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序章06 『始まりの午後』

やっとこさ序章終わりです。前置き長くなりすぎましたね...あと一話4000くらいの方が良いのでしょうか?今まで2000を目安にやってましたけど、どっちの方が良いのでしょう。

 


(...!....ねん!...少年!)


 レオンは呼び声で目を覚ました。直後眼前に魔族の手が迫り、どうすることも出来ず顔を守るようにして両手を交差する。すると紋章が浮かびあがり魔族の手を弾き返した。突然の衝撃に魔族は耐えきれずまた体勢を崩して倒れた。


「なんだ!何が起きて...」


(おーい!大切な魔力なんだ、もっと大事に扱っておくれよ!)


 頭の中に先ほどの声が響く。先程まで魔力が尽きかけていたはずなのにレオンは体に溢れ出んばかりの魔力が込められているのを感じた。


(よし!また成功したな!あいつが出て行ったときに頑張ってスペース保っといて良かった良かった。ちょうど2回分ってところか。)


「なんで僕の頭の中に...」


 困惑してレオンは尋ねる。


(悪いな、少年!しばらく君の精神に憑依させてもらう!大丈夫、協力するから!)


「何を勝手に」と呆れるレオンだったが、魔族がまた立ち上がったのを見て身構えた。


(よし少年よ、今すぐに"剣"をイメージするんだ!理由は聞くな!とにかく剣だ、オレは剣しか使えなかったから。)


「急に何言ってるんですか!剣?イメージしろってどうやって...」


 レオンは急な無茶振りにうろたえた。憑依だの剣をイメージだの全く訳がわからない。頭の中では(早くするんだ!)という声が鳴り響きますますパニックになる。


 そんなレオン目掛けて魔族は突進を開始した。2度も倒されて激情しているのか今までとは異なり明確な怒りを伴った攻撃である。


(ほら早くするんだ!死ぬぞ!)


 レオンは両手を体の前に広げて目を瞑り力を込めて念じた。剣...剣...けん...ケン...ken...とイメージを膨らませる。その間、(おい!目を開けるんだ!魔族が来てるぞ!君が目を開かないとオレは何も見えないんだ!)と雑念のように声が邪魔をする。


「ちょっと!邪魔しないでくださいよ!」


 声を荒げた拍子に目が開く。すると信じられないことに自分の両手の上で何かが浮かんでいた。それは声の主のように霞がかかっているものの、どことなく"剣"のように見えた。


(よし、できた!俺の剣の方が立派だったが上出来だ!)


 どういう原理かは全く分からない。だが目の前に迫る魔族と自分の手のひらに浮かぶ"剣"。何をするべきは明白であった。


 レオンは浮かんだ"剣"を握ると、脚に力を込めて見えない壁を思いっきり蹴り飛ばした。先程はボロボロで力も残っていなかったはずなのに今度は自分の想像以上の勢いがついた。思わず動揺したが、目線を魔族の方へと向けてそのままの勢いで斬りかかる。


「うぉぉぉぉぉ!!!」


 "剣"は魔族の体を貫き、魔族の右半身は泥のように溶けてその場に流れ出した。


(良いぞ!少年よ!)


 内なる声が満足そうに響く。レオンはまだ動揺が隠せなかったが、「これならいける」と再び"剣"を構えた。


 体の半分を失った魔族は苦しみながら声を上げる。それと同時にレオンは再び目眩に襲われた。立っていられないような急激な目眩に思わず顔を歪めて膝をつく。しかしすぐにその目眩は晴れ、直後、何かが砕けるような音がした。


 正気を取り戻したレオンは再び"剣"を構えて魔族と対峙する。だが--



 だが、そこにはただの砕けた樽があるだけだった。



 レオンは何が起こったのか理解できず辺りを見回す。すると自分の周りには大勢の人々がいることに気がついた。先ほど泥になっていた人たちである。「あれ...」と困惑の声を上げるもの。安堵して家族と抱き合うもの。気を失っているものと様々であったがどうやら全員無事だったようだ。


 それを見たレオンは安心して胸を撫で下ろす。気がつけばさっきまで握っていた"剣"も消え、頭の中の声も聞こえなくなっていた。


「なんだったんだ...今のは...」


 困惑しているとそこに手を叩きながら歩いてくる人影があった。先ほどの白いローブの男である。だが今度はフードをとって顔をあらわにしていた。


「いやぁ〜すごい!君のおかげで幻術は解かれた!感謝するよ!ほら皆んな拍手拍手〜」



「剣聖...ネルヴァ様!」



 誰かが声を上げる。するとそれに釣られるようにして辺り一帯にどよめきが広がった。


 そして剣聖ネルヴァはニヤリと笑みを浮かべてレオンに拍手を贈ったのだった。



 ☆



 数十分前



「いやぁこちらこそ不注意でね〜 やけに楽しそうだね〜 聖都に来るのは初めて?」


 剣聖ネルヴァは退屈な任務に飽き飽きとして暇を極めていたがそこで同じ剣聖であるリゼが気にかけている少年を発見。暇つぶしになりそうだとワクワクしながら市街地にやって来て、ついに接触に成功した。


「はい!僕フェルティモアに来るのが夢だったんです!」


 これが例の少年...大災害をもたらすという"始原の蒼"に遭遇して大事に至らずに済んだ幸運の持ち主。何か面白いことが起こらないか物色してやろう、そう意気込んでレオンにちょっかいを出してみることにした。


「そうなのかい!楽しんでいくといいよ〜 あ、あそこのパン屋さんとっても美味しいんだよね。オススメだよ〜」


 まずは席について話しでも、と何となく近くのパン屋を指差す。しかし、その瞬間に異変を感じた。


(これは、幻術か!?しかも近いぞ! 術者は...あっちか!)


