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セント・アドベント 〜田舎者少年レオンの英雄譚〜  作者: 竹倭部
第1章 『平凡と伝説』 
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第1章03『8人の新人騎士』

人物紹介って難しいですよねー、戦いの中で登場してインパクトを与えるならまだしも、日常で初登場&自己紹介するのはなかなかきつい!てかむずい!頑張ってキャラ付けとイメージ付けしていきたいです!!

 

 翌朝、聖域ユグドラシル"養成舎"にて




「やばいやばい!遅刻する!」



 レオンはバサバサの寝癖のまま教室へと急いでいた。今日からは合格者8人が正式に騎士団へと入団するために必要な知識を学び、戦闘訓練も課せられることになっている。


 そんな大事な初日からさっそく田舎者は寝坊してしまったのである。



「あそこだ!」



 やっとの思いで教室へとたどり着き扉を開く。時刻を見ると集合1分前だった。ギリギリセーフと一息ついて教室内を見渡すと、そこは200人以上は入るであろう大教室であり、点々と合格者7名が席についていた。



 レオンはせかせかと近くの席に座ると、



「初日から遅刻間近の重役出勤とはいい身分だな田舎者。」



 さっそく辛辣な言葉が後方からレオンに突き刺さる。突然の非難を受け恐る恐る後ろを向くと、少し離れたところに座っている少年が怪訝そうな顔をしてこちらを見ている。



「お前がビリだ、意識が低いんじゃないのか?」



 少年の指摘は正しくレオンはぐうの音も出ない。更には相手の名前も知らないため「すみません...」と小声で謝るくらいしかできなかった。



 そんな中勢いよく扉が開かれる。



「グッドモーニング!騎士の卵たちよ。」



 入ってきたのは老夫だった。だがただの老人とは言い難い鍛えられた体をしている。騎士なのだろうか。そんなことをレオンは考えていると、



「る、ルワード様!?」



 後ろの少年がびっくりしたように口を開く。同様に表情が驚いている者が何人か見られるが、田舎者には聞き覚えのない名前だった。



「ははは、もう剣聖は辞めたんだ。そんな驚かないでくれ。それに今日からは君たちの訓練を指揮することになっている。ルワード先生と呼んでおくれ。」



 老人から語られる真実にレオンは思わず目を丸くした。まさか元剣聖が自分の先生になるとは夢にも思っていなかったからだ。



「今日から君たち8名はここで騎士になるための様々なことを学習するわけだが、つまりは同期ということになる。というわけで端に座っている者から自己紹介だ!」



 ルワードは元気よくそう言うと、教室左端に座っていたレオンはいきなりの自己紹介タイムに動揺した。



(自己紹介?何を紹介すれば...そもそも自分に紹介できることなんてあるのか?)



 なんてことを考えぎこちなく立ち上がろうとすると、教室右端に座っている少女がすでに起立していた。



「では私から。私はマナ。マナ・エーデリックよ。光栄あるエーデリック家の長女にして次期当主。以後お見知り置きを。」



 少女は肩まである赤色の髪をサラリと流すと凛とした表情で名乗った。その立ち振る舞いからはいかにも貴族階級の風格がただよっている。



「マナよろしく頼む。では次の者。」



 マナが座ると入れ替わるように次の少女が立ち上がる。レオンは座るタイミングを失って半立ちしていたがマナが座るのに合わせてようやく席につくことができた。その時赤髪の少女から睨むような視線を感じ、少し気まずくなったが気にしないで次の自己紹介を聞くことにした。



「私はコハク。ユグドラシルの孤児院で育った。だから皆んなよりもここに詳しい。よろしく。」



 マナとは対照的な水色の髪をした小柄な少女は手短にそう告げるとペコリと一礼してすぐに席についた。



「えーっと、次は俺だな。俺はライリー!貴族じゃないから苗字は無いが、とある村長の家のもんだ。同期みんなと仲良くしたいと思ってる!よろしくな!」



 黒髪を尖らせた少年は人当たりの良い笑顔を浮かべ、元気に名前を名乗った。この人となら仲良くなれそう、とレオンは目を輝かせる。



「僕の番ですね。僕はカノン・シックザールです。皆さんに遅れを取らないよう精一杯頑張ります。よろしくお願いします。」



 次に立ち上がったのは入団選別の時にレオンの隣に倒れていた少年だった。カノンと名乗るその少年はレオンと同じくらいの背丈なのにかなり細く弱々しい印象を受け、白い髪と白い顔がその病人のようなイメージに拍車をかけていた。



(僕と同じでエンブレムの外から戻ってきた人...昨日は倒れていたけど大丈夫だったのかな)



「次は私だね!私はミーア!私もマルタナから来た田舎者で聖都のことは何も分からないけど、みんなとお友達になりたいです!よろしく!」



 元気よく自己紹介したのは選別の前にレオンに話しかけてくれた少女だった。栗色の髪を女の子らしく後ろで結すび、にこやかな笑顔を浮かべている。



(あ、あの子は昨日の!合格してたんだ!)



