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チート・ザ・昔話  作者: こおり ほのお
チート・ザ・昔話
19/95

番外編 チート・ザ・料理バトル

『さぁ始まりました! 第一回異世界結合料理バトル! 進行、実況は(わたくし)グレーテルが』


「解説、審査はこちらヘンゼルが行います」


『ヘンゼルさん! 通常料理対決であれば、複数の審査員がいるモノだと思うのですが何故今回はお一人なのでしょうか!?』


「大人の都合です」


『ありがとうございました! それでは選手の皆さんの紹介に移ります! まず赤コーナー! 立派な刀を携え、可愛らしい三人の少女を料理フォローに連れていた今回一番の色男! 桃太郎選手ッ!!』


「やれやれ、俺が料理バトルに参加する羽目になるとはな、目立ちたくはないんだがなぁ、やれやれ」


『青コーナー! 巨大な(まさかり)を担ぎ上げ、まさに圧巻! 十数人の板前及び料理長をフォローに連れてきたのは金太郎選手ッ!!』


「チカラは料理にも通じるところを見せてあげるよ」


『緑コーナー! 釣り竿を右手に網を左手に持つ姿は漁師そのもの! 唯一フォローを連れずに単身で挑むは浦島太郎選手ッ!!』


「……料理もいいが、ココは強そうなヤツが何人もいるな」


『黄色コーナー! 本日の紅一点! 素敵なドレスで身を包んだ麗しき美女! シンデレラ選手ッ!! フォローには本人とは対照的に、黒いローブで全身を覆った従者を引き連れています! 顔も見えない方ですが、背筋を伸ばし後ろに手を組んでいる姿からは出来る男オーラが漂っています!』


「皆さまの胸を借りるつもりで臨ませていただきます、よろしくお願いいたします」


『さあッ! 選手全員の紹介が終わった所で本日のお題はこちら! ドン! 《海鮮料理》ッ!! ヘンゼルさん! このお題をどう見ますか!?』


「海の料理という事で、漁師である浦島太郎さんがやや有利なお題ですね。しかし他の皆さまも自然が多い地域出身とのこと、川魚や地域限定の食材等何が出てくるかわかりません、楽しみですね」


『ありがとうございます! それでは選手の皆さま調理を開始して下さいッ!!


 ああっとすぐに動いたのはシンデレラ選手! 食材を流れる様な速度で捌き、あるいは鍋に火をかけ、と思ったら水に浸し……速いッ! とにかく動きが(はや)すぎて実況が追いつかないッ!! この圧倒的スピードに着いていっている黒い従者も凄い! きっと二人には深い信頼関係があるのでしょうッ!!


 その横では金太郎選手の周りの板前達が完全な役割分担をしながら作業を進めていっていますッ! 流石プロの技! こちらも速くて丁寧だッ!! しかし金太郎選手は腕を組んでみているだけ! これは彼が選手だと言えるのだろうかッ!?


 浦島太郎選手は網から何やら馬鹿デカい軟体生物を取り出しているぞッ! あれが食材なのか!? 見た目はグロテスクですがどの料理になるのでしょうかッ!! 目が離せませんッ!


 桃太郎選手は三人の少女たちと何やらイチャつきながら「やれやれ」とか言っていますッ!! 料理はしないのでしょうか!? うーん実に殴りたいッ!!』


「出来たわ、どうぞお召し上がりください審査員様」


『最初に料理が完成したのはやはり神速のシンデレラ選手ッ! 食欲がそそる香りがこちら実況席まで届いておりますッ! 速さだけではなくこれは味にも期待できそうだッ!! ヘンゼルさん! いかがでしょうかッ!?』


「これは……旨いッ! 素材はどこにでもいる様な小魚が多いが、調理次第でこれほどまでの味を引き出すことが出来るものなのかッ!! 更にバリエーションも非常に豊富!! 刺身に揚げ物、タタキに焼き魚、混ぜご飯に踊り食いまで!! この短時間で味、種類をこれほどまでの完成度で造り、更にそれらが一つ一つ他の料理を引き立たせているッ!!」


『おおっと! いきなりのベタ褒めだぁッ!! これはいきなり勝負が決まってしまうかぁ!? シンデレラ選手ッ! 一体どうやってこの料理技術を身に着けたのでしょうかッ!?』