 暇つぶしどころではない。大陸の心臓である聖都に幻術を仕掛けられた。しかも術者は堂々と聖都の中にいるらしい。それは挑発を意味し、同時に罠であるように思えた。


 ネルヴァは敵の気配を感じると地面を蹴り直ちにその場を後にする。風にも等しいスピードで市街地の空を駆ける。向かい風でフードははだけ、その綺麗な金髪が露わになっていた。



「幻術」---高度な魔術の一種。術者が仕掛けた一定の範囲にいる者に幻想を見せて惑わすことができる。また練度が上がると結界を貼り、対象とする者を閉じ込めることも可能。



 幻術ではさほどの被害はあがらない。だが騒ぎになる可能性は大いにある。敵の目的が騒ぎを起こすことだとしたら剣聖である彼は見過ごすことはできない。市民を脅かすものから排するのが彼の役目であるからだ。


 間も無くして気配の元である路地裏にたどり着いた。


「どこの誰だ〜?こんなたちの悪いイタズラを仕掛けたのは?」


 ネルヴァは路地裏の奥に向かって話しかけた。返事はなくその代わりに短剣が数本飛び出して彼を襲う。


「俺を呼びつけておいてこんなオモチャで遊びたかっただけか?」


 しかしさすがは剣聖、全く動じず涼しい顔で短剣を弾いた。すると笑い声と共に黒にローブの男が姿を表す。


「さすがは剣聖だ。幻術の発動からまだ幾秒も経っていないのにもう私の元へ辿り着くとは。」


 男は黒いフードつきのローブを身に纏い、顔には仮面を付けていた。最強の騎士である剣聖を前にしても全く動じる気配はない。


「だが良いのか剣聖よ。幻術には魔族を練っている。早く戻らなければ実体化するぞ。」



 魔族の実体化...幻術の中に魔族を練ると厄介なことに実体化することがある。それだけは阻止しなければならない。だが、だからといってこの男を見過ごすわけにもいかなかった。



「それなら心配いらないね〜 あそこにはめちゃくちゃ幸運な少年がいるからね。」



「先程、"始原の蒼"と遭遇した少年のことか?」



「!?」


 ネルヴァはハッタリのつもりでレオンのことを口にした。しかし相手は確実に彼のことを把握しているらしい。


「お前...一体何が目的だ?」


 ネルヴァは真剣な眼差しで剣を構える。相手は思った以上に危険な存在かもしれない。


「今回はあくまで少年に興味があったのだがな...まぁ良い。いづれは戦う相手だ、ここらで剣聖の力を試してみるのも一興ではあるか。」


 男は地面に手を置く、すると地面から勢いよく氷の波が現れネルヴァに襲い掛かる。氷は絶えず現れ続け路地裏一帯は氷に包まれまるで氷山のようになった。


 しかし、氷山に一筋の亀裂が入ると「バリン」と音を立てて氷は跡形もなく砕け散った。辺り一帯に砕けた氷が舞いその中にネルヴァは相変わらず涼しい顔をして立っている。


「素晴らしい。これほどの氷結魔術を一瞬で砕くとは...」


 話終える前に男は目の前からネルヴァが消えていることと、自分の胴に大きく傷がついていることに気がついた。


「なんだ〜?吹っかけておいてそんなもんか?」


 ネルヴァは男の背後に回っていた。そして静かに剣を鞘に収めた。そう。すでにネルヴァは男を斬り伏せていたのである。だが男からは血飛沫が上がることはなく、かわりに泥のようなものが傷口から溢れ出した。


「なんということだ...敵ながら天晴れだ、剣聖ネルヴァよ。お前たちを見縊っていた。今回はこれで失礼するとしよう。」


「待て!」


「すでに時は満ちた...ではまた、遠くないうちに。」


 ネルヴァはもう一度斬りかかろうとしたが、男の体は勢いよく溶け出し、そして地面に吸い込まれて消えてしまった。ネルヴァはこのような魔術を見るのが初めてであったが今はそんなところでなかった。


「早く戻らないと!」


 再び風のように駆けるネルヴァ。だがレオンの元へたどり着いたときにはもうすでに解決済みだったらしい。どうやら少年の幸運はホンモノのようだと思い、ニヤリと口角を上げるのだった。



 ☆



 そして今に至る。


「剣聖...様、ネルヴァ様...どうしてこんなところに...」


 レオンは目を丸くした。この短時間に剣聖と2人もあってしまったのだ。レオンくらいの年の男の子だったら誰もがこんな感じになるだろう。


「ま、そんなことはさ、どうでもいいじゃん!」


 ネルヴァは相変わらずヘラヘラと笑っている。そしてレオンを指差して、こう告げた。



「君、騎士団に入らないか?」



「へ?」


 レオンは思わず間抜けな声を出した。市街地の人々も皆んな目を丸くしている。そして間もなくして...



『えぇぇぇぇ!!!!????』



 市街地に大勢の驚く声が上がった。

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