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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・バトルロワイヤル
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チート・ザ・45話

 シンデレラと桃太郎。33人の主人公達の中でも、真に最強の二人がしばし見つめ合う。

 シンデレラは相手の様子を伺っていた。

 幸せの王子を一撃で葬った今の力。それが自分の限界ではない事を圧倒的直観力で理解している。自分はまだまだ力を出せる。

 しかし相対する男、桃太郎の(チート)さもひしひしと伝わる。決して力任せに戦っても勝てる相手ではない事を理解しているのだ。


 そう考えているとき、桃太郎が静かに動いた。

 両の手の平を打ち付け、パチパチと拍手をする。

 

「まずは褒めておこうかシンデレラ。多種多彩な強さを誇る猛者達が集められたこの島で、よくここまで勝ち残った」


 そして腰袋から黍団子を一つ取り出し、やはり静かに呟く。


「【黍団子探知ディスティニーレーダー】」


 言葉と共に、桃太郎の前に二つの光の玉が現れる。

 明らかに攻撃を目的としたものではなく、ただ浮かんでいるだけの物。


「見ろ、半径数百キロの生命反応を探知する俺の黍団子に引っかかった反応だ。草木や小動物のような小さなものは探知しないようにしている……ゲーム開始時、33あった光の玉が今やわずか二つだけ」


 桃太郎は軽く手を振る。

 すると、光の玉は跡形もなく消えた。


「つまり、この島で生き残ったゲーム参加者は、もはや俺とお前の二人だけだ」


 それは、シンデレラも予想していた事だった。

 多方向からいくつもの強大な戦いの余波が、音で、肌で、匂いで感じていたのに、今はもうどこにもない。

 桃太郎の言っている事は真実だろうと判断し、シンデレラは真っすぐ言い返した。


「そう……それなら貴方が言う通り、これがゲーム最後の戦いね」


 シンデレラは拳を構える。凛とした真っすぐの瞳で相手を見つめたまま、更に言葉を続ける。


「神を名乗る女は最初に言っていたわね。『生き残った一人だけがこの中央世界を通して元の世界に帰れる』、と」


 覚悟を決めた、それでいて誠実なシンデレラの瞳。


「貴方に勝って、ふざけたゲームはこれで終わり。……でもこのゲームが終わっても、あの傲慢で残酷な神はいつか必ず同じような事を繰り返す事でしょう」


 その内に込められた想いを、シンデレラははっきりと言い放った。


「私は中央世界で、神を倒します」


 シンデレラの言葉に、桃太郎は頭を掻いた。

 そして見下すような視線でシンデレラに言葉を投げかける。


「やれやれ不可能だな、お前一人で神を倒すことなど」


「一人なんかじゃないわ、私には今、本当に沢山の人たちの力と想いが宿っている」


「やれやれ、わからないか?」


 桃太郎はそこで一度言葉を区切り、フーっと息を吐くと更に続けた。


「神に挑む前に、お前は俺に敗北する。無様に負けて、ここで死ぬ」


 言い終わるのが早いか行動が早いか、桃太郎はその時、再び腰袋に手を入れていた。

 中の黍団子を投げつけると同時に言い放つ。


「【黍団子爆弾ディスティニーエクスプロージョン】」


 放たれた黍団子は真っすぐシンデレラに飛来。

 グレーテルからの能力譲渡を切っ掛けに、圧倒的な力を手にしたシンデレラであればこの程度の攻撃は弾いて終わり。いや、力を手にする前のシンデレラでもそれで良かっただろう。

 しかし、シンデレラは敢えてその攻撃を余裕を持って回避した。

 その一瞬後、投げつけられた黍団子が爆発する。

 その爆発の範囲はさほど大きくはなかった。せいぜいが直径1メートル強といった所だろう。

 だが、その爆発は通常のものとは何かが違った。

 それもそのはず。通常、爆発とは押さえつけられていたエネルギーが耐えきれず弾け、周囲にまき散らされるもの。

 だが、桃太郎が放った【黍団子爆弾ディスティニーエクスプロージョン】は、爆発のエネルギーをそのわずか一メートル強に凝縮させ留まらせていたものだったのだ。

 多種多様の効果を持ち、一つ一つが極めて強力なエネルギーを発揮する桃太郎の黍団子。

 そのまま爆発させたのであれば猿の【団子ジェノサイドダークネスメテオストライク】のような余波も出せただろう。

 だが、それを敢えて凝縮させた事により、爆発範囲内の温度は実に数十億℃! 地上の全てを溶かしつくすようなエネルギーがその一点に集中させられた一撃必殺の技だったのだ。


 それを回避したシンデレラは、神速の動きで桃太郎の懐に入る。


「はあぁッ!!」


 そして投擲のポーズを取ったままの桃太郎に、強力なボディブロウをお見舞した!

