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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・バトルロワイヤル
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チート・ザ・27話

 幸せの王子は、黄金の剣を力任せに大きく振るった。

 それにより発生するのは、空を切り裂き地面を抉る強大な衝撃波。


 いばら姫は既に力が枯渇寸前であり、そもそも茨の防御力で幸せの王子の攻撃力を防ぎきる事が出来ない。

 それぞれの力関係を把握したシンデレラは、いばら姫を瞬時に抱き抱えると大きく上へ跳び上がり、衝撃波をかわした。


 その時、遠くからまた金太郎の銃口がキラリと光る。

 シンデレラは、その銃弾の軌道を見切ると空中で身をよじりソレも何とか回避。そのまま地面に着地するも、先程脇腹に受けた傷から赤い血が地面に落ちる。

 その様子を見て、幸せの王子が口を開いた。


「中々良い動きではある、が、既にそれだけの傷、そして足手まといを庇っての動きは辛かろう」


 幸せの王子の挑発。

 幸せの王子としてはまず相手の数を確実に減らしたい。その為に高速で動き回るシンデレラよりも、最早自力ではろくに動けないいばら姫の方から仕留めたいのだ。


「先程金の小野の包囲結界から助けてもらった恩があっての事じゃろうが、それで共倒れになるか? 神速の姫ぎみよ」


「……」


 幸せの王子の言葉に、シンデレラは沈黙する。

 概ね相手の言う通りなのだ。

 いばら姫を庇いながらであれば当然自分のパフォーマンスに大きな支障が出る。金太郎と幸せの王子の連携攻撃をいつまでも避けれるものではない。

 かと言って相対する幸せの王子の攻撃力、そして防御力が圧倒的なのはいばら姫との戦闘で見てとれる。

 先程は相手の不意を突き、相手の力を利用して転ばせる事は出来たが、真正面から相対している今はそれも難しい。

 という事は、戦うにしても逃げるにしても、同盟を組んだばかりのいばら姫を見捨てての行動が望ましい、が、


「気に食わないのよ、貴方達の思い通りになるのが」


 シンデレラはそうはしなかった。

 真っ直ぐな瞳でそう吐き捨て、いばら姫を抱き抱えたまま次の行動に移ろうと足に力を込める。


「……そうか、ならば最早これ以上は言うまい、二人仲良く死ぬがいい」


 幸せの王子も右手に力を込め、更なる追撃姿勢をとった。その時────


「いいわ、ありがとうシンデレラ、降ろして頂戴」


 いばら姫がため息を付きながら声を発する。

 その言葉に、シンデレラは抱いているいばら姫の方を見た。いばら姫もまたシンデレラを見返す。


「アイツは私が何とかするわ、貴女はもう一人をお願い」


 いばら姫の言葉に、幸せの王子は眉を潜める。


「お主が余を何とかする……シンデレラが余を潜り抜けて金太郎殿の元へ向かう……随分と余もナメられたものだな」


 幸せの王子に追い詰められ、シンデレラに庇われ続けていたいばら姫であったが、何も考えがなくいい放ったわけではない。

 いばら姫は幸せの王子達と遭遇してから、自身の能力【茨式分析(ローズサーチ)】をずっと使っていた。

 それにより、扱う茨や自身の身体に触れた幸せの王子とシンデレラの性能(パラメーター)能力(スキル)精神状況(メンタル)残り体力(HP)にまでほぼ正確に把握していたのだ。


「シンデレラ、一瞬だけ隙をつくって頂戴」


 シンデレラもまたのいばら姫の眼を見て理解する。

 抱き抱えている年下の少女が何を考えているかを、どのような結果を覚悟しているか、を。


「わかったわ」


 シンデレラはいばら姫を地面に降ろした。

 幸せの王子に、多少フェアな精神でもあるのかはたまた様子を見ているのか、その動作の間はそのまま立ち尽くしていた。


 いばら姫の足が地面に着く──その瞬間! シンデレラは履いているガラスの靴を蹴り上げと同時に幸せの王子に靴飛ばしの要領で射ち放った!

