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閉じた未来の、その先へ  作者: はなび
プロジェクト開始1ヶ月半前
11/32

管制室



(りく)は、この数週間、よく管制室に呼び出されている。時間にすれば1回につき1時間ほどだが、すでに10回以上はここに来ている。用事はいつも同じ、陸のパートナー候補の適性検査のためだ。今までの検査は、全て駄目だった。

今日も昼食後に、整備場にいたところを呼び出された。


今回こそは、適性が合えばいいのに。


生駒(いこま)君、毎回すまないね。手間だが、もう一度、適性検査を受けてみないかい?」


管制室に入った途端、担当管制士の葛城(かつらぎ)に問われた。


「はい、受けます」


陸が即答すると、葛城は一瞬、ぽかんと口を開けて、


「…ずいぶん、返事が早いね…」


感心してるのか、呆れてるのか、分からない口調で呟いた。


「あー、早くパートナー見つけて、てっさん…じゃないや、三輪(みわ)さん安心させたいんで…」


陸が理由を告げると、葛城は納得して頷く。


「そういう事なら、話は早いな。実は、今回のパートナー候補は、ちょっと問題があってね」


「…適性、合いそうにないですか…?」


葛城の話の切り出し方に不安を覚えて、陸が訪ねると、彼は、いやいや、と首を振った。


「適性は合うと思うよ。今までで一番、確率が高い。ただ、ね、航法士じゃないんだ」


葛城は、苦笑いを浮かべて答え、真剣な表情で続きを話す。


「君と適性の合いそうな航法士は、全て当たったが駄目だった。だから、操縦士に範囲を広げて探して、やっと2人。もしこれで駄目なら、新人が入って来るまで、パートナー探しは無理だ」


これは、最終通告だ。陸の表情も硬くなる。


「これが駄目だったら、俺、プロジェクトから外されるんですか?」


「いや、それは無い。だが、予備人員としての参加になるだろう」


「適性が合ったら、俺のガーゴイルは…」


陸の、一番の心配の種を口にした。葛城は、安心させる口調で答える。


「彼らは、専属機を持たない。君のガーゴイルを、そのまま引き継ぐ事になるな」


それを聞いて、陸は、ほっと息を吐いた。

ステーションに勤め出してから、ずっと搭乗してきた機体だ。すでに、身体の一部みたいな感覚なのだ。今さら、他の機体に乗り換え、は考えたくなかった。


「なら、いいです。適性検査、受けます」


あっさり答えた陸に、葛城は目を(みは)る。


「…もう少し、操縦士に(こだわ)りがあると思っていたが…」


思わず漏れた葛城の呟きに、陸は平然と返す。


「今の機体に乗れるなら、どっちでも良いです」


「…そうか。では、生駒の都合の良い日に、適性検査をしよう。1週間以内なら、いつでも良いよ」


「あ、じゃあ、今からでも?」


葛城の提案に、陸がそう言うと、彼は、目を点にする。


「…ずいぶん、思い切りの良い子だね、君は…」


やはり、葛城の呟きは、感心してるのか、呆れてるのか、分からなかった。



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