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閉じた未来の、その先へ  作者: はなび
プロジェクト開始1ヶ月前
18/32

居住区(哲也の場合)



管制士たちの話が済んで解放されたのは、深夜に近い時刻だった。三郷(さんごう)が、(りく)たちを送るついでだと、香芝(かしば)たちも連れて帰ることになった。


管制士たちは、この後も会議室で残業だと言っていた。プロジェクト統括者ともなると、任される仕事量は並じゃない。いくら時間があっても足りないのだろう。3人揃ってぼやいていた。


陸も、先ほどからずっとぼやいている。班長を任されたのが不服なのだろうが、それより、経験の無さによる不安の方が大きいようだ。


「…俺、絶対無理だって。こんな大きなプロジェクトで、いきなり班長なんて、自信ないよ。てっさんみたいに経験無いもん…」


若干、落ち込み気味の陸に、哲也はおっとり笑いかける。


「大丈夫、陸ならできますよ。皆も協力してくれます」


宥めるように言うと、陸は哲也の顔を覗き込んだ。


「…本当?」


「はい」


「てっさんも助けてくれる?」


「もちろんです」


二つ返事で答えると、陸は安心したのか、じゃあがんばる、と機嫌を直した。そのままじゃれついてきたので、一緒になって遊ぶ。

ふざけあって遊びながら歩いていると、前を歩いていた平群(へぐり)が、


「…おーおー、仔犬どもがじゃれとる」


ぼそっと呟いた。その呟きに、先頭を歩いていた三郷が反応する。


「何か言ったか、このタコ」


「誰がタコだ、このヤロー」


売り言葉に買い言葉で、三郷と平群が、並んで口ゲンカを始めた。


「だいたい、ステーション来んのに、何で連絡寄越さねぇ?」


イライラしながらの三郷言葉には、たくさんの棘が付いている。どうやらそれが、三郷の怒りの原因らしい。平群は嫌そうに顔を(しか)め、同じようにイライラと言い返す。


「何でテメーに連絡寄越さなきゃなんねぇ?」


「俺が久度(くど)さんに睨まれずに済んだろうが」


「知るか、ふざけんな。俺だって、ステーション勤務の事知ったの、1週間前だっつーの」


ギャーギャー騒ぎながら口ゲンカをする2人の後ろを、京終(きょうばて)がおろおろとついて行く。ケンカを止めようか迷っているようだ。


「…あの2人、仲良いなぁ」


同じように2人を見ていた陸が、哲也の隣でぼそっと言った。


「…えっ、何で?」


振り返った京終が、不思議そうに陸を見る。哲也も小首をかしげると、陸は喋り始めた。


「んー、だって、言葉遣いは荒い…っていうか貶しあってるけど、言葉ほど雰囲気は険悪じゃないから。本当は仲が良いんだな、って思って」


「確か、従兄弟同士でしたっけ?」


哲也は、三郷が会議室で、久度に言った事を思い出す。


「あ、それでか」


ぽん、と陸が手を打った。


「さっき顔合わせでさ、平群さんが自己紹介した時、何か三郷さんと似てるなぁ、って思ったんだ」


やっと謎が解けた、と喜ぶ陸の声を聞きつけて、三郷と平群が同時に振り返り。


「似てねぇ!」


同じ言葉を叫んだのも同時だった。



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