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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・昔話 続
83/95

チート・ザ・ブレーメンの音楽隊

 むかしむかしある所に、人間に飼われている1匹のロバがいました。

 ロバはとても働き者でしたが、年を取って力が衰えていった事で、仕事が出来なくなってしまいました。

 そんなある日、ロバとその飼い主がある会話をしました。


「ロバ、お前を我々のパーティから追放する」


「……なんだって? それは一体何の冗談だ?」


 主人の言葉にロバは食い下がるも、返ってくるのは非情な言葉だった。


「確かにお前の力は役に立った。重い荷物を運んだのも、他の若い家畜達を育ててこれたのもお前がいたおかげだろう。……しかし、それも過去の話。今のお前はどうだ? 年を取ったため力を失い、人も荷物も運ぶことが出来ない、俺達には町一番の農家になるという重大な使命がある。タダ飯食らいのお前を置いておく理由はない。せめて食肉にしない事が最後の情けだ、さあ今すぐ出ていけ!」


 そう、ロバは飼い主に散々こき使われた結果、役に立たなくなったからと見捨てられることになったのです。

 しかしロバにも次に行く当てが一つだけありました。それがブレーメンという大きな町です。

 力を失っても鳴き声や楽器の演奏には自信のあったロバは、その町に行けば町の音楽隊に雇ってもらえるかもしれないと考えたのです。



 しばらく歩くと、1匹のイヌが道に寝転がっていました。


「おい、そこのイヌ、とても疲れているようだけどどうしたんだい?」


 ロバの言葉にイヌが答えます。


「いや実はね、俺もすっかり年を取っちまって、狩りに出かけても若い頃のように獲物を捕らえられなくなってしまったんだ。それでご主人が、『お前なんかもういらないから出ていけ』って追い出されたんだ」


 なんとイヌもまた、ロバと同じく元いたパーティを追い出された境遇の持ち主でした。


「それなら、一緒にどうだい? 俺はこれからブレーメンヘ行って音楽師になろうと思ってた所なんだ。俺はギターをひくから、きみは太鼓を叩きなよ」


 それを聞いてイヌもその気になり、同意しました。追放された者同士のパーティ結成の瞬間です。

 2匹は一緒に出かけました。


 また少し歩いて行くと、1匹のネコが道端で悲しそうな顔をしてうずくまっています。

 そこでロバはネコに声をかけます。


「おやネコのおばあさん、なにをそんなに困った顔をしているんだい?」


「わたしゃ、このとおり年を取っちまったし歯もきかなくなった。昔はネズミを追い掛け回していたんだが、今ではストーブの前でだいたい毎日ダラダラゴロゴロしていたのさ。ところがそうすると、ウチのおかみさんに追放されてしまってさ」


「へえ、じゃあ俺達と一緒にブレーメンヘ行こうじゃないか。ネコは夜の音楽が得意みたいだから、町の音楽隊に雇ってもらえるよ」


 ネコもまたその考えに同意し、3匹で出かける事になりました。遂にヒロインの加入です。一人目のヒロインがおばあさんの作品だなんて今まで一体どれほどあったでしょう。


 更に歩く3匹は、やがて一軒の屋敷のそばを通りかかりました。

 すると門の上に一羽のニワトリがとまっていて、ありったけの声で叫び立てていました。

 ロバはその鶏に声をかけます。

 

「きみは腹の底までひびくような声でないているが、いったいどうしたんだい?」


「なあに、明日食われる運命にある哀れな家畜の最期の叫びさ。気に障ったなら謝るよ」


「おいおい、なにを言っているんだ、俺達はそれぞれパーティを追放されただけだが、お前さんは食われてしまうって? それなら俺達と一緒に来ないかい? 俺達は、ブレーメンヘ行くところだ。君はとてもいい声をしている、俺達が一緒に音楽をやれば、たいしたものなりそうだぜ」


 相手の長所を褒めつつ死地から鶏を救うロバ。もう完全にヒロインを口説き落とす主人公そのものです。ニワトリはこの申し出を大変気に入りました。でもニワトリは雄です。惜しいですね。でもそれはそれで需要があるかも知れません。


