↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/57

蘇る二つ名 ―― プルム④

 一日置いて大分冷静になった。

 ……気がする。


 しかし、PKは重罪か。

 困ったな。

 私は重罪人な訳か。

 てことはお尋ね者だったりする訳かな?

 そしたら、追手が続々と来たり……。

 それはそれで楽しそう。


 そんな事を考えながらログイン。

 一昨日ログアウトしたエルナトの宿屋。

 ベッド一つだけの質素な部屋が私を迎える。


 窓から外を見る。

 月の無い、暗い空。

 その分、星の輝きが一層綺麗。


 さって、ギルドに行きますか。

 アルデバランとこの町を往復して次の島への船代を稼ごう。


 ◆


 依頼を請け、ギルドから出る。

 そして、町の外へ。


 ……付けられている。

 勘違いでは無さそう。

 私のファン……て訳は無い。残念ながら。

 という事は、仕返し、だろうな。


 尾行は多分三人。

 その人数で何かするとは考えにくいから……この先何処かで網でも貼るのだろう。


「さ! アルデバランに向けてレッツゴー!!」


 一人わざとらしく言って、そして町から出る。

 来い来い。

 かかって来い!

 ついでにあの巨乳も連れて来い!!

 微塵切りにしてやる!!


 ◆


 街道を、アルデバランに向けトコトコ歩く。

 星空は相変わらず綺麗。


 あ……。

 流れ星。

 願い事をする間もなく消えちゃったけど。


 ……願い事、か。

 いつの間にか足が止まっていた。


 今更願っても、叶うはずなど無く。

 でも、私は一人、再び殺しの輪廻に戻るのだ。

 剣を抜き放つ。

 そして、見え隠れする人影を見やる。

 百かそこらかな。

 一人七百って言われてうんざりした時に比べれば何でも無い。


 相手の実力はわからないけど、最悪あの巨乳だけはきっちり殺そう。


 さあ、かかって来い!


 私が脱力すると同時に周囲から怒号が上がった。


 一気に視界から色が無くなる。

 微かな星の光の中を蠢く影。

 飛び込んでくる先頭の一人を剣の切っ先で喉笛を掻き切る。

 そこから時計回りに捌いていく。

 考えるより先に身体が反応する。

 二人目が崩れ落ちるそのずっと奥に巨乳の顔を見つける。


 そこか……。


 待ってろ!! 逃げるなよ!!!


 ◆


 みんなあっさり逃げていくんだよね……。

 一撃で喉笛を掻き切るか、首を落とすかしなければ離脱で戦場から逃亡していく。

 これだけ数を集めておきながら。

 か弱い女の子一人を前にして、いとも簡単に背を見せ逃げる。


 情けない。

 と言うか、つまらない。

 それでも、何人か殺して、そして、巨乳の首をもう一度落とすことが出来たのでそれなりに満足だ。

 私は。

 相手はそうではないだろうが。


 身の丈程あろう盾を構えた、おそらくはこの集団のボスが最後に私の前に立ちはだかる。

 既に取り巻きは一人残らず死んだか、逃げた。


「死ぬ前に名を聞いておきたい」


 盾の男がそんな事を言う。


 名前か。


 なんて名乗ろう。考えてなかったな。いや、名乗るなら一つか。


「白刃」

「……蘇ったのか」


 あら。

 通じちゃった。

 私の事知ってるのか。

 でもね、同窓会するつもりはないの。


「復活祝いに、その命、貰ってくわ」


 そう言って男の横へ回り込む。

 盾を振ってそれの合わせようとする男。

 軽くフェイントを入れた後、反対側へ飛ぶ。

 それに追いすがるように動く盾。

 一歩下がってそれを待ち受ける。

 そして跳躍。

 正面から盾に飛び掛かり、左手で盾の上端の掴み全身を引き上げる。

 その勢いで、フルフェイスの兜の隙間へ剣先を差し込む。


 男が膝を折る。

 そして、それが消えていくのを一瞥し、仮想ウインドウで溜まった分のステータス操作。

 全部敏捷値へ。


 こいつで終わりではない。


 わざわざ見張り台を作ってこちらを観察している奴らが居る。

 黒幕か、助っ人か。


 どちらにしろ、まだ終わりではない。

 人影は四人。


 早く、来な。

 そいつらに視線を送る。


 一拍置いて、その高台から人が飛び降り、そして、私に向かい来る。


 次の相手は……二人の剣士だろうか。


「俺の名は白刃のトーヤ! 正義のPKKだ!!」


 私の前に来た一人が、そう名乗りを上げた。

 白刃。

 そう。

 君も。

 しかも、正義、と来たか。

 多分、私のことなんか知らないんだろうな。

 いいね。何か、真っ直ぐで。


「僕はクロム! 勇者!!」


 もう一人も名乗りを上げる。

 その視線が、明らかに一瞬私の胸に向き、直後、軽く鼻で笑うような仕草と表情に不快感を覚える。


「名を名乗れ!」


 正義の彼が、そう言い放つ。

 ここで、私も白刃だ、とか言ったらどんな顔をするだろうか。

 ここは、余計な事は言うまい。

 命のやり取りだけあれば十分だろう?


