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レベル上げと言う名の暴力 ―― ノゾミ③

「ま、ここが一番手っ取り早いの」


 ノゾミが私を連れて来たのは牡牛座、アルデバランから大分離れた森。


「ああ、勇者様。今日も私達を捉えようとする輩が引きを切りません。

 どうか、お助けを」


 森の中からそんな声が響く。

 姿は見えない。


<ポーン>

<クエスト【プレアデスの七人・用心棒】を開始しますか?>

<YES / NO>


 システム音と共に私の前にウインドウが表示される。

 ノゾミへ視線を向けると、彼女の前にも同じウインドウ。

 そして、私を見て小さく頷く。

 頷き返し、イエスに触れる。


 一瞬、視界がぶれる。


「この森の中を逃げる妖精と追いかける男。

 私達は男を倒して妖精を助ける。

 簡単でしよ?」


 いつの間にが両手に武器を構えたノゾミが簡単に説明。


「男を倒せばいいのね?」


 私もメイスを取り出す。

 ノゾミの獲物はトンファー。

 格闘か。

 なんか、意外。

 いや、あの長い足は良い蹴りを繰り出しそう。


「そう。因みに武器も戦い方も、強さもバラバラ」

「ま、倒せばいいのよね」

「そ」


 それなら簡単だ。


 さっそく視界の端にヒラヒラとしたドレスを身に纏った絵画から飛び出して来た様な女性と、それを追いかける半裸の男。

 毛皮の様な腰巻をして、その手に剣を持っている。


 あれを倒せばいいのか。

 人なら急所はわかる。


「よし! 死ね!」


 メイスを振りかぶり、その下品な男へ向かっていく。

 ついでに、逃げる妖精? あいつも殺して良いかな。

 そんな胸を下品に強調する様な服着てるからいけないのよ。

 何で走るのにそんなに乳が揺れるの?

 何が入ってるの?


 ◆


 ノゾミとヘクトは精霊(ニュンペー)を追いかける半裸の男を次々と撃退し、ヘクトは順調にレベルを上げて行く。

 そして、この後、この森でかつて無い惨劇が起こるのである。


 ◆


「たーのしー」


 喜々として戦槌を振るうヘクト。

 本人には嬲るつもりなど毛頭ないのであるが、相変わらず敏捷値極振りの非力さ故、初撃でこめかみ、または、顎を打ち抜き相手を気絶させた後は、HPを全損させるまでひたすらに殴るしか出来ないのである。

 その様子を顔を引き攣らせながら眺めるノゾミ。

 そして、助けられた筈の精霊の顔にも怯えの色が見える。


 そうやって、ヘクトが戦いを堪能している中、その森へと足をすすめる集団があった。


 タウラス自由騎士団。

 本日付でリオと言う名のプレイヤーが二代目の団長を襲名し新たなる組織へと生まれ変わった。

 初代団長であるマーカスは除隊となり、副団長の立場にあったリオが繰り上がりで団長へ。

 そして、副団長にクロムと言うプレイヤーが就任した。


 そのクロムが、「騎士団の名に恥じる」として前団長が禁止していたイベントへの参加を決定し騎士団のメンバーを大勢引き連れているのである。


 イベント名【プレアデスの七人・狩人】。

 森の中を逃げ回る七人の精霊を捕まえる、ただそれだけのイベントである。

 鳩に化け逃走する精霊や、身を隠す深い霧など様々な障害を乗り越え七人を捕まえることが出来れば彼女達が踊る宴へと招かれると言うもの。

 しかし、精霊が劣情を催す様な薄着であることや、その薄着から見え隠れする肉体が官能的なこと、そして、成功したと公言する者が現れないことなどから、やがて話に尾鰭が付き、成功すれば七人と乱れ交わる宴が行われるなどと言う噂が流れているのである。


 目と鼻の先にそんなイベントがあるのに禁止されていたタウラス自由騎士団所属のプレイヤー達の 人心を掌握する為に、実力者ではあるが、新参者であるクロム副団長はこのイベントを利用するのである。

