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閉じた未来の、その先へ  作者: はなび
転属3日目
3/32

整備場(哲也の場合)



ーそんなっ、理由くらい聞いてくれたってー


三輪(みわ)さん、三輪整備技師、お願いです、話を聞いて下さいー


この3日間、何度も哲也(てつや)の元を訪れて、生駒(いこま)は必死に言い募っていた。真剣な声音が耳から離れない。

彼の言い分は分かる。単独搭乗しかできない理由も、ちゃんと知っている。だからこそ、哲也が搭乗許可を出せないのは、生駒には理解できないだろう。

生駒の機体は、かなり負荷が掛かっていて、思ったよりも状態が悪かった。きっと、生駒自身も、体調不良を訴える事が増えていたはずだ。

彼を止められて良かったと思う反面、少し言い過ぎたかも、と思う気持ちもある。

彼は哲也を、冷たい人だと思っているに違いない。それでも、手遅れになるより、誤解されたままの方が良かった。


哲也は、オーバーホール中のコクピットの中で、溜め息を吐いた。自然と手が止まってしまって、思うように仕事が進まない。

気持ちを入れ替えるために休憩しようとして、


「テツ、おい、テツ!」


下から、三郷(さんごう)の呼ぶ声が聞こえた。


「どうかしましたか? 三郷さん」


コクピットからひょこっと顔を出して、哲也は首を傾げる。三郷は、(しか)め面で哲也を見上げて、降りて来い、と手招きした。

哲也がコクピットからふわりと降りて三郷の目の前に立つと、彼は思い詰めた顔で、あのな、と切り出した。


「生駒の事だが、あれは言い過ぎじゃねぇのか? キャプテンが、かなり落ち込んでるって言ってたぞ」


「でしょうね」


「…でしょうね、って、おまえ…」


あっさり返した哲也に、三郷は思い切り眉根を寄せる。


「あのな、モノには言いようってもんがあんだろうが」


「言いようを変えても、内容は変わりません。期待させるような言い方はしたくない」


哲也がきっぱり言い切ると、三郷は唸った。


「それじゃ、誤解されンだろ?」


三郷が、自分と生駒の関係が悪くなるのを心配しているのは分かる。

でも、哲也は引く気がない。


「誤解も悪役も、覚悟の上です。取り返しがつかなくなる前に、歯止めになれれば、それで良い」


「おまえが良くても、周りが困ンだろうが…」


溜め息混じりに言われて、哲也は、すみません、と小声で謝った。


「…でも、僕と同じ目に遭わせたくないので…」


自重気味に呟くと、三郷の表情が、深刻なものに変わる。


「まだ、あン時の事…」


「大丈夫、僕は、もう諦めがついてます。でも、生駒君はまだ間に合う。何とかしてあげたいでしょ?」


そう告げると、三郷はもう一つ、溜め息を吐いた。


「だったら尚更、誤解だけは解いとけ。生駒の為にも」


彼は言って、哲也の頭をくしゃくしゃと撫でた。

哲也は苦笑を浮かべて、返答しようとして。

いつの間にか、三郷の後ろに立っていた生駒と目が合った。

彼は、あたふたと奇妙な行動を取った後、バツが悪そうに頭を掻いた。



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