 レオンは彼女の合格を自分のことのように喜び嬉しくなったが、内なる声にそそのかされて彼女を嫌らしい目で見てしまったことを思い出し、思わず顔を伏せた。



「ほうマルタナからか!田舎なんてとんでもない、聖都に次ぐ大きな街じゃないか!あそこは酒がうまいんだよなぁ。また行きたいなぁ。」



 なんてルワードが思い出に浸るように目を瞑り、うんうんとうなずくと、ミーアは嬉しそうに笑った。




「次は私ですね。」




 ミーアの近くに座っていた少年が立ち上がる。すると何故かレオンは少年から目が離せない。



(なんだ、このオーラ。何というかすごいありがたいものを前にしているみたいだ...)



 背丈は他の者たちとさほど変わらないが、腰まで伸びた薄いクリーム色の長髪は窓から差し込む光を浴びて輝き、そのあまりにも整った顔は同性であるレオンですら見惚れるほどの美しさである。



「私の名前はエストウェル・フェルティガルド。騎士団に入った以上は民のためにこの身を尽くす思いで戦おうと思っています。同期のみんなとは切磋琢磨できる良きライバルでありたいです。」



「フェルティガルド...」



 こればかりは田舎者でも耳にしたことがある。



 フェルティガルド家。聖都有数の貴族であり旧王国時代では王家の側近だったらしい。王国崩壊時には他の貴族と協力して聖都を建設し、その功績を称えて聖都にはフェルティモアという名前が付けられた。



「おお!これは大物がいたもんだ!フェルティガルド...最近耳にしていなかったが、こいつはすごい!」



「ありがとうございます。ですが我が家もかつてのような地位はもうございません。自らの名におごることなく励んでいきたいと思います。」



 エストウェルは称賛を鼻にかけることなく謙虚な対応をする。その立ち振る舞いからはまさしく"聖都"の名に恥じぬオーラが漂う。



 その華やかさを見て教室の奥からはマナがぐぬぬと恨めしそうに睨んでいる。貴族階級はいろいろ大変なのだろうかとレオンは思っていると---




「いいよなぁ育ちがいい奴は。エーデリックにフェルティガルド。超一流の名家じゃないか。」




 卑屈な声が教室の後方から響く。



「シックザールは聞いたことないが新興貴族か?どっちにしろ()()よりは良いんだろうな。」



 緑色の癖毛をうねらせた少年は卑屈そうにボソボソ言いながら立ち上がる。



「俺はアルフレート。アルフレート・ハルデンベルク...と言っても知らないか。落ちこぼれ貴族の名前なんてな。」



「ほう、ハルデンベルクか...王国時代にはフェルティガルドと同様に王家の側近だった名家じゃないか。」



「そいつはどーも。でも昔の話ですよそれは。」



 ルワードの気遣いも全く意に介さないと言った様子で、少年は卑屈に吐き捨てて席についた。



「ふむ...では次の者で最後だな!」



「はい!」



 レオンはガタッと音を立てて勢いよく立ち上がる。多くの視線を感じ緊張が跳ね上がるが冷静になるよう努めたが---



「レオンです!ノートンっていう小さな村で郵便屋をしていました。成り行きでここまで来てしまいましたがしっかりと励みたいです!よ、よろしくお願いいしみゃす!」



 最後の最後で甘噛みしてしまい「ぷぷっ」とミーアに笑われてしまう。急に恥ずかしくなり顔を赤くしていると、



「君がレオンか!ネルヴァから話は聞いているぞ。なんでも幻術騒ぎを解決してくれたそうじゃないか!」



「いえ、僕は何も...そうだ!周りの人達は無事だったのですか?」



「あぁ。君が魔族の実体化前に食い止めてくれたおかげで怪我人は出ていない。それに幻術にあてられた者たちはシスターに看護されている。大事には至らなかったよ。」



「そうですか...よかった...」



 レオンは安堵して席についた。ユグドラシルのシスター達は回復魔術に特化している。あの人達が見ているのなら安心だ。



「以上8名!いいか君たちは身分や立場が違えど今日から仲間だ。お互いを助け合い切磋琢磨しながら騎士として励むよう!」



 ルワードはシワと傷だらけの顔を歪ませてニッコリと笑った。



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