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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・バトルロワイヤル
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チート・ザ・13話

 赤ずきんちゃんが起こした炎に包まれた花咲かじいさん。

 しかし、その中であっても眼光の強さはまったく衰えない。

 燃え盛る植物じいさんからは、獄炎と一緒に燃え尽きた灰もまた幾分か舞い上がる。

 突如、火だるまじいさんがポツリと言葉を発した。


「【虹色の灰(フラワーズグレイ)】」


 舞い上がり地に落ちた植物の灰がまた色鮮やかな花々に変わって咲き誇り始める。

 そしてそれらがまた燃え広がる事により、炎は更に大きくなっていった。


「まあ綺麗!」


 赤ずきんちゃんは自身の頬に手を添え、その様子をウットリと眺める。

 その後方で、二首となってしまった犬の声が聞こえる。


「くそ……くそッ!! テメェらもう許さねえ!」


 犬は大きく力を込める。

 それにより二つの頭がそれぞれ獅子と竜のものに変化する。


「ぬうううううううううぅぅ……ッ!!」


 変化はそれだけには留まらず、失った首からは更に山羊の頭が生え、尻尾は大蛇に変わり、背中からは蝙蝠のような翼が生える!


「【第三形態凶悪合成獣(キマイラチェンジ)】ッ! クソ共があッ!! 肉片残らず食い尽くしてくれるぞぉッ!!」


 完全な合成獣(キマイラ)と化した犬が赤ずきんちゃんのほうへ飛び掛かる。

 炎に見惚れていた赤ずきんちゃんもそちらに振り返った。


「狼さんじゃなくなっちゃったね」


 飛び掛かってくる合成獣()に対し、赤ずきんちゃんは先ほど跳ね飛ばした第二形態(ケルベロス)の頭を犬の方へ投げつけた。

 高速で跳ぶ魔犬の首はそれだけで高い破壊力(エネルギー)を発揮するが、合成獣()は竜の頭を使い空中でソレを口でキャッチ。

 先ほどまで自分の頭だったモノをかみ砕きながら赤ずきんちゃんを圧殺するかのように突撃する。

 が、赤ずきんちゃんは素早い身のこなしでソレを余裕を持って躱す。


 かわしながら手刀を振るい、真空波を合成獣()へ飛ばす赤ずきんちゃん。

 合成獣()は迫り来る真空波に対し、山羊の頭が何やら不気味な呪文を呟く事でソレをかき消した。


 その時、燃え盛っていた花咲かじいさんが動いた。

 炎も花々も脱ぎ捨てるかのように元の老体だけが真上に跳ぶ。

 いや、その老体の下にはやはり炎の塊があった。

 花咲かじいさんが乗るその炎の塊は、よく見ると翼があり嘴があり鈎爪があり、大きな鳥の形をしている。


「ワシの灰から()でるのは花だけではないぞ。【不死鳥の灰(フェニックスグレイ)】、その身に受けよ」


 花咲かじいさんがそう言うと、炎の中から次々と全長2メートルは超えよう巨鳥が次々と姿を現した。

 炎に包まれた巨体による体当たりはそれだけで脅威。

 複数の不死鳥達はそれぞれ数体ずつ合成獣()と赤ずきんちゃんへ襲い掛かる!


「鳥風情があああぁぁぁッ!! 順番に喰らってやるぞおおおおおおぉぉぉッ!!」


「あはっ! きれいきれい~!」


 犬は剛力で巨体の体当たりを塞き止め、肉体の強度で炎も耐えきる。

 そして巨鳥の勢いが止まった所で複数の頭でかぶりつき、有言通り生み出された火の鳥を順番に喰らっていった。

 赤ずきんちゃんは身軽な動きで飛び回りながら巨鳥の体当たりを滑らかに躱わし、回避際に腕力で首をねじ切ったり投石で撃ち落としたりして火の鳥を撃破。


 合成獣()にも赤ずきんちゃんにもまるで効いていない【不死鳥の灰(フェニックスグレイ)】ではあったが、それでも二人の意識をそちらに向けることには成功。その隙に花咲かじいさんは更に灰を周囲にばら撒いていた。

 適当にばら撒いていたかのように見えた灰だが、それは風に乗って規則正しく地面に落ちてゆき、いつの間にか地面に灰で描かれた巨大な円が出来上がっている。


「【牢獄の灰(プリズミックグレイ)】」


 花咲かじいさんが呟いた時、灰の円から一斉に桜の巨木が凄まじい速度で生えだした。

 円の内径にいた合成獣()と赤ずきんちゃんはその巨木の森の中にあっという間に呑みこまれる。

 いや、森どころではない。成長する巨木は横幅もすさまじい速度で膨れ、尚且つ枝が複雑に絡み合う。

 巨木と巨木の間に隙間が殆ど無くなり、【牢獄の灰(プリズミックグレイ)】の名の通り、参加者二人を完全に密閉した。

 捕えて終わりではない。

 巨木は美しい桃色の花を咲かせながら更にギチギチと音を立てながら膨れ上がっていき、中の二人をそのまま圧殺する勢いで膨張を続ける!


「この色なき枯れた世界に、貴様らの血で綺麗な花を咲かすが良い」


 成長しきった桜の巨大樹を見ながら、花咲かじいさんは手を合わせた。

 そして乗っている不死鳥の頭を優しく撫でると、不死鳥は身体を180度方向転換し、更に高く羽ばたこうと翼を広げた。


 ────その時、不死鳥ごと花咲かじいさんの身体の胸から下が消え失せた。

 無くなった部位から溢れるのはやはり赤い血ではなく、色とりどりの綺麗な花。

 残った上半身と眼球をできる限り動かし、花咲かじいさんは自身に起こった事を確認する。


 不死鳥と自身の下半身があった場所には、幅3メートル近い極太で冗長な棒に変わっている。

 その棒はワニのような緑色の鱗で覆われており、不死鳥と下半身を吹き飛ばしたその先端は、竜の頭のようなモノが付いている。


 花咲かじいさんは力を振り絞って後ろを振り向く。

 そこには、【牢獄の灰(プリズミックグレイ)】を突き破って出ている複数の竜の首が目に入った。


「【第四形態八岐大蛇(ヒュドラチェンジ)】……不死鳥の力、取り込まさせて貰ったぞ!」


 竜の頭のうちの一つが、犬の声でそう呟いた。

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