 本心では、単に巨乳好きの彼が参加したかっただけなのであるが。


 この【プレアデスの七人】と呼ばれる二つのイベントは、狩人もそれを妨害する森のモンスターも共にプレイヤーが混じっている。

 しかし、その姿は、狩人側であれば半裸の男に、防衛側であれば森のモンスターに変化するため互いにプレイヤーだと気付くことは無い。

 その事実を知っているのは、この場ではノゾミだけである。


 こうして、五十を超える半裸の男たちが欲望を剥き出しにして森の中へなだれ込んで行く。


 ◆


 三人目を葬って、そして異変に気付く。


 足音が……多い。


「ノゾミ」


 仲間の名を呼び、警戒を促す。

 そのノゾミは、身を軽々と跳躍させ木に登って行く。

 そして、枝の上から周囲を見渡して一言。


「団体さんのお出ましだ」

「数はー?」


 私の言葉に、ノゾミから返事は無かった。


 ◆


 樹上でノゾミは迫る敵を観察し考える。


 五十人規模のプレイヤー団体。

 偶然居合わせるような数ではない。

 であれば、奴らは何らかの集団。


 考えられるのは、掲示板などで募った集まり。

 それなら、比較的低レベルのプレイヤーが多いはずだ。

 高レベルプレイヤーは、とうの昔に先の島へ進んでいる。


 もう一つは、普段から団体で行動している連中。

 しかし、それには心当たりは一つしか存在しない。

 タウラス自由騎士団。

 彼らがこのイベントへの参加をご法度にしている事は知っていたし、そして、そんな団内に不穏な空気が流れていることも知っていた。


 そして、わずかに統率と連携の見られる敵の動きから後者である、とノゾミは判断した。


「何か……あったか?」


 後で改めてマーカスに接触しよう。

 そう決め、彼女はまずは目の前の問題に専念することにした。


 ◆


「五十くらい。多分、強い」


 木から下りたノゾミが足早に私の所に来てそう言った。

 その深刻さは表情が物語っている。


「そうか。五十か」


 私はメイスを握り直す。

 そして、向かい来る五十とこのメイス、さてどう戦おうかと考える。


「ま、行けるかな」


 隙をみて一人づつぶん殴っていけば良いのよね。

 この森で集団なら魔法の類はそんなに飛んでこないだろうし。


「他に戦い方、あるの?」


 ノゾミが腕組みをしながら尋ねてくる。


「無いよ?」


 何で?


「わかった。私は援護に回る」


 トンファーで?

 一緒に殴るに行くのに援護も何も……。


「換装(コンバージョン)」


 ノゾミが小さく発した言葉を切っ掛けに彼女の全身が、一瞬ブレる。

 そして、両手に銃を持った姿に早変わり。

 服まで変わってる。

 何故かロングコート。

 嫉妬するくらいに似合ってるけど。


「何? それ」

「説明は後でね。来るわよ」


 そう言いながらノゾミは銃口を私の背後に向ける。


 当てないでよね。

 そう祈りながら、木々の向こう、男たちの群れに飛び込んでいく。


 ◆


 やっぱり見立てが甘かったな。

 ノゾミの援護射撃と回復魔法が無ければ負けてたかも。

 相手も回復魔法使うし、連携して動くし、何よりタフだし。

 そんなこんなで、結構時間かかったけれど残りはこいつだけ。


 悔しそうに下唇を噛むその仕草、どっかで見たかな?


 まあ良いや。

 取り敢えず、死ね。


 ◆


 戦利品と言うか、お礼として葡萄酒をもらった。

 大分レベルも上がった。

 気分良くログアウト。


 この後、ノゾミに裏のスキル屋に連れて行ってもらうのだ。

 あの変身みたいなスキルもそこで説明してくれるらしい。


 ◆


「何なの? あの強さ」


 再度ログインした私にノゾミが疑問をぶつけてくる。


「まだまだよ」

「いや、おかしいわよ。レベル幾つ?」

「さっき、20になった」

「でしょ? いや、それでも十分驚きなんだけど。リアルで格闘家か何か?」

「美人の受付嬢」

「……」


 営業スマイルを浮かべた私に押し黙るノゾミ。

 なんで黙るのよ!

