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閉じた未来の、その先へ  作者: はなび
転属3日目
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居住区



個室の室内に、爆笑が響き渡る。一応、完全防音になっているので、外に漏れないと思うが、こうも爆笑されては、外まで聞こえている気がして居たたまれない。

(りく)は恨めし気に、目の前の管制士に文句を言った。


「…何も、そんなに笑わなくても…」


カフェオレの入ったマグカップを弄びながら抗議する陸に、管制士は、すまない、と謝った。


「…しかし、初っ端から、それは…っ」


言いながら、まだ笑っている。

彼は、陸がステーションに勤め出した時から世話を焼いてくれている管制士だ。法的にも面倒を見てくれている。

性格に癖があって、油断すると痛い目に合うが、基本、陸には甘い。


「まあ、しかし、その整備士の言う事は正しい。本来は2人掛かりで動かすものを1人で動かせば、機体にもオペレーターにも、過度の負荷が掛かる」


陸は上目遣いに彼を見て、がっくりと肩を落とす。




この3日間、陸は三輪の元に通ったが、一向に取り合ってくれなかった。

せめて言い分だけでも聞いてもらうために、目の前の管制士に口添えを頼みに来たのだが、事情を話した途端に大爆笑されたのだ。

陸は頭を抱えて、三輪との会話を思い出す。


ー搭乗許可は出せませんー


笑顔のままで淡々と告げた三輪に、陸は慌てて言い縋った。


ー…ち、ちょっと待って下さい、今までは…ー


ー今までがどうだか知りませんが、駄目なものは駄目ですー


ーそんなっ、理由くらい聞いてくれたってー


ー理由は関係ない。搭乗許可が欲しいなら、パートナーを連れて来て下さいー


ー俺、航法士の資格も持ってますー


ー知ってます。でも、それも関係ない。解ってますか? 君の無茶の所為で、このガーゴイルはオーバーホールをしないといけない。君自身も、気付いてないだけで、相当の負荷が掛かってるー


ーそれでも単独搭乗したいなら、キャプテンの許可を取って下さいー


ー最も、ガーゴイルを元の状態に戻すのに1ヶ月は掛かる。その間は搭乗できませんがー


言葉を失って呆然とする陸に淡々と事実を突き付けて、三輪はコクピットに戻って行った。隣で成り行きを見守っていた三郷(さんごう)が、諦めな、と肩を叩いたが、納得できる訳がなかった。

キャプテンには、その日の内に相談に行った。けれど、逆に早くパートナーを見つけるように説得され、1ヶ月の搭乗禁止を言い渡された。




思い出しただけで、重い溜め息が漏れる。


「…何とか、なりませんか?」


心底疲れたような陸の呟きに、


「パートナーが見つかれば、手っ取り早いんだがな」


管制士は当然のように返した。


「それが出来てりゃ、こんな苦労してませんよ…」


泣き言を言って、陸は机に突っ伏した。その頭を管制士が優しく撫でる。


「…困った体質だな…」


彼の言葉には、多分に同情が含まれていた。



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