 じゃ、まずは、勇者君からかな。

 死んで来な。


 間合いを一気に詰め、剣を上段から振り下ろす。

 それを、手にした盾で受け止めさせる。

 注意が上に向いた隙に、右足で股間を蹴り上げる。

 そのまま足を引くと同時に身体を捻って半回転。剣を引きながら脇腹を薙ぐ。

 背骨まで切る。

 そのつもりの一撃だったのだけれど、その半分程度までしか刃は届かず。

 固いね。この子。


 しかし、膝を折る勇者くん。


「離脱(リーブ)」


 私を見上げるように一睨みして、そして、逃げた。

 勇者って言うから最後まで向かってくると思ったのに……。


 気を取り直して、正義の彼に飛び掛かる。


 一撃、二撃……。

 流石に今まで観察してきたのか、私の攻撃をその手にした剣で捌いて見せる白刃君。

 というか、獲物は剣なの?

 刀じゃないの?

 え。

 改めて観察する、この彼の何処に白刃の要素が有るんだろう。

 二つ名を名乗るなら、ちゃんとそれを意識した格好から入らないとね。

 フェイントを混ぜた一撃で、剣を持つ右手を切り飛ばす。


 咄嗟に後ろに飛び退き、仲間達に視線を送る白刃君。

 ほら、お仲間がピンチだよ。

 救けに入ってあげな。


 視線の先には二人の女の子。


 しかし、どうやら助けに入る気は無いらしい。

 そこで戦意を喪失させる白刃君。


 ……弱っちいな。打たれ弱い!

 もうちょっと、精進しな。

 私の戦いを、そこで目に焼き付けろ。

 そして、最後に殺してあげる。


 さ、次はどっちかな。

 当然、あの女の子たちも参戦するよね。

 チアガールって雰囲気では無いもの。


 槍を振り回していた子が、ゆっくりと近づいてくる。

 一番強そうなあっちの子はやっぱり一番最後か。

 じゃ、まずはこの槍使いだ。


「白刃、だよな?」


 その槍使いが確認するように言ってくる。

 私の戦いぶりを見て、そこに思い至ったのか?

 という事は、あのゲーム内での知り合い……?


「槍使い……? でも、女の子なんて居たかな?」


 記憶に無い。


「思い出して見ろよ」


 槍を構えながら偉そう言う槍使い。


「槍使いってだけで不快だ」


 その構え、その口調。

 あの男にそっくり。


 突っ込みながら剣を伸ばす。

 避けるその先へ右足で蹴り。

 躱され、背後に回られる。

 自分の脇を通し、剣先を背後に向け突き出す。

 が、弾かれた……その勢いそのままに反転。

 流れのままに剣で殴り掛かる。

 身を低くして避けた、その先を左で蹴り上げる。

 しかし、その蹴りも防がれ、そこで初めて相手の反撃。

 伸びて来る槍を身体を捻り避ける。


 ……おかしい。

 動きを合わせられている。


 一瞬、頭に疑問が浮かぶ。


 その隙に相手が間合いを詰めてくる。

 上段から振り下ろされる槍。

 半歩、身をずらし避ける。

 追いすがるような突きを剣で捌く。

 そのまま槍を反転させ、石突を横薙ぎに払ってくる。

 一歩下がり、背を向けた所に剣を……。

 いや、罠だ。


 更に一歩下がって間合いを開く。

 相手も同じく槍を引きながら下がる。


 そこに至り、改めて相手を確認する。

 凹凸の無い体つきの女の子。

 なんとなく何処かで見たこと有るような……。

 戦いから意識が外れた瞬間に、私の視界に色が戻る。


 その女の子の髪は赤く……そう、それは私……シルエラの髪の色……。

 じゃ、あの体付き……私の……?

 シルエラでは無くって……現実の私じゃ無い??

 え。

 そんなの知ってるのって……一人しか居ない訳で。


 ……それならばあの槍捌き……説明が付く。


「まさか……」


 手の剣先が下がる。

 そんな事が有るの?


「ファイナルランサーか!?」


 思わず叫び声が出ていた。

 ハルト……ハルト!?


 しかし、そう呼びかけられた女の子は露骨に眉を顰める。


 ……あれ?


「違う……の……か?」


 只の……偶然?


「……いや」


 目を反らしながら彼女が言う。


「……ん?」


 どっち……?


「違わない……」


 違わない……。

 違わない!

 ハルトだ!


「が……その名は捨てた!!」

「そっか……」


 ハルトか。

 何で女の子?


「色々と聞きたいことはあるけれど……」


 私は剣を構え直す。


「まずは、死ね!」


 話はそれからだ!

 話、する気あるよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。