「私のお母さまが家事に厳しい方でして、でもそのおかげで料理には少しだけ自信がつきました」


『なんと一般家庭で普段の生活からこのクオリティを造り続けているというのかッ!! おおっと審査員から得点の札が上がりました!! その数字は……《9点》ッ!! いきなりの高得点だああぁッ!!』


「料理は完璧に近い、しかし素材だけが少し物足りながった。……正直10点と迷った。素晴らしい」


『速さ、質、どちらも申し分なしの高評価ッ! シンデレラ選手が田舎娘でなかったのならばいきなり満点だった事でしょう!! 家庭の都合で安い食材しか使う事が出来なかったという点も健気ポイントが高そうだッ!!』


「そんじゃあ次は俺だ、食ってくれ」


『続いて料理を完成させてきたのは浦島太郎選手ッ! 見た目は先ほどのグロテスクな軟体生物をぶつ切りにしただけのようにみえますがお味のほうはどうでしょうかヘンゼルさん!!』


「う、うーん、醤油をつければ食えない事はないけれど……正直、美味しくはないかな……」


『ああっと! こちら残念ながら低評価! 掲げられた札も《1点》!! 浦島太郎選手! これはちなみにどんな料理なのでしょうか!?』


「いや、見たまんまぶつ切りにしただけなんだが? ……おかしいな、コイツは中々強かったから旨いはずなんだが」


『彼は料理人ではなかったようですッ!! ていうか「強ければ旨い」ってなんだよッ!! どんな生活と味覚してんだよッ!! 料理対決を一体なんだと思っているんだよッ!!』


「やれやれ、ではコイツを食べてみて貰えるかな?」


『ここでやってきたのは桃太郎選手ッ! 一切料理をしていなかった彼が持ってきたものは……黍団子だッ! 美少女とイチャつきながら時間を潰しておいて、腰袋に入れっぱなしだった黍団子をそのまま出しやがったッ!! ヘンゼルさん! もはや海鮮料理でない気がしますがいかがでしょうか?』


「い、いや……この黍団子からは確かに魚介の香りがする……こ、これは! なんだ!? あらゆる魚介の旨味を凝縮させたような味はッ?!?! こんな物は食べた事ないぞッ!!」


『な、なにィーーーーー!! まさかの高評価だーーーーーーーッ!! しかもしっかり魚介の味との事!! 桃太郎選手ッ! 一体どういう事なのでしょうか!?』


「やれやれ何を驚いているんだ? 俺の黍団子を食べれば、食した者が求める理想以上の味になる事なんて常識だろう?」


『何を言っているのか全くわからないッ!! なんだこの男は!! 料理はしねえし公然の場でハーレムしてやがるしその上言葉の意味がわからず何故か上から目線で殴りたくなる呆れ顔ッ!! しかし審査員が掲げた札は驚愕の《10点》ッ!! ここでシンデレラ選手の記録を上回ったーーーーーーーッ!!』


「じゃあ、最後は僕の料理を食べて貰おうか」


『最後に料理を持ってきたのは金太郎選手ッ! 彼は彼で全く調理をしていなかったが、取り巻きが造った料理は確かに美味しそう!! ヘンゼルさん! いかがでしょうか!?』


「む……これもまた旨い。立派な魚に味付けも一流、流石はプロの料理人集団といった所……しかし、シンデレラ選手や桃太郎選手と比べるとどうしてもインパクトが……ん?」


 ヘンゼルが箸で魚の中の身を取ろうとした時、箸の先端に固い感触が当たる。

 魚の奥で光り輝く物体。それは一欠片で数億の価値があるという幻の鉱物『オリハルコン』


 ヘンゼルはそのオリハルコンを箸から手に移し、そのまま自然に懐にいれながら、無言で札を掲げた。


『なんとッ! 《100点》ッ!! 金太郎選手の料理はまさかの《100点》だーーーーーーッ!! 文句なしの逆転優勝!! 第一回異世界結合料理バトルを制したのは金太郎選手ッ!! おめでとうッ!! 皆さん多大な拍手をおねがいしますーーーーーーーッ!!!!』



 めでたしめでたし

 勢いでやった。後悔も反省も特にしていない。

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