 肩を竦め、路地裏の店へと入って行く。


 ◆


「【変装】スキルのサブに、【交換】を付ける。

 そうすると、予め登録してある装備、スキルセットへ瞬時に切り替えることが可能。

 私達は、【換装(コンバージョン)】、そう呼んでいるわ」

「へー」

「これ、スキルセットも全て変更出来るのが良い所ね。

 まぁ、その分一枠スキルを使ってしまうんだけど。

 私はさっきみたいに、近接格闘用と中距離支援用、それと仕事用の三種を登録してる」

「仕事用?」

「そう。それもこの後説明するわ。

 なので、【変装】と【潜行】と【暗視】は買っていおいて。

 手持ちが無ければ立て替える。金利ゼロで。

 他は、まぁお好みで」


 私はスキルのリストを眺めながら考える。


 私の今のスキル構成はこんな感じだ。


[1]【幸運】

[2]【戦槌】

[3]【火魔法】

[4]【剛力】

[5]【鉄壁】

[6]【俊敏】

[7]【時空間魔法】

[8]【離脱】


 これに【変装】を入れる余裕がない。


「時空間魔法あれば、離脱って外しても平気かな?」

「私は付けてるけど。咄嗟に何処に飛べば良いかとか考える必要ないから」


 成程。

 離脱(リーブ)、の一言で終わるのと、転移(テレポート)、どこどこ、で命運を分ける可能性が有るのか。

 後者は、単語が多い上、飛び先も考えねばならない。


 うーん。

 そしたら取り敢えずは要らないかな。

 後々考えよう。

 言われた通り、潜行と変装だけ購入。

 で、それでも足らないんだけど。


「そしたら、スキルはサブに回して開けなよ。

 どれをサブに、とかはプレイスタイル次第だから一概には言えないけど」


 成程。複雑。


 取り敢えず、時空間魔法を外して【潜行】をセットしておこう。

 ノゾミの命令だから。


 そうして、表のスキル屋で【交換】スキルも購入。


 しかし、変装が仕事に必要とか、薄々そんな気はしていたけど、特務機関って結構ヤバイ組織なのかな。


 ◆


「で、何をしてるの?」

「人を探してるのよ」


 いきなり変装の出番らしい。

 しがない町娘の様な格好でNPCに成りすまし、オープンカフェでノゾミとコーヒーブレイク。


「怪しさ全快だ」

「そうね」


 私の嫌味を軽く受け流すノゾミ。


「これも一応、お仕事だから」

「ふーん。何の?」

「スカウト」


 成程。


「ここで座ってて見つかるの?」

「さあ? どうかしら」

「え」

「今日、ダメなら明日もここで待つわ」

「え」

「まだこの島に居るはずだから、その間に会えると良いけど」

「えー」


 何が悲しくて、わざわざゲームの中で座って過ごさねばならないのだ。


「いや、言いたいことは分かるわ。そして、初日にこんなことに付き合わせて本当に申し訳なく思う。

 だから、それ飲み終わったら、先に出ていいわよ」

「……もう少し付き合う。

 何か食べる?」

「ここね、チーズケーキが美味しいのよ!」

「成程。じゃそれを貰おう」

「待って」


 店員を呼ぼうと手を上げかけた私にノゾミが静かな声で言う。

 視線は街の方。


「ごめん。ケーキはまた今度。標的(ターゲット)、現れたわ」


 ◆


 ノゾミの言う標的(ターゲット)は昨日、私に話しかけてきた大男だった。

 偶然?

