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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・バトルロワイヤル
30/95

チート・ザ・2話

 青空が広がる大きな島の上空に、一つの燃え盛る球体が浮かんでいる。

 その球体には目や口などの顔のパーツが付いており、口のやや右下の辺りに先ほどの女に付けられた『名札』も付いていた。

 名札に書いてある文字は『太陽』。


「ふむ、それなりに大きな島ではあるな、なあ北風よ」


 上空から島を見下ろした太陽は自身の隣に声を投げかける。

 そこにあるのはそこそこの速度で吹く風のみ。

 いや、よくみるとその何もないはずの空間に、太陽と同じような顔のパーツと名札が宙に浮かんでいる。

 こちらの名札の文字は『北風』。


「ああ、しかしだ太陽よ、あの女は我らに向かって『下等生物共と殺し合いをしろ』と言った。だがそんな必要もないのではないか?」


「どういう事だ北風よ」


「単純な事だ、我らの力を持ってして、この空間そのものを破壊してしまえばいい」


 北風の大胆な発言に、太陽は一瞬眉を潜めるもすぐに思い直す。


「ふむ……確かにあんな訳の分からん女の言いなりになるのも癪ではあるな。北風よ、その考えに俺も乗ろうぞ」


 そう言って北風と太陽は更に上空へ移動していった。

 しかし、ある程度の高さで太陽は勿論、物質の身体を持たない北風の動きも止まる。


「む、ここに見えない壁のようなものがあるようだな北風よ」


「ああ、どうやらここが世界の境界線のようだ。では太陽、やるぞ」


「おうよ」


 太陽が頷くと、二人は自らの身体に力を込めた。

 太陽は一段と強く燃え盛り、北風も顔の中心に暴風吹き荒れさせる。


「【新星灼熱天国(プロミネンスノヴァ)】ッ!!!」

「【永久北風神撃(ボレアスフルストーム)】ッ!!!」


 二人の呪文と共に、世界そのものを吹き飛ばす程の爆熱暴風が見えない壁に向かって放たれた。

 ────が、


「……なんだと?」


「我らが奥義を喰らって傷一つつかんとは」


 壁自体が可視状態ではないため傷の有無はわからない気もするが、とにかく見えない壁を破る事は出来ていない。


「むうぅ……太陽よ、もう一度やるぞ」


「いや北風よ、この結界を破るのは想像以上に骨が折れそうだ。ならばいっそこの『ゲーム』とやらをさっさと終わらせた方が良いのではないか?」


 太陽の提案に北風はしばし沈黙し、島を見下ろした。

 随分上まで来たため島全体を容易に把握する事が出来る。


「確かに、な。あの女は言っていたな、我らは手を組んでも良い、と」


「ああ、俺たちが今と同程度の技をこの島に打ち込めば下等生物共は一人たりとも生きてはいられまい」


 二人は空間の壁からバトルロイヤルの舞台となる島へと攻撃の照準を変え、再び奥義の構えに入る。

 

 ────その時、二人の背後に音もなく一つの人影が現れた。

 上空数千メートルの足場も何もない空間に降り立ったその男、北風や太陽と同じ名札を胸に付けている。

 胸の文字は『桃太郎』。

 桃太郎は、腰袋から素早く茶色の物体を二つ取り出し、静かに唱えた。


「【黍団子吸収ディスティニードレイン】」


 その言葉とともに、北風の顔及び名札、そして周囲に吹き荒れる風は瞬く間に桃太郎の左手の物体に吸い込まれる。


「な……!?」


 太陽はその事態に慌てて後ろを振り向こうとする。が、もう遅かった。


「【黍団子凍結(ディスティニーアイス)】」


 太陽が振り向く前に、桃太郎の右手の物体から高密度の冷気が放出され、燃え盛る太陽の全身に覆いかぶさる。

 結果、太陽は振り向き切る事なく完全に凍り付き、そのまま海に落下した。


「やれやれ」


 天空を制する二人を一瞬にして葬った桃太郎は、何事もなかったかのように頭をかく。

 腰袋から先ほどと同じ茶色の物体────黍団子を取り出すと、それを握りしめながら再び呟いた。


「【黍団子転移(ディスティニーワープ)】」


 言葉と共に桃太郎の身体が一瞬にしてその場から消え去る。

 それにより、賑わしかった空の上には何もなくなった。





『北風』────死亡

『太陽』────死亡

 残り────31名

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