらが報酬になります」
「あ、2枚は口座にお願いします」
俺は報酬の銀貨3枚の内2枚は国営の銀行口座に残りの銀貨1枚を受け取り、早々に宿へ
銀貨1枚で宿の宿泊(飯有り)約一月分の金額だ
宿への戻り道良からぬ輩に絡まれる事もなく到着
宿の受付に居たコナーに銀貨を渡し泊まっている屋根裏部屋へ
誰とも会わずに済む屋根裏部屋は俺にとってはありがたい部屋だ
多少狭くても不自由はない、部屋の明かりを灯し靴を脱ぎベットへダイブ
天井を見つめて思う
「………………」
3年…俺がこの王都にやってきて過ぎた時間
何も出来ずにただ目の前の惨状を見せられて3年
あの惨状から目を背き続けて3年…
今でもあの光景が、記憶から夢から離れる事はない
必死になって手を伸ばしても、動けない身体に力を込めて奮い立たせても…
何をしても救う事は出来ない、ただ見せられるだけ…
あの時力があったら…親友や彼女と一緒に居たのなら………
毎日の様に俺は…
力無き自分を呪う様に
失った者達へ許しをこう様に
奪っていった者に何も出来なかった自分を蔑むかの様に…
何度も何度も自分を追い詰めながらゆっくりと意識は遠のいていく
涙が頬へ伝うが意識する事はなく、俺は眠ってしまう…
(あぁ…また同じ夢を見るのだろう…)
薄れゆく中で俺はそう思うのだった