チート・ザ・花咲かじいさん
むかしむかしある所に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
二人には子供はいませんでしたが、代わりにシロという犬を飼ってとても可愛がっていました。
ある日畑仕事をしているとシロが突然吠えました。
「ここ掘れワンワン、ここ掘れワンワン」
おじいさんはシロがいう通り畑を掘ってみると、なんと中から大判小判がザックザク!
それを聞いた隣の欲張りじいさんが、おじいさんが留守の間に勝手にシロを自分の畑に連れ去ってしまいます。
「さあシロよ、どこを掘れば宝がある?」
シロはそっぽを向きながらある地点を指さします。
欲張り爺さんは喜んでその場所を掘ると、なんと中には古の邪神の封印の間が広がっていた。
そしてその封印は、欲張りじいさんが無暗にクワを振り回した事によってその場で解かれる。
太古の時代、世界を七日で火の海に変えたという邪神。欲張りじいさんは指にケガをしながらも邪神を完全消滅させます。
「ワシを謀ったな、この役立たずの馬鹿犬め!」
怒った欲張りじいさんは、邪神を葬り去った必殺のクワをシロに向かって降り下ろす!
その一撃を身体を捻る事で回避するシロ。
降り下ろしたクワの一撃は地面を真っ二つに斬り裂き、その跡は後方数キロまで及んだ。
シロはその大振りの隙を見逃さず、すかさず前に踏み込み欲張りじいさんに強烈な拳をお見舞いした!
「……今、なにかしたか?」
が、その攻撃は欲張りじいさんに僅かなダメージを与える事も出来なかった。
シロは己の非力さを胸中で嘆く。
だが、今はそんな暇もない。すぐに気持ちを切り替えると欲張りじいさんから距離を取り、お宝や邪神を発見したその嗅覚及び第六感を持って欲張りじいさんの弱点を探す。
(────無い! 欲張りじいさんには弱点と呼べるものが一つもッ!)
「わかったか? 理解したか? その足りない頭で処理できたか? 貴様とワシとの実力の差が」
「く、くそっ!」
刀を取りだし尚も挑むシロ。
しかし、この時にはシロも理解し、同時に覚悟も決まっていた。
────自分は、ここで死ぬ事を────
シロを殺されたおじいさんとおばあさんは、泣く泣くシロを畑に埋めてやり、棒を立ててお墓をつくりました。
次の朝、おじいさんとおばあさんがお墓詣りに畑に行ってみると、シロのお墓の棒が大木になっているではありませんか。
おじいさんとおばあさんはその木で臼をつくって、お餅をつきました。すると臼の中から大判小判がザックザク!
それを聞いた隣の欲張りじいさんが臼を無理矢理借りると、自分の家でも餅をつき始めました。
しかし出てくるのは世界を滅ぼす古の邪神ばかりでお宝は出てきません。
「忌々しい臼めが!」
邪神との連戦でHPが2割ほど減った欲張りじいさんは、臼を叩き割ろうと斧を振りかぶりました。
臼はその攻撃を事前に察知し後ろに跳ぶ。
しかし、それは悪手だった。
クワの一振りで地面を数キロ斬り裂く欲張りじいさんの一撃。
その威力は得物が斧に変わった所で変わるものではなく、臼は身体を真っ二つに斬り裂かれる事となった。
「【雷神光撃波】」
欲張りじいさんは真っ二つになった臼に向かって手を開き、そこから生み出した雷撃で臼を焼いて灰にしてしまいました。
大切な臼を焼かれたおじいさんは、せめて灰だけでも、とザルに灰を入れ持ち帰ろうとしました。
その時、風で灰が飛ばされて木にかかります。
するとどうでしょう、灰の中から伝説の不死鳥フェニックスが生まれたではありませんか。
生命を司るフェニックスが一度翼をはためかせれば、その光を浴びた枯れ木には次々と満開の花が咲いていきます。
おじいさんは嬉しくなって、
「枯れ木に花を咲かせましょうー!」
と叫びながら次々と灰を撒いて回りました。
灰を一振り撒けば現れるフェニックス。村はあっという間に不死鳥だらけになり、ついでに草木も作物も生い茂ります。
丁度そこへ、お城のお殿様が通りかかりました。
「ほう、今夜は焼き鳥じゃな」
お殿様は大層喜んでおじいさんに大判小判をザックザク与えました。
それを見ていた欲張りじいさんは、おじいさんから灰の入ったザルをひったくりお殿様に言います。
「殿様、この灰はワシの物ですワシもやりますから褒美を下さい」
欲張りじいさんがお殿様の前で灰を一斉に巻きました。
すると灰から生まれた世界を滅ぼす邪神軍の【暗黒終焉滅炎】がお殿様の着物を汚し、欲張りじいさんはお殿様と決闘という形で直々に処刑されてしましたとさ。
めでたしめでたし