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閉じた未来の、その先へ  作者: はなび
プロジェクト開始2ヶ月前
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居住区



「ちょっとぉっ、磯城(しき)さん、どういう事ですかっ」


磯城の個室に入るなり、(りく)に大声で怒鳴られた。



小会議室から帰って来ると、磯城の部屋の前に、陸が立っていた。明らかに不機嫌な顔で、彼の怒りの理由が察せられる。


これは、噂の方を耳にしたな…。


とりあえず、陸を部屋に招き入れて、扉が閉まった途端、第一声がこれだった。会議室での頭痛が、さらに酷くなりそうだ。


磯城は、珍しくご立腹の陸の小言を延々と受け続け、気力の無くなった生返事を返す。


「磯城さん、ちゃんと聞いてます?」


「ああ、ちゃんと聞いている。悪かった」


「また、そんなおざなりな事言う…」


陸が、ぷう、と頬を膨らませる。ご機嫌を損ねたようだ。磯城は慌てて、ご機嫌を取るように真面目に謝った。


「いや、本当に悪かったと思っている」


「謝るなら、てっさんに謝って下さい。また変な噂が流れて困るの、てっさんなんですから」


「分かっている。彼の所にも、もう一度行くよ」


磯城の言葉に、やっと怒りを解いた陸が、ならいいですけど、と呟く。


「でも磯城さん、何で、てっさんにケンカなんか売りに行ったんですか?」


「…いや、陸…おまえ、何か誤解していないか? 私は、彼と話をしに行っただけで、ケンカを売りには行っていない」


弁解するも、陸は、据わった目で疑うように磯城を見ている。


「何か、試すような事、やったんでしょ」


確信があるのだろう。一応、疑問形で訊いてきたが、口調は決めつけていた。磯城は、言い返せずに言葉に詰まる。


「どうせ、言い負かされたんでしょ?」


身も蓋もない陸の言い様に、磯城は頭を抱えた。


せめて、もう少しオブラートに包んだ言い方をして欲しい。


思いはしたが、口には出さなかった。


「…まぁ、な。彼を試そうとして、逆に試された。おまえの友人は、なかなか手強い」


磯城が降参のポーズを取ると、陸は笑い出す。どうやら、機嫌は直ったようだ。磯城は、陸の頭を撫でて言葉を続けた。


「だが、本当に良い子だ。おまえが慕うのも頷ける」


「でしょ? だから俺、てっさん好きなんだ」


陸は、嬉しそうに顔を綻ばせた。その笑顔を、磯城は、眩しそうに目を細めて眺めて、


「おまえの、気を許せる数少ない友人だ。大切にしなさい」


諭すように囁いた。



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