 いや、多分違う。

 その男の後ろを、三十メートル程離れ歩き。

 人の行き来はそれほど多くない。


「何時から追ってるの?」

「最近」

「昨日も?」

「ええ」


 じゃ、あの男を追っていて、私に声を掛けた。

 そういう事だろう。


「二兎追うものは、ってことわざ、あるよね?」

「棚からぼたもち、なら知ってるわ」

「私、知り合いでも何でも無いからね?」

「そこまでは期待してないわ。でも、一緒に付いてきて」

「……了解。お仕事、だもんね?」

「そう。アナタ、私の幸運の女神かもね」

「そんな女神が居たら、両目をチョキで潰してやるんだ」


 嘘です。女神様。


「店に入るわね」


 男は酒場に入って行く。


「どうする?」

「私達も入るわ」

「飲んで良い?」

「良いわよ。どうせ酔わないし」

「ついでに食べるよ?」

「良いわよ。どうせ太らないし」

「最高ね」

「最高よ」


 既に尾行とかどうでも良かった。


 ◆


 カウンターで大男が項垂(うなだ)れている。

 両肘を突いて。


 その隣に、ノゾミがどかっと腰を掛ける。


 しかし、大男は隣りに座る人物の顔を見ようともしない


 私はノゾミの影に隠れるように静かに腰を下ろす。

 そして、バーテンにグラスのビールを二つ注文。


「タウラス自由騎士団団長、マーカスよね?」


 飲み物が来る前にノゾミが話を始める。


「マーカスだが、もう、団長じゃない。クビになった」

「そう」


 顔も上げず、暗い声で答える男に、その答えを予想していた様なノゾミ。

 そこに、バーテンが静かにビールの入ったグラスを置く。

 私はひとり勝手にそれを呷(あお)る。


「貴方、私の部下になりなさい」


 グラスを手にもち、高圧的にノゾミは言った。

 それに怪訝そうな顔を上げる大男。

 ノゾミを見て、そして、更に奥の私と目が合う。

 更に眉根の皺が濃くなる。

 構わず私はビールを一口。

 そしてメニューに目を落とす。


「俺なんかに何の価値がある……」


 そんな言葉と共に、盛大な溜息。


「価値があるから声を掛けてるんだけど」

「……そうか。好きにしろ。囮でも何でもやってやる」


 言った後、半分ほど残っていた中ジョッキを一気に流し込む。


「契約成立ね。大丈夫。囮よりはマシだから」


 多分。そう、小さな声で付け足したのを私は逃さなかった。

 運ばれてきた分厚いステーキにナイフを入れながら、囮より酷い事ってなんだろうかと考える。

 ……結構あるな。

 肉が不味くなるのでその先を想像するのは止めた。


 ◆


 露店でローストビーフを買い込んで、アジトに戻る。

 そして、勝手にカウンターに入りワイングラスを探す。それと、ソムリエナイフ。


 精霊にもらった葡萄酒を開けよう。

 それで今日の締めくくり。


 シュポンといい音がしてコルクが抜ける。

 ちょっとグラスに注ぎ、匂いを。


 ……あれ?


 グラスを傾け少し口に含む。


 ん……。


 美味しい。

 美味しいのだけれど……甘口だな。

 ローストビーフに合いそうも無い。


「どちらさん?」


 カウンターの中で、これに合う何かを買いに行こうかと思案していると、いきなり声をかけられた。


「あ! 何勝手に食べてんだ!」


 カウンターの上に置いたローストビーフをつまんでやがる。

 こいつは、確かクレイグ。

 ずっと寝てた奴だ。


「美味いな。これ」

「勝手に食うなって言ってんの!」

「で、どちらさん?」

「喧嘩売ってる?」

「何でそうなるかな。怖い怖い」

「とりあえず、ローストビーフ(そこ)から離れろ」

「へいへい」


 離れ際にもう一切れつまんで口に運ぶ。

 手近にあったソムリエナイフを投げつける。

 首を傾けるだけで躱された。

 クソ。

 フォークを手にカウンターから出る。

 ふざけきった男にフォークを向けたままカウンターに腰掛ける。


「ローストビーフだけで命取られる時代か。世も末だな。

 で、どちらさん?

