更なる絶望の反省会 ―― ミニスカメイド
翌日。
私とマーカスはヴィルゴ島でミリッタの表の顔。
その情報を集めることにした。
他に、手繰る糸が無かった。
何か取っ掛かりが欲しかった。
スピカの街。
華やかな街並み。
ここは、比較的女性プレイヤーが多い。
女性受けする飲食店が多いからだろう。
男性プレイヤーはアウバに流れているのも一因かもしれないけれど。
そんな街の一角に、少し人だかりが出来ている。
露天商か、ストリートパフォーマンスでもしているのだろうか。
特に興味は無かった。
だから、素通りするつもりだった。
チラリと横目で見て……私は棒立ちになる。
「どうした?」
急に立ち止まった私にマーカスが怪訝そうな声を上げる。
私は目から入る情報を処理するだけで精一杯だった。
壁に貼られた紙。
そこに『反省中』と書かれている。
その下で正座をして、俯き、下を向く女の子……ハル……シュ……。
その……格好は……メイド姿……。ミニスカートの……。
そうか。
女の子に目覚めたのか。
そう言えば、綺麗な男の子を連れてるんだったね?
そうか。
目眩がした。
「……あれは……何、してんだ?」
マーカスも気付いたか。
足が勝手にそっちに向いていた。
「お、おい」
正座して、下を向いているそいつの前に立つ。
何してるの?
ねえ。
何してるの?
何してるの?何してるの?何してるの?
私に気付き、顔を上げる。
そこには……借りてきた猫の様に縮こまる、情けない顔があった。
何してるの?
何してるの?
何してるの?
ねえ!
何してるのよ!!
蹴り上げた右足の爪先が煉瓦の壁にめり込んでいた。
「おい、止めろ」
すかさずマーカスが止めに入る。
いつの間にか、ぶら下げた左手にメイスを握り込んでいた。
何もかも……変わった。
変わってしまった。
その事に、急に悲しくなって涙が出そうになった。
私は、足早にその場を離れる。
今、やるべきことをやろう。
マーカスが付いてこない。
振り返る。
アイツと目が合う。
悲しい。
再び歩く。
「マーカス! 行くぞ」
いろんな感情を吹き飛ばすようにそう叫んだ。