 ────が、桃太郎の腹に拳が当たる寸前で、その一撃は何かに遮られる。


「【黍団子鎧ディスディニーアーマー】、お前の攻撃は俺には届かない」


 桃太郎は既に強力な防御能力を自身に使っていた。

 自分の動きに合わせて、動きの通りに形を変える不可視の結界【黍団子鎧ディスディニーアーマー】。

 その強度は、仮に桃太郎自身の技【黍団子爆弾ディスティニーエクスプロージョン】を喰らったとしても耐えしのぐ最強の鎧。


「あああああああぁッ!!」


 だがシンデレラはそのまま更に踏み込み、拳に一層力を込める。

 結果、【黍団子鎧ディスディニーアーマー】を破ることは出来なかった。

 が、凄まじい風圧を周囲にまき散らしながら、なんと【黍団子鎧ディスディニーアーマー】ごと桃太郎を大きく吹き飛ばしたのだ。


 一撃ではるか上空まで殴り飛ばされた桃太郎。

 飛ばされながら腰袋に手を入れ、曲芸師のように複数の黍団子を宙に浮かせた。


「【黍団子爆弾ディスティニーエクスプロージョン・8連】」


 一撃で範囲内の全てを消滅させる必殺の【黍団子爆弾ディスティニーエクスプロージョン】。

 今度はそれが八つシンデレラの方へ放たれる。

 その威力はまさに脅威の一言。並の相手に対してならばそのまま殲滅、もしくは相手の心を恐怖と絶望に染める事ができるだろう。

 しかしシンデレラは、それを目の当たりにしても全く怯まず、地面を蹴りながら大きく跳んだ。

 その跳躍は、八つの【黍団子爆弾ディスティニーエクスプロージョン】を一瞬で潜り抜け、吹き飛ばした桃太郎の眼前まで迫る。


「やあああああッ!!」


 吹き飛ばされ宙を舞う桃太郎に対し、今度は強烈な蹴り落としをお見舞する。

 桃太郎の身体は斜め下方向に進路をかえながらまたもや勢いよく飛び、大きな崖に激突。崖は轟音を響かせながら崩れ、大きな土煙を巻き起こす。


 その桃太郎に更に追撃しようとした時、土煙の中から声が聞こえた。


「【黍団子爆弾ディスティニーエクスプロージョン・255連】」


 言葉と共にシンデレラ目掛けて、あるいはその周囲に発射される無数の黍団子。

 空中で身動きの取れないシンデレラは今度は躱す事が出来ない。

 ────というのは、今までの(・・・・)シンデレラだった場合である。

 シンデレラは背中に生やした四枚の翼を大きく羽ばたかせ、空中で軌道変換すると黍団子の嵐の中に飛び込んだ。

 周囲で次々と爆発する【黍団子爆弾ディスティニーエクスプロージョン】。

 シンデレラはその爆発範囲をギリギリで見極めながら桃太郎に迫る。

 その勢いのまま、またもや渾身の拳が桃太郎に命中。正確には桃太郎が纏う【黍団子鎧ディスディニーアーマー】に命中。

 桃太郎の身体は、崩れた崖の奥に押し込まれるように更に吹き飛ぶ。

 ────どころではない。そのまま崖を貫通し、さらに奥の崖に激突。その崖すらを突き破り三つ目の崖に当たったところで、ようやく桃太郎の身体は動きを止めた。


 吹き飛ぶその過程で、不可視の【黍団子鎧ディスディニーアーマー】が音を立てた。

 小さな音ではあったが『ピシッ』という金属に亀裂が入ったような音。

 シンデレラはそれを聞き逃さない。


「はあッ!!」


 シンデレラは気合を入れる事で周囲の地形を吹き飛ばした。

 瓦礫や土煙はまとめて消え失せ、はるか遠く数キロ先に桃太郎の姿が見える。

 シンデレラは超神速を発揮し桃太郎まで距離を詰めると、今度は乱打(ラッシュ)の構えに入る。

 しかしその僅かな時間の間に、桃太郎もまた攻撃の準備を終えていた。


「【黍団子爆弾ディスティニーエクスプロージョン・65535連】」


 いつの間にか四方八方全てに展開されていた黍団子。その終末の流星群が二人を目掛けて降り注ぐ。

 爆音。轟音。大轟音。消滅音。また轟音。

 

 一分にも満たないここまでの攻防により、この島自体に変化が起こっていた。

 そう、二人の戦いにより発生したこの破滅的な余波に耐えられず、島そのものが破壊され海に沈み出したのだ。


 そして、その消えゆく巨大な島から二つの影が飛び出した。


「【黍団子飛行ディスティニージェット】」


 一つは、両足の(かかと)に火を噴く黍団子をつけ空を飛ぶ桃太郎。

 もう一つは、四枚の純白の翼を羽ばたかせ桃太郎を追うシンデレラ。


虹を受け継ぎし戦乙女アルティメットプリンセス】シンデレラ VS 【完成された最強主人公(パーフェクトチート)】桃太郎。

 二人の戦いの舞台は、地上から空へと移行した。

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