世界とは事実の総体である
「論理哲学論考」のはじめに、次のような言葉がある。
一 世界は成立している事柄の総体である
一・一 世界は事実の総体であり、ものの総体ではない。
「論考」を最初に読んだ人なら、この箇所を読んだ時(ふーん、そうなんだ)と思うかもしれないし、または(よくわからないけど読み進めていこう)となるかもしれない。しかし、この最初の二行だけでも、言わなければならない事が沢山ある。ウィトゲンシュタインはそれを全部端折っているので、読むのが非常に難解になってしまう。
そして実は、「論考」の一番大切な箇所はこの部分に集約されているーーと僕は見ている。「世界とは事実の総体である」 この事を厳密に考えぬく事から後の様々な結論が現れてくるのであり、論理学的な部分も意味を持ってくる。では、世界とは事実の総体だというのはどういう事だろうか。
あんまり細かく解説していく気はないので、ここで話を転換させて、一気に論考の全体のイメージの話に移行しようと思う。「世界は事実の総体であり、それ以上の事は世界とは言えない」 とりあえず、これだけの事があれば大丈夫だろう。