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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・昔話 続
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チート・ザ・はだかの王様

 むかしむかしある所に、珍しい着物が好きな王様がおりました。

 新しい着物を用意しては、それを着て歩くのが王様の楽しみです。


 ある日の事、服職人を名乗る詐欺師がやって来て言いました。


「私はとても美しい布を織る事が出来ます。しかしその布はとても不思議な布で、それで作った着物は馬鹿には見えないのです」


「ほほう、それは面白い。着物を作ってくれ」


 王さまは、うれしそうに言いました。


(その着物を着て歩けば、家来たちが利口者かお馬鹿か、すぐに見分けがつくわけだ)


 詐欺師の男は布を織るのに必要だと言って、王様に沢山のお金を出させると、熱心に布を織る振りを始めました。


「いったいどんな着物かのだろう? 早く着てみたいものだ」


 王様は、その不思議な着物を早く着たくてなりません。

 そこで大臣に言いつけて、着物がどのくらい出来たかを見に行かせました。

 布を見に行った大臣は布を織っている男のそばへ行ってみてビックリ、何も見えないのです。


 大臣は目をこすってみましたが、やはり何も見えません。

 男が織っているのは馬鹿には見えない不思議な布。それが見えないということは大臣が馬鹿という事になってしまいます。


(かくなる上は……)


 そこで大臣は自身の両目にありったけの魔力を込めて大きく叫んだ。


「【完全真理眼(アナライズアイズ)】!!」


 呪文と共に大臣の両目が眩しく光輝く。


(神から授かりしこの【完全真理眼(アナライズアイズ)】は全ての真実を見透す! 例えどんな強力な隠蔽術が施されていようと! 仮に私の本質がお馬鹿だったとしても! この眼の前では逃れられぬぞ!!)


 しかしどれだけ目を凝らしてみても、やっぱり布は見えません。


(ば、馬鹿な……この布の力は私の【完全真理眼(アナライズアイズ)】の魔力をも上回るというのか! そして、私は本当はお馬鹿だったという事か……!)


 男は布を織る手を止めると、膝から崩れ落ちた大臣へ声をかけました。


「これはこれは大臣。どうです? 見事な布でしょう? もうすぐ出来上がりますので王様にもよろしくお伝え下さい」


「いや、あの……うむ、そうだな、確かに……見事な、布だ……」


 大臣はそう言うと、足早に部屋を出て行きました。


 大臣は悩みます。大臣は今まで、嘘をついた事が一度もありません。

 でも正直に見えないと言えば、自分は馬鹿者だと言う事になり大恥をかいてしまいます。


 そこで王様の所へ帰ると、


「まことに見事な布でした。もうすぐ出来上がって着物に縫うそうです」


 至極真面目な表情で言い放ちました。


「そうか、それほど見事な布か」


 大臣が嘘を言った事がないので、王様は大臣の言葉を簡単に信じます。

 そして王様はその不思議な布を自分でも見たくなり、次の日、自分も直接見に行く事にしました。

 男が布を織っている部屋に着いた王様は、男に声をかけました。


「うむごくろう。して、例の不思議な布はどこにあるのじゃな?」


 すると男は、大きな布を持ち上げるふりをして言いました。


「王様、これでございます。どうです、なかなか見事な布でしょう。たった今、完成したのでございます」


「へ?」


 何も見えないので、王さまは目をゴシゴシとこすります。

 それを見た二人の男は、少し意地悪く尋ねました。


「あの、もしかしてこの布がお見えにならないとか?」


 その言葉王様は、慌てて唱えます。


「【完全真理眼(アナライズアイズ)】ッ!!」


 呪文と共に、王様の眼が激しい光を放った!


(神から授かりしこの【完全真理眼(アナライズアイズ)】は全ての真実を見透す! 例えどんな強力な隠蔽術が施されていようと! 仮に私の本質がお馬鹿だったとしても! この眼の前では逃れられぬぞ!!)


 しかしどれだけ目を凝らしてみても、やっぱり布は見えません。


(ば、馬鹿な……この布の力は私の【完全真理眼(アナライズアイズ)】の魔力をも上回るというのか! そして大臣には見えた布が私には見えない! 私こそが真のお馬鹿だったという事か……!)


 先ほどの大臣と全く同じ失態を犯しているの事にも気がつかず、王様は項垂れてしまった。

 しかしそこは王様、すぐに体勢を立て直し至極真面目な顔で詐欺師に言います。


「これは素晴らしい布だ、では早く着物に縫ってくれ! 次に行われるお祭りには、ぜひともこの布で出来た服を着て歩きたいものだッ!!」





 そしてお祭りの日の朝、男は完成した着物を届けに来て言いました。


「さあ、私が着物をお着せしますから、王様、どうぞ裸になって下さい」


 言われるや否や、王様は着ている服を全てその場で脱ぎ捨てた。中から現れるは鍛えに鍛え抜かれた究極ともいえる肉体美。

 一糸纏わぬ威風堂々としたその恰好に、男は同姓であるにも関わらず思わず唾を呑み込む。

 そんな王様に、男は出来上がった事になっているその着物を丁寧に着せるふりをしました。

 着せ終わると、そばにいた家来達は、


「まことによく似合って……ご立派です」

「本当に。それにしても……見事であります」


 と、口々に褒め立てました。


「うむ、確かに我ながら惚れ惚れする身体……おっと、それを纏う素晴らしき衣服よ」


 王様はうっとりしながら満足そうに言います。


「さあ、今日の祭りはこの格好で向かう。準備せい!!」


 王様は行列をしたがえると、いばりながらゆっくりと歩きました。



 さてさて王様の行進を町の人達は周りから目撃します。

 そのあまりの美しさに男衆は詐欺師の男同様息をのみ、女性陣は赤面させながら顔を手で覆います。


「な、何て立派なんだろう……! 俺達と比較にならないぞ!」

「さすがは王様! そびえ立つ様は正に我らが主だ!」

「きゃーきゃー王様きゃー!」


 と、口々に王様を褒め称えます。

 その時です。

 行列を見ていた小さな子どもが、目を輝かせながら言いました。


「王様が裸だ~! でもパパよりずっとおっきいぞ!」


 そう、そこで王様は初めて詐欺師に騙されていた事を知りました。

 しかし、今は大切なお祭りの途中なので、行進を止めるわけにはいきません。

 仕方がないと開き直りそのまま堂々と行進を続けると、それはそれで拍手喝采が巻き起こりましたとさ。


 あとなんかお祭りの途中に敵対している魔王が進軍を開始したり古の邪神が復活し世界を支配しようと目論んだり最強の淫魔が王様を襲ったりしましたが、王様が腰の捻りと共に聖剣を振るうと魔王は消滅し邪神は封印され淫魔は服がビリビリと破れながら吹き飛びましたとさ。



 めでたしめでたし

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