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閉じた未来の、その先へ  作者: はなび
転属初日
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衛星軌道ステーション

新しいお話の始まりです。


お暇つぶしに、軽い気持ちで読み飛ばすことを、オススメします(笑)


※基本、前置き・後書きは、何か説明や補足のある場合しか入らないと思われます。ご了承ください。



半円形の特殊ガラスの窓から、青く光る地球が見えた。太平洋上に台風が発生しているらしい。渦を巻いた雲が海の上に鎮座していて、中央に穴が空いていた。


あれが台風の目なんだ。


奇妙な感心をしてしまった。

(りく)が衛星軌道ステーションに着いたのは、1時間ほど前のことだ。今までは月面第一ステーションで勤務していたが、居住区も仕事場も地下にあったため、ほとんど外を見たことがなかった。

物珍しさに食い入るように眺めていると、後ろから追い越しざまに同僚に肩を叩かれる。


「ほら、ぼうっとしてないで行くぞ」


陸は慌てて返事をすると、気を引き締めて彼らの後を追った。

これから、このステーションの責任者たちに挨拶に行く事になっていた。




陸の仕事は、O-Pと呼ばれる人型の有機機械の操作を行うオペレーターだ。

機種が数種類あり、機種毎に用途が違う。大きさも機種毎に違っていて、小さいもので4メートル、大きいものなら10メートル程になる。

通常は、宇宙飛行士の学校を卒業後、専門の学校を経て、厳しい試験と適性検査を合格して、初めてオペレーターの資格が貰える。

星間飛行船のパイロットの次に人気の職業だが、どちらも難関中の難関だ。特に、ステーションのO-Pオペレーターは資格保有者の憧れだった。


ステーションは国際的な総合実験施設で、基地局が4ヶ所ある。

火星ステーション、月面第一ステーション、月面第二ステーション、衛星軌道ステーションだ。

それぞれが多彩な実験を行っていて、その中でも衛星軌道ステーションが一番規模が大きい。基地局を繋ぐ中継点となっている事と、ここでも大規模な実験を行っているからだ。


プロジェクトが立ち上がる度に、必要な人員が各ステーションを移動するが、今回、月面第一から転属になったのは、陸を含めて8名。その内、オペレーターは陸だけだった。


転属初日の今日は、ステーションのキャプテンとプロジェクトの担当管制士に挨拶に行くだけで、これといった仕事は無い。個人の経歴書は先に届けられている為、中央管制室でキャプテンと挨拶を交わした後は、担当の管制士を紹介されて雑談をしただけだった。

そのまま解散になったので居住区に戻ろうとしたら、陸の担当管制士が彼を呼び止めた。


「居住区に行く前に、格納庫に寄って整備士に挨拶しておいで。ここでは彼らが一番エライからね」


「あ、俺のガーゴイル、もう届いてるんですか?」


「先週、搬入されたよ。今は整備中じゃないかな?」


「ありがとうございます。行ってみます」


陸は管制士にお辞儀をすると、格納庫に向かった。




陸が格納庫で管理人にIDナンバーと機体番号を告げると、格納庫の奥の整備場に行くよう指示された。

格納庫はかなり広かった。複数の区画に分かれていて、それぞれの区画にはO-Pが20機前後、ハンガーに掛けられている。整備場はさらにその奥だ。複数のO-Pがハンガーに掛かっている。

陸のガーゴイルは、一番奥の真正面で整備を受けていた。外部装甲どころか内部装甲まで外されて、本体である有機体が露わになっている。


「…あの…」


陸は、近くを通りかかった整備士を呼び止めた。彼は一旦立ち止まって陸を見やると、気の毒そうな表情を浮かべる。


「おい、ここは見学のお子様の来る所じゃねぇぞ。迷子なら管理人室に行きな」


そう言って、今来た方角を指差した。


「あ、いえ、違います。今日からここに転属になった、生駒(いこま)陸です。担当管制士から、ここに挨拶に来るよう言われたので…」


言外に迷子じゃないと含ませて挨拶すると、整備士は驚いたように目を(みは)ってから、やはり気の毒そうに陸を見る。


「俺は、一級整備士の三郷(さんごう)(たかし)。おまえと同じチームの整備士だ」


彼は簡単に自己紹介して右手を差し出す。陸も右手を出して握手を交わすと、ちょっと待ってな、と三郷は整備中のO-Pに向き直った。


「おい、テツ、お客!」


三郷の大声に、周りの整備士が一斉に振り返る。


「テツ、聞こえてねぇのか!?」


三郷は周りの整備士に構わず怒鳴った。

どうやら、目的の人物は出て来ないらしい。思い切り顔を(しか)めて、呼び方を変えて更に怒鳴る。


「お客だ、三輪技師長!!」


「その呼び方、止めて下さい」


通る声で答えて、三輪と呼ばれた人物は、整備中のO-Pのコクピットから、ひょこっと顔を出す。


「聞こえてますって、三郷さん。いつものお客さんなら、追い返しておいて下さい」


「いや、違うって。そいつの持ち主が挨拶に来てんだ」


三郷は、そう言って陸を指差す。三輪は、ああ、と納得した顔をしてコクピットに引っ込み、すぐにファイル片手に出てきた。

三輪は年相応の、どちらかというと大人しそうな少年だ。多分、陸と年齢は変わらないだろう。

ふわりとコクピットから降りてくると、陸に向かって、にこりと微笑んだ。


「始めまして、整備技師の三輪(みわ)哲也(てつや)です。今度のプロジェクトの整備班長で、O-Pの担当整備士です。よろしくお願いします」


丁寧に挨拶して、三輪はお辞儀をした。そして間髪入れずに、早速ですが、と言葉を続ける。


「2、3質問、いいですか? 答えられる範囲で結構です」


「…はい」


「この機体の機種名は何ですか?」


三輪は、にこやかに笑いながら、整備中の機体を指差す。陸は戸惑いながら答えた。


「O-Pガーゴイルです」


「ガーゴイルの特徴は?」


「実験機材の設置などの重労働から、繊細な実験工程まで(こな)せる多彩さです…」


改まって質問されると、自分の答えに自信が無い。自然に声が尻窄(しりすぼ)みになる。

隣で陸と三輪の会話を聞いていた三郷が、気の毒そうに顔を逸らす。

気のせいか、三輪の周りの空気が冷たくなった。


「一つ抜けてますね。何だと思いますか?」


問われて、陸は首を傾げる。


解らない?


三輪の目線が、そう告げている。陸がそれに頷くと、


「ガーゴイルは複座です。機体を操作する操縦士と、機体を誘導する航法士が必要です」


模範回答を示した。

あっ、と陸の表情が変わる。全身から血の気が引いた。


「君のパートナーは、どこですか?」


その質問に、陸は答えられなかった。

元々、陸にパートナーはいない。初めから、ずっと単独搭乗だったのだ。


「…あの…っ」


その理由を伝えようとして。

柔和な笑みを浮かべた三輪が、陸の言葉を遮った。


「残念ながら、この機体は整備不良です。搭乗許可は出せません」


淡々とした声も笑顔も変わらなかったが、三輪の目は笑っていなかった。



読んでいただき、ありがとうございました。


こちらに投稿→お話の二重保存のためです。

以前、100ページ近く書いてたのを、PC操作を誤って、まるっと消してしまったのが原因です…_| ̄|○


事情が事情なので、申し訳ありませんが、感想等、お受けできません。

ごめんなさいm(_ _)m


※本文に説明のない事柄は、後々説明されるか、お話の進行上、必要ないかのどちらかです。



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