 それで遂には、4匹そろって出かけました。

 やがて森の中に入り込み日も暮れると、そろそろ歩き疲れてきます。

 そんな時、前方に丁度明かりがついた小屋が見えてきたではありませんか。


 一番背の高いロバが、小屋の窓から中を覗いてみました。


「……これはすごい。うまそうな食い物や飲み物がいっぱいならべてあるテーブルがあって、そのまわりに人間の盗賊共が座っているぞ」


 その言葉にニワトリがよだれを垂らしながら反応します。


「他者から奪った食い物か、欲深い人間どもめ、そいつを奪い取ってくれる」


 そこで4匹は、盗賊を追いはらうにはどうしたらいいだろうかと相談をはじめました。

 そしていろいろ相談したあげく、良い方法を考えました。


 まずロバが窓に前足をかけて、イヌがその背中に飛び乗る。そのまた上にネコがのぼり、更にニワトリが飛びあがってネコの頭の上にとまる。

 準備が出来ると、ロバが唱えました。


「【魔獣合体変身モンストルガーディアン】ッ!!」


 言葉と共に、4匹の身体は一つになり、ロバの筋肉、犬の牙、ネコの尻尾、ニワトリの翼がそれぞれ強調された異形の化け物へと姿を変える。

 その謎のシルエットの出現を窓のカーテン越しにみた盗賊達が驚きの声を上げる。


「な、なんだこの化け物は!!」

「この大きさこの形……コイツは伝説の魔獣ケツアルコアトルッ!?」

「ユウシャァッ! どうにかしてよ!」

「落ち着けお前ら! ケツアルコアトルならこの間も女神の祝福を受けたこの聖剣で倒しただろ!」

「それもそうッスね! じゃあ別にいっか!」


 お頭の一言で、盗賊達は食事と談笑に戻ってしまいました。

 ロバたちは合体を解き作戦をかえます。


 今度はイヌとネコが横に並び、その後ろにはニワトリが続き、ロバはその3匹の前に出ます。


「【四神覚醒変化ゴッドキーパーガーディアン】ッ!!」


 ロバの言葉により、今度は4匹の身体が個別に大きな変化を見せる。

 イヌの身体は猛々しい蒼き竜のものに! ネコの身体は巨大な白き虎の姿に! ロバの身体は双頭の蛇を巻き付けた黒き亀のものに! ニワトリの身体は燃え盛る朱き巨鳥の姿に!


 窓の外で突如出現するそれらに盗賊達はまたも叫びを上げた!


「な、なんだこの化け物は!!」

「この大きさこの形……コイツは神に仕える伝説の四獣達ッ!?」

「ケンジャァッ! どうにかしてよ!」

「落ち着きなさい貴方達! 四獣ならこの間も軽くひねって眷属召喚獣にしたばかりでしょ!」

「そういやそうッスね! ちょっと覗きに来たのかな!」


 団員の一言で、盗賊達は食事と談笑に戻ってしまいました。

 ロバたちは変身を解き更に作戦をかえます。


 ニワトリが下になり、その上にネコが、その上にイヌが、その上にロバが乗っかり、ロバは再び叫んだ。


「【逸レ灰色金属召喚グレイテストガーディアン】ッ!!」


 言葉と共に、ロバ達の近くに灰色のドロドロしたスライムが複数出現。それらが窓の上に乗っかり盗賊達からシルエットが映る。


「な、なんだこの化け物は!!」

「この大きさこの形……コイツは伝説のとても固いしすぐ逃げるけど経験値メッチャ持ってる系モンスター!?」

「センシァッ! どうにかしてよ!」

「任せろ! てかお前達も手伝え! 一匹も逃すなッ!!」


 盗賊達は目の色を変えて小屋から外に飛び出した。

 それと同時に召喚されたスライムは蜘蛛の子散らすようにその場から颯爽と逃げ出す。

 盗賊達の視界にはロバ達も映っていたはずだが、それでもまったく認識していないかのように血走った目で逃げたスライム達を追い掛け出した。


「……行ったな」

「ああ、お前のおかげだロバ」

「所ですっごい重いんだけど、このフォーメーション意味あったの?」

「コ、コケ……ゴフ……」


 盗賊達が戻ってこないのを確認すると、4匹はお腹いっぱいごちそうを食べ、ブレーメンに行くのも面倒くさくなった4匹は、この家でずっと暮らしましたとさ。



 めでたしめでたし

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