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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・バトルロワイヤル
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チート・ザ・47話

「どうした? 来ないのならばこちらから行くぞ?」


 その言葉と共に、桃太郎の姿が消えた。

 現れる先はシンデレラの眼前。先ほどと変わらない乱打でシンデレラに攻撃を仕掛ける。

 傷ついたシンデレラではあるが、先ほどとは違い桃太郎の近接戦闘力の高さも確認済み。その動きに自分もまた両手両足をフルに使い、こちらからも乱打で対抗する。

 極限まで高められた集中力と近接戦闘の経験値の差により、ケガの分も差し引いても互角の攻防が繰り広げられた。


 が、それも長くは持たない。シンデレラが既に受けているダメージは、この刹那の攻防の中で確実に響く事になっている。

 対して相変わらず【黍団子鎧ディスティニーアーマー】を纏っている桃太郎はシンデレラからのダメージを受け付けない。

 すぐにシンデレラは押され出し、少しづつ後退し始めた。


「やれやれ、後はもうジリ貧といった感じだな」


 息もつかせぬ凄まじいラッシュの中、桃太郎は余裕そうにそう呟いた。

 攻防の中、桃太郎はシンデレラの隙を見極め、トドメを刺すプランが見えた。

 左手の一撃で相手のガードを弾いて右手でトドメ。

 その考えに基づき、まずは左手の裏拳でシンデレラの右手を横に弾く。

 ────その時、自身の左手に異変を感じ取った。

 纏っている最強防御である【黍団子鎧ディスティニーアーマー】が、弾けるように消滅したのだ。


「!」


 予想外の出来事にプランを変更。いったん後ろに下がり【黍団子鎧ディスティニーアーマー】をかけ直す。


「【黍団子鎧ディスティニーアーマー】」


 その行動には成功した。

 しかし、その隙に接近して来たシンデレラの一撃を今度は腹部に貰う。

 ────すると、またもや【黍団子鎧ディスティニーアーマー】は弾けて消えた。


 様々な力を受け継ぎ、また自分の中で昇華させてきた【虹を受け継し戦乙女アルティメットプリンセス】シンデレラ。

 熱の力で対象の温度を爆発的に上げ、冷気の力で触れたものを瞬時に完全凍結させる。

 その二つを同時に使う事により、温度に矛盾の出た対象は物質としての理から外れ、瞬間消滅する事となったのだ。

 そして、それは最強無敵の【黍団子鎧ディスティニーアーマー】とて例外ではない。


「く……!」


 このゲームが始まってどれだけ時間が経っただろう。

 ゲームが始まってからずっと冷静沈着威風堂々としていた桃太郎が、この時初めて苦悶の声を上げたのだ。


「負けられない……! 貴方がどれだけ強くても! 私は必ず勝つ! 勝って全てを終わらせに行くッ!!」


 完全消滅の力に加え、四枚の翼による機動力を持つシンデレラ。間髪入れずに相手に接近し常に近距離での戦いに持ち込む。


 しかし桃太郎も然るもの。【黍団子鎧ディスティニーアーマー】が防御の役割を果たさないのであれば、もはやそれに頼る事はしない。

 完全消滅の力を手にしたとはいえ、それは今目覚めたばかりの力。その一撃必殺の力はまだシンデレラの両拳のみにしか宿っていないことを見切ったのだ。


 身体能力は互角。体力の消耗はシンデレラの方が大きい。ならば相手の拳にさえ気を付ければ少なくとも致命傷を喰らう事はない。

 そう思って、相手の両拳をいなすように捌き始める桃太郎。

 だが、シンデレラの能力は消滅の拳だけに留まらない。

 空中にいるにも関わらず発揮される両足によるフットワークと、服の裾から出る茨が、桃太郎の動きをかき乱す。

 そして遂に、桃太郎の体勢がわずかに崩れた。


「はああぁッ!!」


 その隙を逃さず、シンデレラは最速の一撃を桃太郎のみぞおちに放つ!


「【黍団子切断ディスティニーリッパー】」


 しかしその隙は、桃太郎が敢えてつくって見せた偽りの隙だった。

 桃太郎は、シンデレラがこのタイミングで必殺の一撃を放つことを誘っていたのだ。

 桃太郎に放たれる拳を上下左右から挟み込むように刃が出現。

 その刃がシンデレラの右手を切断しようとするその瞬間、刃を止めるように右腕の裾から細い茨が出現! 更にその裾はそのまま純白のオーラを出しながら膨れ上がり、右手をより強く包み込んだ!

 いばら姫の茨が刃をいなすように側面から絡み付き、ヘンゼルの防御結界が塞き止める。

 

『桃太郎が偽りの隙をつくり自分の攻撃を誘った事』。これを、シンデレラもまたわかっていたのだ。わかっていて敢えてそれに乗り、その作戦を上回った。


 いばら姫とヘンゼルの力が、桃太郎の攻撃すら防ぐ最大の盾となり、グレーテルと雪女の力が全てを貫く最強の矛となる。


 鶴の空間魔法がなければここまで辿り着けなかっただろう。

 マッチ売りの少女の能力がなければこれらの力が解放出来なかっただろう。

 かぶの促進効果がなければ全ての力が足りなかっただろう。


 グレーテル、ヘンゼル、鶴、雪女、かぶ、いばら姫、マッチ売りの少女。

 彼等彼女等の持つ全ての力を乗せて、シンデレラの拳は遂に、最強の男、桃太郎の腹を貫いた!



 ────一撃を入れたシンデレラの身体は、そのまま桃太郎にもたれかかった。

 それは、まるで恋人同士が寄り添い合うように。


 もたれかかられた桃太郎の髪の毛は、金色から元の黒色に戻り、逆立っていたのも降ろされる。


「やれやれ……俺がお前に最初に言った、『無様に負けてここで死ぬ』……これは一つ、訂正しなければならないな……」


 桃太郎の口から、赤い血が漏れる。


「お前は決して無様なんかじゃあなかった。その決死の一撃が、確かに俺に届いていた……」 


 桃太郎の腹に、大きな穴が開いている。シンデレラの右手が抜ければ、穴を通して後ろの景色が見えそうなほどの。ゲームを通してこの男が初めて受けた肉体ダメージ。


「────だが、訂正するのはここまで(・・・・・・・・・・)だ」


 もたれかかったシンデレラの身体が、ゆっくりとぐらつく。


「『俺に敗北してここで死ぬ』」


 ぐらつき、桃太郎の身体から離れ始めた事でその状態が明らかになる。

 ────シンデレラの左胸もまた、桃太郎の拳によって貫かれていたのだ。


「やれやれ、これは、言った通りの事実となった、な……」


 シンデレラの右腕が桃太郎の腹から抜け落ちる。

 そしてその全身は、完全に桃太郎から離れると、


 ────そのまま、海に向かって落下した。


「【黍団子回復ディスティニーキュアー】」


 桃太郎は、腰袋から取り出した黍団子を使い、自身の腹に空いた穴を治療する。

 その時、結界に囲われたこの世界で、その結界の更に上からスポットライトのような光が降りてきた。


 桃太郎はシンデレラが落下した海の方へ目を向ける。もう、そこには彼女の姿は見当たらない。

 降りてきた光のほうへ足を運び、そして静かに呟いた。


「やれやれ……全く、やれやれ、だ」














『シンデレラ』────死亡


















 残ったのは────ただ一人、





























完成された最強主人公(パーフェクトチート)】桃太郎

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