ラウンジ(和明の場合)
一頻り皆ではしゃいだあと、喫煙組が一服するために席を離れた。
喫煙席の一角に陣取ってすぐ、崇が宇陀を睨みつける。
「どういうつもりだ」
低く唸った。余程チビたちが心配なのだろう。警戒心を顕にして、今にも食って掛かりそうだ。
「あいつらに何かするつもりなら、容赦しねぇぞ」
「何もする気は無いよ。ただ試しただけだから」
宇陀は、両手を上げて敵意の無い素振りを見せる。
「…あとで利用するつもりで、か…?」
「そのつもりも無い。こちらだって、探られたくない腹はあるんだ。おたくの言ってた事がどこまで本当か、知りたかった」
真面目に言い切って、宇陀は情けない顔をする。
「…もう、管制士たちに詰め寄られた時みたいな経験は、二度としたくない」
たぶん、こっちが本音だ。
ぶんぶんと首を振り、宇陀は机に突っ伏した。
「…何で、ここの連中は曲者揃いなんだよ…」
情けない声で泣き言を垂れる宇陀に、崇の毒気が抜ける。気の毒そうに宇陀を見やると、崇はそっと背中を摩った。
「…まぁ、何だ、こればっかりは、気の毒としか言い様がねぇな」
普段から曲者たちに鍛えられてる崇には、それくらいしか慰めの言葉が出てこないのだろう。
宇陀と同じ立場の和明には、宇陀の試したい気持ちは良く分かるが、実行しようとは思わなかった。
そういう事で、崇は嘘吐かねぇから、絶対、返り討ちだろ。
実際、生駒は宇陀の言葉の裏を読み取って、意趣返しだけでなく、しっかり、ちゃっかり駄目出しまでしている。それも、無意識だ。
和明も気の毒そうに宇陀を見やって、トドメの言葉を吐く。
「試すつもりが返り討ちにあって、おまけに駄目出しまでされちゃぁ、ざまぁねぇよな」
「…ちょっ、おまっ、わざわざ黙ってた事、ボロっと言うなっ…!」
崇が和明の袖を引いて、小声で窘めた。が、案外、言ってる事は酷い。
突っ伏したままの宇陀が、おたくら酷いわ、とぼやくのが聞こえた。




