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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・昔話
26/95

チート・ザ・茨姫

 むかしむかしある所に、立派な王国がありました。

 ある日、国の王様と王妃様の間に可愛い女の赤ちゃんが生まれます。

 王様は大層喜んで、お祝いの席にはその国に住む魔法使いを1000人呼ぼうとしました。

 しかしお客さん用の金の食器が999人分しかない事に気がつき、1人は直前で呼ぶのを止めました。


 お城に呼ばれた999人の魔法使いは、お姫様に様々なチート能力を授けます。

 するとその時、お祝いに呼ばれなかった1000人目の魔女が姿を現しました。呼ばれてもないのに。



994 王女を祝う名無しさん

茨を操る能力出すわ


995 王女を祝う名無しさん

じゃあ俺は茨をメッチャ強くするチート出す


996 王女を祝う名無しさん

茨に花を咲かせるチートあげますね


997 王女を祝う名無しさん

茨からいい匂いが出るチート附加しといた


998 王女を祝う名無しさん

茨からビーム出せるチート与えたった


999 王女を祝う名無しさん

ちょw なんでお前ら茨系能力ばっかなんだよwww


1000 王女を呪う名無しさん

>>1000なら王女は15歳の時に(つむ)に刺されて死ぬ


1001

このスレッドは1000を超えました。

もう書けないので、新しいスレッドを立ててください。。。




 さぁ大変です、このままでは可愛い可愛い王女は15歳で亡くなってしまいます。

 呪いをかけられたタイミングがタイミングだったため他の魔法使い達には呪いを解くことができませんでした。

 そこで、ツッコミに夢中でまだチートを与えていなかった999人目の魔法使いが別スレッドを立てて『死ぬのではなく100年眠りにつくだけ』に和らげました。






 王様は国中の錘を燃やすように命令します。

 その後、お姫様はすくすくと成長し15歳になりました。


 ある日お姫様は、ひとりで塔の中に伸ばした茨に乗って窓から入ると、奥でおばあさんが錘を使って糸を紡いでいました。


「おばあさん、なにをしているの?」


「これでお洋服をつくっているのさ、近くでみてごらん」


 お姫様は言われるがまま、錘を持っているおばあさんに近づきます。

 そして、お姫様がすぐ横まで来た時におばあさんは叫んだ。


「かかったね! この時を15年間待っていた! 今こそわが(うら)みを思い知れ! 【死滅錘針(ニードルスタッブ)】!!」


 おばあさんはお姫様に向かって錘の針を発射した。

 が、しかし、その針を防ぐように太い茨が二人の間に割って入る。


「【茨式自動防御(ローズオートガード)】。残念だったわね魔法使いのおばあさん」


 お姫様は大した感情もなくそう呟いた。

 しかしそんなお姫様とは対照的に、周囲の茨は怒り狂ったように暴れ出す。


「あら、【茨式自動迎撃(ローズオートデリート)】まで発動してしまったわ」


 お姫様は大口を開けながら、その口におしとやかに手を添え目を丸くする。

 そして荒れ狂った周囲の茨は、そのお姫様以外の全てをなぎ倒す!


「ぐほぁ!!」


 勿論おばあさんもその例外ではなく、極太の茨の一撃を胴体にもろに喰らい、ボギリという鈍い音と共に宙を舞った。


 ────その時だった。おばあさんが持っていた錘の針、その小さな針が空中で零れ落ちる。

 敵意も殺意もない偶然の落下。故にその動きに対して【茨式自動防御(ローズオートガード)】は作動しない。

 その小さな針は吸い込まれるかのようにお姫様の場所まで落下し、その細い首筋に突き刺さる。

 その瞬間、お姫様はその場で倒れ深い眠りに落ちていった。

 吹き飛ばされ落下したおばあさんは、あばらがへし折れ口から流血しながらも、信じられないような顔をして口を引きつらせる。


「は、はは……こんな事があるなんてね……いや、これこそ魔女(わたし)の呪い、か……ぐふっ」


 そしておばあさんも倒れた。

 更にはお姫様の意識が途絶えた事で、お姫様が生まれた時に授かった518番目の能力【茨式自動道連れ(ローズオートリンク)】が作動する。

 茨から放たれた強大な魔力が国全体を覆い、王様もお妃様も家来たちも、いやそれどころかこの国の生けとし生きる者全てがお姫様と同じように深い眠りについてしまった。

 更には【茨式自動防御(オートローズガード)】はお姫様を中心に数キロメートル伸びていき、丁度お城全てを覆いつくしてしまった。






 『茨で覆われたお城には美しいお姫様が眠っている』


 いつしか流れたその噂を頼りに、何人もの人達がお城に訪れましたが、お城の茨に触れた瞬間【茨式自動迎撃(ローズオートデリート)】を始め【茨式自動光線(ローズオートビーム)】【茨式自動吸収(ローズオートドレイン)】【茨式自動兵器(ローズオートミサイル)】等が作動し、みな茨の養分と変わってしまいます。





 それから100年もの時間が過ぎました。

 そんなある日、とある国の王子様が眠っているお姫様を訪ねてきました。

 王子様が城の門に手をかけた時、【茨式自動迎撃(ローズオートデリート)】が作動し周囲の茨は一斉に王子様を襲う!

