チート・ザ・ハーメルンの笛吹き男
むかしむかしある所に、ハーメルンという町がありました。
ある年、この町ではねずみが大量発生してしまいました。
ねずみ達はその類まれなる戦闘力で、太陽を破壊し雲を吹き飛ばし風を消し去り家の壁に穴を空け散々悪さをするもので、町の人達はみな「困ったなぁ」と言いながら生活をしています。
そんなある日、町にピエロのような派手な服を着た一人の男がやってきて、町の人達に提案をしました。
「私は町で悪さをしているねずみ退治をすぐにもやってのけることが出来ます。どうでしょう、よろしければ金貨一袋でお引き受けしますが、私に任せてみませんか?」
金貨一袋は大金です。人々はちょっと高すぎるなぁと思いながらも、このままねずみ達を放っておくわけにもいかず、男の提案を承諾しました。
承諾を受けてから男は町の広場に歩いていき、その真ん中で笛を取り出しました。
そのまま面白おかしい曲を吹き始めました。
笛の音が町中に広がり町の人達は皆その音楽に聴き惚れていると、すぐに異変に気がつきます。
なんという事でしょう、町中の道という道からねずみ達が次々と飛び出してきたではありませんか!
ドシューーーッ!!
ねずみ達はロケット花火のジェット噴射のように町中を飛び回りながら、それでも次第に一ヶ所に集まっていきます。それは、あの男が笛を吹いている広場の中央。
物陰から出てくるねずみがいなくなった時、先頭のひときわ大きなねずみが片膝をつきながら男に向かって言葉を発した。
「総員全て揃いました、なんなりとご命令を!」
「では命ずる、川まで飛べぃ」
「ははっ!」
返事と共に、ねずみ達は再びロケット花火のように宙を舞いだします。
ドシューーーッ!!
やや乱れながらも皆、町外れの川の中へ頭から突っ込んでいきました。
町の人達は声を上げて大喜びしました。長い事毎日悩んでいたねずみの害からやっと逃れることが出来たのです。 皆ホッとして、その夜は久しぶりにぐっすりと何の心配もせずに眠ることが出来ました。
さて翌朝、あの奇妙な服の男がやって来て、約束のお金を要求しました。
しかし村の人達はたかがねずみごときに金貨一袋をすんなり男に渡すなんてもったいないと思ってしまい、
「ほれ、銀貨一袋だ。ねずみ退治もすぐに終わった。これ位で十分だろう」
と約束のお金よりもずっと少ない金額を渡し去らせようとします。
男は納得がいかないと粘りますが、のど元過ぎればなんとやら。人々はそれ以上お金を出そうとしません。それどころか「ねずみごときで金貨一袋なんて横暴もいい所だ!」と男を批判しだしました。
男はその対応に、ムッとした表情を見せると銀貨も受け取らずにどこかへ去っていきました。
その晩、町にどこからか笛の音が聞こえてきました。
人々はすぐにあの男だとわかりましたが、お金をもらえなかった男が笛を吹いてお金を得ようとしているのだと思い、それほど気にもとめませんでした。
ところがしばらくするとあちこちの家から悲鳴が聞こえてきたのです。
「ぼうや? どこへいくんだ?」
ドシューーーッ!!
「あはははははははっ!」
「娘や、こんな時間に何をしているんだ?」
ドシューーーッ!!
「うふふふふふふふっ!」
「こ、こら! 待ちなさい!」
ドシューーーッ!!
「ひゃっはー!」
ドシューーーッ!!
ドシューーーッ!!
ドシューーーッ!!
昨日町中のねずみ達が次々と物陰から飛び出して広間に集まったように、あちこちの家から子供達が制止を振り切って飛び出していき、広場に向かって噴射されていきます。
「あはははははははっ!」
「うふふふふふふふっ!」
「ひゃっはひゃっはひゃっはー!」
子供たちがみな広場に集まりきると、みな楽しそうに散開しながら町の外へ飛び出していました。
大人達は子供達が飛び去った広場を見て驚愕します。あの奇妙な服の男が笛を吹いているのです。
「こ、子供達を返せ!!」
「あの男を捕まえろ! 笛を止めろ!!」
「殺せッ!!」
皆に必死になって男に襲いかかります。
ドシューーーッ!!
しかし男もまたねずみや子供達のようにジェット噴射で空を飛び、子供達と同じように町の外へ散らばって行ってしまいました。
町の人達はそれから捜索を始めましたが、たまに子供を見つけてもそのままドシューーーッ!! っと飛び去ってしまい、誰も取り戻せませんでした。
このことは夢の中の出来事のように遠い昔の話になってしまっていますが、町では空を見上げると楽しそうな子供達の笑い声やジェット音が聞こえてくる事があるそうです。
皆さんも、一度した約束はキチンと守りましょうね?
後払いの仕事を依頼して、それを踏み倒すだなんて、もっての他、です、よ?
「あ は は は は は は は っ !」
「う ふ ふ ふ ふ ふ ふ ふ っ !」
「し ら … … キ レ … … あ は っ !」
めでたしめでたし