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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・昔話
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チート・ザ・金のオノ銀のオノ

 むかしむかしある所に、木こりの男が住んでいました。

 男はいつものように森に木を伐りに出かけた時、大事なオノを誤って泉に落としてしまいます。

 男が悲しくてシクシク泣いていると、なんと泉の中から美しい女神さまが出てきたではありませんか。

 女神さまは金のオノを取り出して、男に向かってこう言います。


「お前が落としたのはこの金のオノか?」


「いいえ、違います」


 次に女神さまは銀のオノを取り出してこう言います。


「ではこの銀のオノか?」


「いいえ、私が落としたのは普通のオノです」


 男がそう言うと、女神さまはニッコリとほほ笑みました。


「そうか、ならば正直者のお前にはこれらのオノを全て与えよう」


 男がオノを受け取ると、女神さまは更に続けてこう言います。


「さて、全てのオノが揃ったようだな。……木こりよ、私はな、数多のオノを携えた真の正直者(ゆうしゃ)と全力で戦う事が夢であった。さあ構えよ! 幾多の木々を切り倒してきたその力、この私に通じるか試してみるが良いッ!」


「そんな女神様! 貴方は私のオノを拾って下さったばかりか、金と銀のオノまでくださった恩神(おんじん)です! そんな貴方に矛を向ける事なんて私には出来ない!」


「甘い……お前は本当に正直者(あまい)な木こりよ……だが、お前が戦う気が無いと言うのならば、私がその気にさせてやろう!」


 女神さまが右手をかざした。

 すると今しがた男の元に戻ったばかりのいつもの小野が宙に浮き、女神さまの右手に吸い寄せられるかのように移動する。


「きゃあああああああああッ!!」


「お、小野!!」


 男は動揺する。

 そんな男に、女神さまは厳しい表情で声を発した。


「さあ小野を助けたければこの私を倒して見せよ正直者(ゆうしゃ)よッ!」


 更に女神さまは左手を開き、男に向かって火球を発射する。

 紅蓮の業火は呆然とする男を呑みこむ────


「何をボサッとしているのよッ! 死にたいのッ!?」


 火球が男に当たる瞬間、金の小野が男の前に躍り出て結界を貼った。


「そうよ、あの子を助ける事が出来るのは貴方だけなのよ? さあ立って! 私達と一緒に女神さまを倒すの!」


 隣の銀の小野も一歩前に出て男を激励した。


「……すまない、そうだよな! 女神さま! 今から俺はアンタを倒すぜ!」


 男の言葉に女神さまはニッと笑った。

 続けて放たれる女神さまの火球連撃。

 それも同じように金の小野が防ぐ。更に銀の小野が素早く女神さまの右手に飛び掛り、いつもの小野にかけられている拘束魔法を解除した。

 いつもの小野は重力に従い真下に落下。しかし、その落下地点には既に男が駆けつけていた。

 上から落ちてくる小野を両手で見事に抱きとめる。


「小野、待たせてすまない」


「ううん、信じてた」


 まるでその空間だけは時間が止まったかのように見つめ合う二人。

 それは一瞬のような数時間のような不思議な時間。

 やがて二人は手を取り合い、しっかりとした目つきで、しかし穏やかな目線で女神さまを見て、その眼前までふわりと跳んだ。


「女神さま、本当にありがとうございました」


 男は手に持った小野を振るった。

 その一撃は、女神さまの身体を大きく斬り裂く。

 深い傷を受けながら、女神さまは優しく微笑んだ。


「見事だ正直者(ゆうしゃ)よ……よくぞ私を打ち破った……お前の覚悟、しかと受け止めた……さあ、家に帰るが良い……私も、ようやく眠る事が出来……る……」


 女神さまの身体は泉に沈んだ。

 金の小野と銀の小野が後ろで泣いている。

 俺と小野は、泉に向かって静かに手を合わせた。






 男は家に帰ると、その出来事を友人に話しました。

 友人は大層羨ましがって、自分も小野を持ってその泉に向かいます。

 そして小野をわざと泉に落とすと、その場でシクシクと嘘泣きを始めました。


「ふわ~ぁ良く寝た。ええっと、お前が落としたのはこの金の小野か?」


「はいそうです! その金の小野を泉に落としてしまったのです!」


「この欲張りな嘘つき者がッ!」


 女神さまは寝起きで機嫌が悪いのも合わさって、そのまま泉の中へ戻って行きました。

 嘘つきな友人は自分の小野も拾ってもらえず泉の前でワンワン泣いてしまいました。


 嘘つきで欲張りなヘイトが溜まるキャラよりも、謙虚で好感度が持てる主人公キャラの方が最強ハーレム展開に持っていきやすいというお話ですね。



 めでたしめでたし



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