 一撃一撃が城壁に大穴を空ける程の威力を持ち、弓矢以上の速度を誇るその攻撃。王子様は四方八方から迫るそれらをしなやかな身のこなしで軽やかに全て躱す。

 更にその内の一本に乗ると、王子様は駆けた。茨を伝って城の奥へ目指すために。

 続いて繰り出されるは【茨式自動煉獄(ローズオートファイア)】。

 茨の先から放たれる複数の熱線。それらもまた王子様は回避するためその場を飛びのこうとする。

 が、王子様は直前でその回避行動を止めた。

 熱線が一斉に王子様に直撃する。

 灼熱の炎の中心で王子様は熱に対する対抗魔法を発動していた。あらゆる熱を無効化する究極の防御魔法の一つ。

 しかし、その魔法の対象は王子様自身ではない。対象は王子様の足元。つまりは今現在乗っている一つの茨に、である。

 結果、王子様は肉体の力だけで熱線を耐えきり、足元の茨は王子様の対抗魔法により焦げ目一つ付いていない。

 あらゆる侵入者を淡々粛々と排除してきたお城の茨であったが、王子様のその行動に疑念を感じざるを得ない。


 突如、王子様から十メートルほど離れた空中に複数の細い茨が集まりだした。

 それらはそのまま自動で紡がれていき、人の顔のようなものに姿を変えた。

 その中の口のような部分が大きく歪むと同時に、茨が擦れ合う音が人の声のように響きわたる。

 そう、その音はこのような声に聞こえた。


『ナニヲシテイル』


 王子様に対話を持ちかけてきた茨。

 王子様もその茨の顔を真っすぐ見つめ、キッパリと喋った。


「貴方は姫の能力だろう? そしてその役割は姫を外敵から守る事。ならば私は貴方の敵ではない。私は、姫を眠りの呪いから救いに来た者だ」


 その言葉に、茨の顔はしばし考え込む。

 そして一本の真っ白な茨を王子様の眼前に突き付け、再び口の部分を歪ませながら音を発した。


『コノ茨ハ【茨式審判(ローズジャッジ)】。コノ茨ヲ受ケタ者は数十秒以内ニ毒デ死ヌ。タダシ刺シテカラ幾ツカノ質問ニ真実デ答エレバ、解毒ノ薬ヲ流ソウ』


 茨の提案に、王子様はニコリと笑うと両手を広げた。


「ああ、わかりやすくていいね。やってくれ」


 その瞬間、王子様の胸に真っ白な茨が突き刺さった。

 茨の顔は更に音を発する。


『主ヲドウヤッテ救ウツモリダ』


「私の唇と唾液にはあらゆる呪いも解呪する究極の力が秘められている。魔女一人の呪いを解くことなど、造作でもない」


『主ヲ救ウ動機ハ』


「私が一人の男であるが故」


『私ガ約束ヲ破リ、オ前ヲコノママ殺スノカモ知レンゾ』


「ならば私に、見る目がなかったというだけの事だな」


 真っ白な茨を通して王子の中から伝わる体温、心拍数、声の振動。

 それらを通じて、王子は決して嘘をいっていない事を茨は知る。解毒の薬が王子様の体内に入った。


 真っ白な茨が王子様の胸から抜けると、【茨式治癒(ローズヒール)】により王子様の胸の傷口も塞がる。

 それと同時に茨の顔はほどけてゆき、目の前の空間には何もなくなった。

 お城を覆っていた何重もの茨も王子様が進むと自然に道を開けていく。


 王子様は眠っているお姫様のそばまでたどり着くと、そっと頬にキスをしました。

 すると100年間閉じたままだった、お姫様のクリクリとした可愛らしい目が開かれたのです。


「……ここは? 貴方はだれ?」


「おはようございます姫、私は隣国の王子。貴女を迎えに参りました」


 王子様は爽やかに微笑みかけると、優しく手をとりながらお姫様を抱き起こします。


 お姫様が目を覚ました事により、【茨式自動道連れ(ローズオートリンク)】の効果が切れ国の人々は皆目を覚ましていきます。

 更に【茨式自動防御(ローズオートガード)】も解け、お城の茨はゆっくりと溶けるように姿を消しました。

 

 王様は眠りから覚ましてくれたことを大層喜び、王子様とお姫様は結婚して末永く幸せに暮らしましたとさ。



 めでたしめでたし

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