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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・昔話 続
82/95

チート・ザ・ウサギとカメ

 むかしむかしある所に、一匹のウサギと一匹のカメがおりました。


「あははカメさん、君はとっても足が遅いなあ」


 ウサギは足が速いことが自慢です。そしていつも自分より足が遅い動物たちをからかってばかりいました。

 それに対して、カメはウサギに提案をします。


「そう言うのであればウサギさん、一つ私とかけっこで勝負してみませんか? たとえ足が遅くても、きっと貴方には勝てるでしょう」


「なにおカメさん、それは聞き捨てならないぞ。それならその勝負乗ろうじゃないか」


「ではここからあの山のてっぺんの一本木まで競争しましょう」


 位置について、よーいドン!

 合図と共にウサギが駆けた。

 その速度は音速を上回り、周囲に強烈な衝撃波(ソニックブーム)を撒き散らしながら瞬く間にカメを引き離す。

 カメはその衝撃波(ソニックブーム)を身を翻しながら避け、そのまま反撃に転じるべく呟いた。


「【強制魔催眠(ゴウトゥベッド)】」


 カメと大きく差をつけたウサギでしたが、走っている途中で程よい日陰のある大きな岩を見つけます。


「カメさんめ、あんなに大口を叩いたのに全然追いついてこないじゃないか。こりゃちょっと一眠りしても余裕で勝負に勝てるな」


 そう言ってウサギは大岩を背もたれにして木陰で昼寝を始めます。

 しかし、それこそがカメの狙いであった。

 スタート地点でウサギがカメにかけられた【強制魔催眠(ゴウトゥベッド)】は、一度眠りについてしまえば決して醒める事が叶わない禁じられた暗黒魔術。

 ウサギの足がどれだけ速くても最早関係ない。本人も気がつかないうちにこの戦いは終焉を迎え、すなわちウサギの敗北となる。

 不自然に襲われる睡魔に抗う事は出来ず、ウサギの意識は闇に落ちていった。


 ──いけません勇者様(ウサギさん)、貴方はこんな所で負ける存在ではないのです! さあ目を覚ましない、そして今こそこの戦いを終わらせるのです!──


 しかしウサギは目を覚ました。

 その場から勢いよく跳ね起き、現状況を把握しようと頭をフル回転させる。


(自分はどれだけの間寝ていた!? 勝負はどうなっている?!)


 近くにカメはいない。後ろを向いても見当たらない。眠ってしまってはいたが大した時間ではなかったか?


(……いや、違う!)


 そこでウサギは視線を前に向けた。

 ゴールである山の頂上の一本木。なんとカメは、既にそのそばまで足を運んでいたのだ。

 その事実に気がついたウサギは即座に駆けた。その速度はスタートダッシュの際のそれを遥か上回り、破滅的な衝撃波(余波)を生み出しながらカメへ迫る。

 カメの下まであと少しという所で、カメの姿が突如消えた。


(なにッ!!?)


 その直後、背後から放たれる殺意をウサギは察知する。

 そう、カメは一瞬にしてウサギの後ろに回り込んでいたのだ。


()った!)


 ウサギの首元に手刀を振り下ろすカメであったが、その必殺の一撃が命中する刹那、ウサギの姿もまた消えた。


「後ろだ」


 ウサギもまた持ち前の超スピードを活かしてカメの後ろに回り込み返した。

 カメはその場で瞬時に振り返ると、ウサギから放たれる拳に対し、自らのもまた拳をぶつけ対抗した。

 人知を超えた二つのエネルギーのぶつかり合いが、空気を振動させ地響きを起こす。

 

 向かい合った状態で零距離。

 こうなってしまってはもはや小細工は無用。

 二人は神経を最大限に研ぎ澄まし、一撃一撃に全力を込めて殴り合う。

 常人には手足の動きを目に捉える事すら叶わぬ息もつかせぬ攻防。

 盛大な余波を撒き散らしながら、そのラッシュのぶつけ合いはしばらく続き、弾かれるように二人同時に後ずさった。


(……強い! カメさんめ、まさかこれほどの実力を隠し持っていたとはな……! 万年生きるというその生態が可能にした不断の努力の結果という訳か!)


 次にカメがどうでるか、相手の微動一つに対応しようとウサギが更に神経を研ぎ澄ませた時、カメは構えを解いた。


「ではウサギさん、この勝負私の勝ちのようですね」


 お互いのラッシュにより、弾かれた際にカメさんは一本木のすぐ下まで移動していました。

 途中で居眠りなんてしなければウサギさんが勝っていたのにね。



 めでたしめでたし 


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