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居住区
「本当、馬鹿な事をしたね」
麻有が、マグカップにコーヒーを淹れながら直藤に言った。ベッド脇に座った直藤は、先程から項垂れている。
「直藤に悪気がなかったから、生駒君も、あれくらいで済ませてくれたんだ。感謝しなきゃ」
直藤にマグカップを差し出すと、麻有は隣に座る。カップを受け取った直藤が、ごめん、と小さく謝った。その彼の頭をそっと撫でると、
「理由は聞かないけど、これに懲りたら、もう馬鹿な真似はしないように」
穏やかな声で諭す。
麻有も怒ってないと分かったのか、直藤が甘えるように、肩に頭を預けてきた。
「…ごめん、もう二度としない」
素直に謝る直藤の顔を、麻有は優しく撫でた。




