チート・ザ・11話
周囲を見渡しやすい開けた崖の上、レンガで出来た大きなの家がそびえ立つ。
その家の中では、三人のゲーム参加者が暖を取りながら話し合っていた。
胸の名札に付けられた文字はそれぞれ『長男ぶた』『次男ぶた』『末っ子ぶた』。
その中の一人、末っ子ぶたが一息ついた安堵の表情で口を開く。
「しかしビックリしたよ、兄さん達が生き返っただなんて」
その隣で長男ぶたが腕を組みながら考え込んだ。
「ああ……我ながら驚いている。だが、そんな感傷に浸っている暇もあまりないようだな」
長男ぶたの言葉に、紅茶をすすりながら次男ぶたも呟いた。
「異世界の猛者達との戦いか……狼以上の猛者達だと仮定するならば、厳しいものになるだろう」
二人の兄の神妙な言葉に、末っ子ぶたはなるべく明るく振舞おうと笑顔で語り掛ける。
「大丈夫だよ! 僕のこの【絶対防御大豪邸】の凄さは知っているだろう? この家は絶対に壊れない。この中で籠城をしている限りは負けはないさ」
末っ子ぶたの言葉に長男ぶたは視線をそちらに移す。
「ああ、お前の力は信じている。しかし、守ってばかりでは相手を倒すことは出来ん。ずっとこの中にいるというわけにもいくまい」
その言葉を聞き、次男豚がフッと笑った。
「それならば俺の出番だな、俺の【木霊巨神兵】は簡単にならば遠隔操作も出来る。弟の最強の盾があれば絶対に負けんし、この中から俺のそこそこの矛を使えば、まあ安全に迎撃は出来るだろう」
次男ぶたの言葉に、長男ぶたも納得した。
「……そうだな。それが最善か。せっかく見晴らしの良いところに【絶対防御大豪邸】を建てたのだ、周囲の様子を伺いながらそれでいくとしよう」
慎重な長男ぶたを何とか納得させる事が出来た事に、末っ子ぶたは安心した。
作戦会議から一転話題を変えて二人の兄に話しかける。
「ねえ兄さん、僕、元の世界で狼を倒したよ、兄さんたちの仇を打ったんだ! でもその後はやっぱり寂しくてさ、この世界に急に連れてこられて殺し合いを命じられた時はビックリしたけど、やっぱり兄さん達にまた出会えて嬉しいな!」
「ほう! あの狼を倒したか! 武力を持たないお前が良くやったな!」
「この戦いでもお前のこの力がメインになるだろう。それに戦いのルール、三人でチームを組んでいいのは俺たちだけだ、圧倒的有利だ! 油断は出来んが気楽にいこう!」
「うん! 僕ら三人の力が合わされば絶対に勝てるよ! 他の参加者たちには気の毒だけど、三人で必ず帰ろう! 元の世界に!」
サバイバルゲーム攻略の戦略に目処が立ち、三人は前向きに明るく笑い合った。
そしてその時、別の部屋の方からコンコンと窓を叩く音が聞こえる。
その音に対し、末っ子ぶたが警戒する。
「……なんだろう、風の音? それとも他のゲーム参加者かな? ちょっと僕が見てくるよ」
「いやまて、せっかくだ皆で行こう。どうせ何が来てもこの家は破れんのだから、来ているのが敵だった場合、三人で見て、その場で話し合って対応を決めようじゃないか」
長男ぶたの提案に他の二人も首を縦に振る。
そして音のする部屋に足を運んだ。
音の正体は、やはり外の人物が窓を叩く音だった。
子ぶた達はその相手をまじまじと見つめる。
年端もいかない一人の人間の少女。
色白の綺麗な肌に良く似合った美しいドレスを身に纏い、この殺し合いの世界には似合わないあどけない瞳が窓越しにじっとこちらを見つめている。
ぷるんとしたみずみずしい唇が可愛らしく動き、妖精のような美声がその口から洩れた。
「【美貌光線】」
少女の胸に付けられた名札の文字は『白雪姫』。
小ぶた達の意識はそこで暗転した。
死亡者────無し
残り────27名