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巫女さん(仮)現る

奇跡的に2話目が完成しました。

天成は混乱の境地にいた。

たった今、神様だったはずのクソジジイは、自分を置き去りに転生陣へと姿を消し、そして自分が神様の後継者となったのだ。


「これは夢なのか? 質の悪い夢なのか? キャンディちゃん(ペットの猫)が僕の良好な眠りを妨げているのか?」


絶望に狼狽えていたところ、またもや背後から謎の声が聞こえてくる。


「……さま? 善乃須(ゼノス)さま? どこにおられるのですか?」


声の主は女性であった。限りなく透明に近いホワイトな肌と、限りなく不透明に近いブラックな髪の、さもモノクロ写真のようなコントラストが印象的である。

線がはっきり浮き出た整った顔立ちと、そんな顔立ちには少々アンバランスな殿上眉(まろまゆ)が彼女の魅力を際立たせている。

つむじの少し後ろ辺りには、団子のように束ねた髪がひとつ、ちょこんと可愛らしく座っている。

年齢は二十歳前後くらいだろうか。紅白の巫女服のようなものに身を包んでおり、モノクロな外見に赤がよく映える。


どうやら巫女さん(仮)は善乃須という、おそらくクソジジイを探しているらしい。


「善乃須さ…………さっぱりとした黒髪に色白の肌、シャープなつり目と鼻にかかるキュートな丸メガネが良いアクセントとなっており、漢らしからぬ細い首筋と腕から醸し出されるTHE塩顔男子的なオーラのお前は誰だ」


「お前が誰だよ。何キャラだよ(説明ありがと)」


「……いや、そんなことはどうでも良い。お前、善乃須さまを知らないか? ここにいるはずなんだが」


「あの神様のことです? なら異世界に転生しましたけど」


その言葉を聞いた途端、巫女さんは見る見るうちに青ざめていった、ような気はするが、限りなく透明に近いホワイトな肌はホワイトなままであった。


「んなっ!? ま、まさか!? くっそぉ……してやられたぁ……」


巫女さんは背後から心臓を射抜かれたようにその場に崩れ落ちると、orzな体勢で悶え始めた。(え? orzが何かって? ggrks。 え? ggrksが何かって?)


「知らなかったんですね。僕もてっきり自分が転生するんだと思ってましたよ」


「……いや、本来ならそのはずなんだ。それが神様の仕事だからな」


ということらしい。どうやら僕は転生も夢も希望もあのクソジジイに奪われてしまったようだ。ふと、転生直前の、あのぶん殴りたくなるような浮かれた顔が脳内を横切る。


「あのクソジジイまじでくたばれよ……」


「ぉおおい! 神様に向かってクソジジイとはなんだ無礼者!」


「あの人はもう神様じゃありませんよ。転生したんで。僕が神様を継がされたんです」


すると巫女さんは僕の額に目を凝らす。


「た、たしかにその烙印……神様のものだな」


「烙印? なんのことです?」


「神様となった者の証だ。その烙印を持つ者は死者を召喚し、転生させるための力を得るんだよ」


「善乃須さまめ……まさか自分自身を転生させてしまうとは……」


巫女さんは奥歯を噛みしめて口惜しがった。


「あのぅ、それってつまり、僕も自分自身を転生させることができるってことですか?」


そうだ。あのクソジジイがしたように、僕も誰かに神様をなすりつけて転生してしまえば良いではないか。日本人は1億2千万人もいるんだ。転生するより神様になりたいと思うような奴だってたんといるはずだ。


「いや、そう簡単にできることではない。並外れた神精力が無ければ……そう、善乃須さまのような……」


「神精力?」


「ああ、神様パワーみたいなものだ。善乃須さまは神様の中でもトップクラスの神精力を有しておられた」


神様パワーみたいなと言われてもパッとしないのだが、おそらく “気” やら “念” のようなものなのだろう。と解釈しておくことにする。


「ちなみに僕の神精力はどのくらいなんですか?」


「……チュンって感じだ」


「どんな感じだよ。曖昧すぎるだろ」


「ちなみに善乃須さまはドギャギャギャン‼︎ギャン‼︎って感じだな」


「いや勢いに任せすぎじゃない? まあ何となく雲泥の差だってことは伝わったけども」


「だろ? “伝え方はさほど重要なことではない。伝えたいという意志が重要なのじゃ……じゃ……” 善乃須さまのお言葉だ」


巫女さんは鼻息を鳴らしご満悦であった。


「あのクソジジイに何かを伝えようという意思は微塵も感じられなかったですがね」


「お前のその正論系ツッコミキャラ的な振る舞いは気に入らんが、善乃須さまの後継者なら仕方あるまい。私が一から神様の仕事を教えてやろう」


正論系ツッコミキャラというより、単に他が間抜けなだけなのだが、さりとてこのまま何もせずにはいられないので、僕は巫女さんの言うとおり、神様としての職務に就くことを決めたのだった。



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