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プロローグ
「今日も終電ギリギリかよ・・・」
極々平凡なブラック企業に勤める井坂 幸一は誰に聞こえるわけでもなく
そう呟き電車に乗り込む。車内には疎らながらに人はいるがその顔は一様に同じく。
始発音と共に動き出す電車に、己の中の緊張感がゆっくりと緩和されていくのが自分でも分かった。
今の仕事を始めて早10年、何かを目標とし、ひたむきに打ち込むでもなく
ただ漠然と仕事をこなしてきた幸一には
特にこれといったこだわりがなく、日課のトレーニングと仕事道具の整備くらいしかすることがない。
都会にいけば何かあるだろうと、勢いよく飛び出してきた割には、思いのほか社会の歯車として
型に嵌まっている自分に自嘲する。
車窓から流れる景色をただ眺め 今日も帰路へ着こうと考えた矢先
直後として車両前方から大きな爆発音 それに続く衝撃に大きく揺られる車両に
「うおっ!?」
思わず声が出てしまう。だが、それも一瞬のことで
自身の身体が宙に舞う感覚を
どこか他人事のように感じながら、脳が意識を保つことを辞めた。