チート・ザ・一寸法師
むかしむかしある所に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
子供のいない二人は、毎日子供が授かるよう神様に祈っていました。
「神様、どうか私たちに子供を授けてください。どんな小さな子供でも構いません」
ある日驚いたことに、二人に小さな赤ん坊が授かりました。背の高さ一寸にも満たない男の子です。
二人は赤ん坊に一寸法師と名付け、宝物のように育てました。
一寸法師はイケメンで頭の良い子供になり、ある日二人にこう言いました。
「お父さん、お母さん、私に針と藁とお椀と箸を下さい」
「一体どうするのですか?」
とおばあさんは尋ねます。
「針は剣、藁は鞘にします。お椀を船にして、箸で漕いで都に向い、武士になるつもりです」
二人は許しを上げました。さっそく一寸法師は都へと向かいました。お椀に乗って宙に浮き、箸を振るう事で操縦します。
途中、一寸法師は出会ったありに道を尋ねました。
「ありさんありさん、この近くに川はありますか? ブボファッ」
「たんぽぽ畑のところです」
ありの話を聞いて一寸法師はたんぽぽ畑に向かいます。川につくとお椀を川下のほうへ操作し、矢のように川を下っていきます。
途中で川の中から出てきた龍神が一寸法師を食べ物だと間違えて向かって来ました。
お椀を操作してもっと上空に逃れても良かったのですが、一寸法師はせっかくなのでお椀ビームで龍神を仕留めます。
荒れ狂う波を見下ろし、雨はお椀を逆にすることでしのぎ、吹く風はお椀の中にいれば全然障害になりませんが、やっとのことで都に着きました。
都をお椀で進んでいくと大きな立派な家が見え、一寸法師はそこで働くことを思いつきました。
「門を開けてください、お願いがあります」
声を聞き、家の主人は門を開けました。目線の高さにお椀が浮いていますが誰もいません。
「一体誰だ? 誰も見えんぞ」
「目の前のお椀の中にいます」
主人はお椀を覗き込む事で一寸法師を発見します。
「私は一寸法師と申します。ここで働かせてもらいたいと思います」
「お前はなかなかチートそうだな、よし家来にしてやろう」
そうして働くことになった家には美しい娘がおり、一寸法師はその娘から色々教わりました。一寸法師は頭が良くてすぐ理解してしまいました。
そしてその娘と二人で出歩いてたある日、なんと二人は大きな鬼と出くわしました。鬼はその美しいと評判の娘をさらいに来たのです。
「悪い鬼め! お嬢さんにちょっとでも手を出せばただではおかないぞ!」
一寸法師はそう言いながらお椀を操作し、先制で鬼の一人にお椀ビームをかまします。
「目が! 目があぁぁぁ!!」
鬼の一人は撃退しました。
しかしその隙をついてもう一人の鬼が一寸法師に迫る。
「生意気な小人め! 自分からお椀に入っているとは丁度いい、喰ってくれる!」
鬼はそう言うとお椀から一寸法師を摘まみ、丸呑みにしてしまいました。
が────
「いた、いたたた……」
一寸法師はおじいさんから授かった針で、鬼のお腹を内側から刺しました。
「いたた、死んでしまう、降参だ、助けてくれ……いた! ……ちょ、マジで、やめ……うっ! ぐぼわはぁッ!!」
鬼は一寸法師を吐き出そうとします。
しかし血ヘドは吐けど一寸法師は出てきません。
「ぐ……ぎゃ……痛い……い、た……!!」
次の瞬間、鬼の身体は四散した。中から出てくるのは針を構えた一寸法師。
呑まれて尚抵抗を続けた一寸法師は、見事鬼を討ち取る事に成功したのだ。
「助けてくれてありがとう。あなたは小さいけど、とても勇敢で強いのね」
娘が一寸法師にお礼を言います。
「ちょっと見てください、鬼が何かドロップしました、これは何でしょう?」
「これはうちでの小槌というものです。これを振ると欲しいものが何でも手に入ります。一寸法師、あなたは何が欲しいですか。」
「私は大きくなりたいです」
娘がその言葉を聞き、うちでの小槌を振るいました。
すると一寸法師のお椀はぐんぐんと大きくなっていき、あっと言う間に娘も入れる移動型要塞新居になりました。
一寸法師は娘さんと結婚し、幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし