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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・バトルロワイヤル
76/95

チート・ザ・48話

 スポットライトに入ると、桃太郎はいつの間にか真っ白な空間に立っていた。

 何もないように思えるが、それでも段差は存在するようだ。ある程度離れた場所の一定の高さから、一人の女がこちらを見下ろしている。


「中央世界へお帰り! そしておめでとう桃太郎! 君がこの『第一回、チート・ザ・バトルロワイヤル』の優勝者だ!」


 最初、参加者達を一手に集めた神を自称する女。その口ぶりから、ここは最初の中央世界と同じ場所のようだ。闇一色だった空間に明かりを照らしたのがこの真っ白の世界なのだろう。

 女はとてもにこやかな表情で拍手をしながら桃太郎を出迎える。


「いやあ多種多様な参加者が集まるゲームだったが、その中でもお前は頭一つ飛びぬけていたからな! きっと来ると思っていたぞ! 番狂わせも少し期待したが、やはり本命盤石というのは良いものだな!」


 とても上機嫌に話す女に、桃太郎もまた口を開く。


「やれやれ、それで俺はこれからどうなる?」


「ああ、約束通り元の世界に戻してやるよ! しかもなんと! 優勝賞品付きだ! 私を楽しませてくれたお礼にどんな願いでも一つだけ叶えてやろう! なんたって私は絶対神だからな!」


 女の言葉に桃太郎は頭を掻き、少し考える素振りを見せる。


「やれやれ、どんな願いでも、か。いきなり言われても思いつかんな」


「まあそうだろうな! だがここでは時間は無限にある、ゆっくり考えるといい! 願いを叶えた後に元の世界に返してやるよ!」


 桃太郎は腕を組んで考え込んだ。

 女はそのままにこやかに次々と喋り出す。


「しかし、最後に勝ったのがお前で良かった。最後にお前と戦った……え~っと、シンデレラって言ったっけか? アイツはココに来た後、私に喧嘩を売るつもりだったみたいだからな。あんな奴一人が暴れた所で何の問題もないが、それでもせっかくの歓迎が台無しになる。それじゃあ興冷めもいい所だ」


 聞きながら桃太郎は女の様子をよく見た。

 何の変哲もない、普通の人間と変わらないただの女に見える。

 そんな考えを察してか、女はやや声のトーンを落として喋り出した。


「……へんな気は起こすなよ桃太郎。『あんな奴一人が暴れた所で何の問題もない』とは言ったが、それはお前が相手でも同じことだからな?」


 その言葉からは底知れぬ気配を感じる。

 桃太郎はその威圧を認め、呟いた。


「やれやれ、確かに」


 そして腰袋に手を入れ、中から黍団子を二つ、軽く宙に放り投げる。


「俺一人なら、な。【黍団子復活(ディスティニーレイズ)】!」


 言葉と共に空中の黍団子から光が発せられた。その光からそれぞれ一つずつ、計二つの人影が現れる。 

 一つは、白黒灰色の体毛と曲がりくねった二本の角を持つ二足歩行の獣。

 もう一つは、赤いフードを被ったみすぼらしい格好をした人間の少女。


「は?」


 女神の口から間の抜けた声が漏れる。

 女神はこの二人に見覚えがあった。それもそのはず、最初にこの中央世界に呼び出した参加者の二人。

 間違いなく『お母さんやぎ』と『マッチ売りの少女』の二人だったのだ。


 呆然とする女神を余所に、現れたお母さんやぎが口を開く。


「【死者蘇生(リザレクション)】」


 言葉と共に、地面にいくつもの魔法陣が浮かび上がった。

 その魔法陣が光を放ったと思うと、中から現れるは15の者達。


 お母さんやぎと同じく二足歩行で地に立つ動物、『長男ぶた』

 上に同じ、『次男ぶた』

 先の二人と同じ、『末っ子ぶた』

 天使の翼を背中に付けた少年、『ヘンゼル』

 悪魔の角を額に付け黒いレオタードを身に纏っている少女、『グレーテル』

 何もない空間に顔だけを浮かばせている、『北風』

 燃える球体、『太陽』

 真っ赤なスーツを着込んだサングラスをかけている男、『金太郎』

 坊さんの衣装を羽織るように着ている髪を剃っている頭の少年、『坊主』

 クリクリとした可愛らしい瞳の絶世の美少女、『白雪姫』

 黒い毛並みで四足歩行の獣、『犬』

 灰色の毛皮の小さな哺乳類、『チュー子』

 服も肌もほぼ全てが黄金で輝いている、『幸せの王子』

 白い巨大植物、『かぶ』

 金髪ウェーブに貝殻のビキニを付けた下半身が魚の、『人魚姫』

 

 お母さんやぎの隣で、マッチ売りの少女がいくつものマッチに火をつけた。

 そのマッチから発せられる煙が、光の雫に変わりながら地面に落ちる。

 落ちた先に現れるのは、やはり見た事のある15の者達。


 綺麗なドレスで身を包みガラスの靴を履いた美女、『シンデレラ』

 茶色の毛並みに二足歩行で立つ獣、『猿』

 赤いボディに二本ハサミと八本の足を持つ甲殻類、『カニ』

 白い道着を着込んだ筋肉隆々の老人、『翁』

 釣り竿を背負いながら狂喜の目線を向けている、『浦島太郎』

 白い着物に身を包んだ黒髪和風美人、『鶴』

 同じく白い着物を纏った藍白い髪の持ち主、『雪女』

 飄々とした笑顔を向ける若者、『わらしべ長者』

 ジトリとした眼光で睨みつけてくる老人、『花咲かじいさん』

 金色の美女、『金の小野』

 銀色の美女、『銀の小野』

 赤い和服に身を包んだ和風美人、『織姫』

 青い和服を着こなしている青年、『彦星』

 周囲から茨を見え隠れさせている少女、『いばら姫』

 赤い頭巾をかぶりニコニコと微笑んでいる、『赤ずきん』


 最初に女神がこの世界へ呼び出した33人の主人公達。

 それが誰一人欠ける事なく現れ、みな女神のほうへ視線を向けた。


「な……な、な、な、な、な、な、な、な、な……」


 女神は盛大に狼狽える。

 目の前のあり得ない出来事に、つい後ろによろけてしまった。

 そのまま足をもつれさせ、ベタンと盛大に尻餅をつく。


「やれやれ、『願いを叶えてくれる』だったよな? だが、願いってもんはこうやって自分の力で叶えるもんさ。でもま、せっかくだから優勝賞品も頂いていくとしよう」


 桃太郎はそこで言葉を区切り、女神に対しての視線に殺気を宿した。


「随分と好き勝手に俺達を弄んでくれたな女神様。アンタの首を土産に貰っていくぜ」





『長男ぶた』────復活

『次男ぶた』────復活

『末っ子ぶた』────復活

『お母さんやぎ』────復活

『シンデレラ』────復活

『猿』────復活

『カニ』────復活

『翁』────復活

『ヘンゼル』────復活

『グレーテル』────復活

『マッチ売りの少女』────復活

『北風』────復活

『太陽』────復活

『浦島太郎』────復活

『鶴』────復活

『雪女』────復活

『金太郎』────復活

『坊主』────復活

『白雪姫』────復活

『犬』────復活

『チュー子』────復活

『幸せの王子』────復活

『かぶ』────復活

『人魚姫』────復活

『わらしべ長者』────復活

『花咲かじいさん』────復活

『金の小野』────復活

『銀の小野』────復活

『織姫』────復活

『彦星』────復活

『いばら姫』────復活

『赤ずきん』────復活

 残り────33名!

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