ターミナル控え室(陸の場合)
その日は、朝からプロジェクト関係者全員が忙しかった。
哲也は、ずっと何処かに出たきり、整備場に戻ってない。三郷は、相変わらず整備場に詰めていたが、哲也の代わりに整備班を纏めるのに忙しそうだった。陸も、管制室に呼び出されて、管制士の仕事を手伝わされ、関係部署を盥回しにされた。
遅い昼食の休憩がてらに整備場に戻ると、まだ哲也は帰ってきていなかった。三郷も、ばたばたしていたので、陸はそのまま管制室に戻った。
結局、就業時間まで管制室に詰めたあと、そのまま葛城に連れ出されたので、整備場に戻ることはなかった。これから、プロジェクトメンバーの顔合わせがあるそうだ。
連れて行かれたのは、ターミナルにある控え室で、すでに数人が集まっている。知り合いもいれば、全く話もしたことのない人もいる。でも皆、顔見知りだ。
集まった人の中に哲也を見つけて、陸は駆け寄った。
「てっさん、やっと会えたー」
「お疲れ様です、陸。今日は大変でしたね」
「慣れない事、するもんじゃないよ、本当に」
苦笑いしか出てこない陸に、哲也はおっとり笑う。
「そういえば、三郷さんは?」
「手伝いの方で、トラブルがあったみたいです。遅れるって連絡がありました」
陸は、そうなんだ、と返す。
それからしばらく、2人で他愛ない会話を楽しんだ。
就業後30分も経つと、控え室に人が増えてきた。ざっと見ただけで、20人ほどが集まっている。
増えたなぁ。
陸が呑気に眺めていると、室内に入ってきた磯城が、こちらに寄って来た。
「やあ、三輪君。久しぶりだな、お疲れ様」
「お疲れ様です、磯城さん。3日ぶりです」
おっとり笑って挨拶を返す哲也の隣で、不機嫌そうに顔を顰めた陸が、磯城に文句を言い始める。
「整備場は、磯城さんの遊び場じゃないです。何で、頻繁に顔出しに来るんですか?」
「日参しているおまえに言われたくないな、陸。あまり、三輪君の仕事の邪魔を、するんじゃないぞ」
軽口を叩く磯城に、陸は、ぷう、と頬を膨らませる。
「磯城さんと違って、仕事の邪魔なんかしてません!」
ね、と哲也に同意を求めると、彼はおっとりと、はい、と返事した。
「…三輪君、正直に迷惑だと言わないと、陸が付け上がる」
磯城が哲也に耳打ちして。
途端に陸が、ヒドい、と抗議した。




