プロローグ
〜???〜
俺は夢を見る…
夢は親友と最愛の人と共に生まれ育った村でいつものように平凡で心地よい暮らしている夢、だがそれで俺は全て理解する。
(あぁ……これは俺の夢…記憶だ……この後はわかってる…)
直ぐに絶望がやってくることを…俺は理解してた…わかっていた…もう会うことも触れることも出来ない夢…俺の見たくもない記憶…
(目を閉じれば…もう見たくもない…思い出したくもない…あの光景を…)
村の広場…目の前に広がる地面を真っ赤に染めた親友だったであろう死体と…蓋の開いた木箱に村の住民だった者達と同じように…食材の様にバラバラに詰め込まれた最愛の人…それを運ぶ魔族たち…
(あぁ…なんで……なんで……)
動けない…倒壊した家の瓦礫に挟まれ動けない…
それはまるで俺を隠す様に…その光景を見せつけるかの様に…
思い出したくもないのに……
(俺の目の前で…)
見たくもないのに…
(皆の変わり果てるまで…)
何度も何度も
(家族が友が殺されるまで…)
夢を見せるのだろうか…
(見ることしか出来なかった…)
目の前が真っ暗になり真っ逆さまに落ちて行く…どこまでもいつまでも…まるで闇の奥へと引きずりこむかの様に、死んだ者達に掴まれ沈められるかの様な錯覚を覚えながら…俺は後悔し続けて…そして…
「はっ!!…はぁ…はぁ…」
痛い…胸が頭が……
その痛みで目が冴えてしまった俺は酷い寝汗の気持ち悪さといつもの倦怠感を覚えながらベットから起き上がる
窓に目をやると空はまだ暗く、ゆっくりと朝日が登る前の白さが見えている状態だ
「目覚めは最悪だ…」
俺はバックからタオルと着替えを持つと泊まっている宿の二階の部屋から出て裏にある井戸へと向かう
階段から降りる途中、これから朝食の仕込みをする宿屋の主人と鉢合わせになってしまった。
「珍しいな、お前がもう起きてるとは」
「えぇ……まぁ……ちょっと寝汗をかいたみたいで…」
嘘は言っていない、事実寝汗で気持ち悪いのに変わりはないから
「これから…仕込みですか……コナーさん」
「あぁ、朝は冒険者ギルドの奴等が早くから食いに来るからな」
そう言うとコナーはキッチンへと移動していった
朝早くからご苦労で…
俺は宿屋の裏口から井戸へ
肌寒い日の出前の中上半身だけ服を脱ぎ、水を汲み頭から被る
2回ほどやるとタオルで顔や頭をを拭き立ち上がる
(さっぱりしたな…)
しかし気分は晴れない…
また夢を見たんだ仕方ないか……
両手を見つめ強く握りしめる俺は後悔しているあの時なぜ動けなかった掴めなかった…家族が友が、愛しい人が…………見るしかなかった自分の弱さを…
ゆっくりと上がってくる朝日の眩しさが目に刺さり嫌そうにしながら俺は
「なんて嫌な一日の始まりだ……」
呟きながら部屋へと戻っていった