 幸せの王子はその飛び道具を黄金の剣で迎撃する。


「下らん小細工ををおおぉお?!?」


 剣を振るう事で粉々に砕くはずのガラスの靴の威力(エネルギー)は、幸せの王子の予想を遥かに上回った。

 ガラスの靴を弾く事には成功するが、自身の腕も大きく弾かれバランスを崩す。


(この重量(パワー)! 今までコレを履いてあの動き(スピード)を出していたというのか?!)


 その隙をつき、シンデレラは更に動いた。

 もう一足のガラスの靴も脱ぎ捨てると、金太郎がいるであろう射撃がきた方角へと一気に駆ける。

 これまでの戦いでも神速を誇ったシンデレラであったが、ガラスの靴を脱ぎ去り足の負傷もない現在速度は正に超神速!


 バランスを崩した幸せの王子はその動きに対応仕切れない。

 ───はずだった、しかし幸せの王子もまたゲーム参加者として実力者(チートキャラ)の一人。

 蒼く輝くサファイアの眼でシンデレラ自身及びシンデレラが跳ぶ軌道を補足し、その瞳から光速の蒼い熱線を発射する!


 ────が、その刹那前にいばら姫が行動を移していた。

 残った力を振り絞り、高らかに叫ぶ。


「【茨式大木(ローズツリー)】ッ!!」


 叫びと共にいばら姫の前にこれまで以上の極太の茨が一本凄まじい速度で生える。

 幸せの王子の防御力にはいばら姫の攻撃はことごとく通じない事は実証済み。

 しかし茨の召喚、それ自体が目的ではなかった。

 この極太茨は地面の養分を栄養に伸びている。即ち、幸せの王子の足元の地面も。


「ぬおおおおおぉ!!?」


 幸せの王子自身の重量も相まって、養分を吸われ尽くした足元は激しい地盤沈下を起こした。

 幸せの王子はソレに呑まれ、更に放とうとしていたサファイアの光線がその場で暴発する。

 結果、幸せの王子は穴に落ち、更なる落石群により蓋をされる事となった。


 



 全力で駆けるシンデレラの前方から、無数の黄金の弾丸が飛来する。

 金太郎はシンデレラの高速接近を確認すると、遠距離射撃銃(ライフル)から中距離連射銃(マシンガン)に切り替えたようである。

 金太郎の持つ武器はいずれもこの世界のゲーム参加者にも通用する極めて強力な兵器。

 しかし、ソレもあくまで命中すれば、の話である。

 圧倒的身体速度、反射神経、動体視力、戦闘直感、それら全てをあわせ持つシンデレラはそれら全てをかわし、金太郎への接近を完了させた。


 見渡しの利く一本の大木の上で初めて目があうドレス姿の姫と赤いスーツのヤクザ風男。


「さっきは熱いご挨拶、どーも」


 痛む脇腹を抑えながらやや上の枝からシンデレラは金太郎を見下ろした。


 金太郎の近接戦闘能力は高いわけではない。それは金太郎も熟知している。


「僕に動かせない金はない」


 即ち、敵に接近された時の対処法も準備している。

 シンデレラの立つ枝の周囲から設置された黄金の網がシンデレラに被さった!

 その強固な網に、金太郎はマシンガンを躊躇う事なく乱射する。


「貴方、ほんと救えないわね」


 ────が、シンデレラは既に金太郎の後ろに回り込んでいた。

 声に気がついた金太郎は懐から黄金の短銃を取り出しつつ背後に振り返る。


 しかし、この間合いでシンデレラに速度での対決など、最早勝負にならなかった。


「はあああああああああああああああああああああああああぁぁッ!!!!」


 シンデレラ渾身の両拳による乱打(ラッシュ)が金太郎の全身に命中。

 全身の骨が音を立て砕け、高価なサングラスのレンズも無惨に飛び散る。


 あらゆる金を扱い、人の心の隙間に入り込む技術にも長けたこの男は、大木からの落下と重なるようにこのゲームの盤面からも脱落した。





『金太郎』────死亡

 残り────15名

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