第1章 プロローグ 『動き出す運命』
とある渓谷にて---
渓谷は深く底は見えない。一切の暗闇に包まれていた。人はもちろんのことおよそ全ての生物は誰も近寄ろうとしない。
そんな渓谷の奥底に、仮面を付けたローブの男は静かに佇んでいた。
「聖都の剣聖...さすがに楽な相手ではないか。」
男は冷静に思考を巡らせる。先日ネルヴァに斬られた男だっだが彼の体には傷1つ付いていなかった。
「それに例の少年...なるほど、懸念事項はまだ多いようだ。」
突然現れた謎の少年。幸運の持ち主なのか、"始原の蒼"から難を逃れ、さらに幻術も破られてしまった。その存在は男にとってイレギュラーでしかなかった。
「しかし...」
男は地面に手を添える。すると地面に紋様が浮かび上がり、そこから蒼い光が吹き出した。
「我々の計画に狂いはない...」
紋様の光はますます強くなり、ついには辺り一帯を蒼い光が満たす。そして...
光が治ると紋様は消え去り、そこには魔族が現れていた。召喚された魔族はまるで男からの命令を待つかのようにその場から動かない。
「時は満ちた...降臨の日は近い...」
男は静かに魔族を見つめると、体が泥のように溶け出し---
---姿を消した。
そして残された魔族の目には赤い光がともった。