 ここ、立ち入り禁止だぜ?」

「名乗る時は自分からじゃ無いの?」

「いや、主任がもう紹介してるだろ?」

「起きてたの?」

「いや。でも、あいつはそう言う奴だからな。

 つー訳で俺の事は良いとして、アンタどちらさん?」

「……ヘクト。今日からここで働く事になった」


 言ってグラスを傾ける。


「そりゃ、ご愁傷様」

「ムカつくから黙ってろ」


 わざとらしく肩を竦めるクレイグ。

 仲間で無ければぶん殴っている。少なくともそれをして良いかの判断はまだ棚上げだ。

 組織の流儀が分からないうちは。


 ノゾミに甘いワインに合う何かをリクエストするメッセを送る。

 そろそろマーカスとの契約も終わるだろう。


「随分甘口だな」

「てめぇ!」


 人がメッセを書いてる隙に、今度は勝手にワインを飲んでやがる。


 グラスを持ったままカウンターへ逃げ込むクレイグ。


「肉にはこれだな」


 そう言ってしゃがみ込み、ビンを二つ取り出す。

 そして、栓を開け一本私に差し出す。

 これは……ビールか?

 よく冷えている。

 冷蔵庫とかあるのか?


「新たな仲間に」


 軽くビンを掲げ、気障ったらしく言う。

 誤魔化されたな。

 ビールに口を付ける。

 程よく冷えていた。


「ただいま」


 ちょうどノゾミが戻る。

 その後ろにマーカス。


「あー! お前、また勝手に飲んで!」

「おかえり」


 ノゾミの抗議に表情一つ変えず挨拶するクレイグ。


「今度、滅茶苦茶働かせるから覚悟しろよ」

「何てブラック企業だ。で、そちらさんは?」

「ビール二本出して」

「へいへい」

「はいこれ。注文のパンケーキ」

「ありがと。ビールごめん」

「もう、報酬から天引きにしようかしら。

 大人も増えたし」

「何てブラック企業だ」


 カウンター越しにビールを二つ出すクレイグ。

 ノゾミは立ったまま、マーカスは椅子に腰掛け、それを手に取る。


「えーっと、ヘクト、マーカスこれから宜しく。

 ようこそブラック企業へ!

 乾杯!」


 そう言って高々とビールのビンを掲げる。

 その嬉しそうなノゾミの音頭に続く乗りの良い仲間は残念ながら居なかった。


 ◆


 喫茶水月。特務機関エクリプスのアジト。

 その地下二階にノゾミのみが入室可能な部屋が存在する。

 目立った物の置かれていない殺風景な一室。

 その中心にノゾミが立つ。


 壁面に備え付けられた装置が作動し、椅子に座り足を組んだ男の姿が現れる。

 顔は仮面で覆われ、髭を蓄えた口元がわずかに覗く。


『首尾は?』


 その男が、ノゾミに問う。


「駒を二つ手に入れました」


 自らを『マルショワリ』と名乗る目の前の男についてノゾミが知っている事はそれ程多くない。

 特務機関エクリプスの上部組織である、『アーミラリ』の一員。

 人と金をある程度自由に動かせる立場にあるが自分たちの前に直接は姿を表さない。

 この島、ジェミニの死亡したとされている王の双子の弟であり、自分たちのような人間を秘密裏に動かしているらしい、という事ぐらいである。

 それが事実であるのかも、そして、その目的も不明瞭なのであるが。


『承知している』


 一つ確かなことは自分たちよりも確実に情報も金も持っているという事。

 ひとまずノゾミはそれを最大限に利用しようと考えている。


『レグルスにアクチルから荷物が届いたそうだ。

 そして、それを狙う輩がいる』


 こう言う、裏で暗躍する組織と言う存在。

 それはそれで面白くもあった。


「護衛ですか?」

『否。迎撃』

「了解」

『一つ、面白いものが手に入った。明日届けさせる。好きに使え。

 もし望むなら、いくつか手配できよう』

「は」


 そこで目の前の男の姿が消える。


 ノゾミは部屋から出て、階段を登りながら後ろ首に手をやり独りごちる。


「少し、入り込み過ぎかしらね……」


 最後に敬礼を返していた自分の事を思い出し、思わず苦笑する。

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