第八話 登校
「うああぁっ!」
俺は飛び起きた。
「…………はあっ、はあっ」
息が苦しい。こんなの初めてだ。
「どうしたのお兄ちゃん?!」
弟が様子を見に来た。
「…ああ、ごめん綾田…」
「どうしたの…?」
「悪夢見てた…それで叫んじゃったみたい…」
「それにしては尋常じゃなかったよ…?
…病院でも行って来たら?」
「ちょっと考えとく…」
そのまま綾田は自分の部屋に戻っていった。
俺はまだ放心状態だった。
「なんだ今の…」
今見た夢はなんだかすごいリアルだった。
今まででこんな夢見たことない。ほんとに自分が動いていたかのようだ。
まだ胸がどきどきしてる。
「ほんとにちょっと病院にでも行こうかな…」
これはさすがに怖い。これが続くようならちょっと病院行くのも考えよう。
「にしても…」
何だろう今の。なにか、嫌な気分。
その日はそのまま調子が悪かった。
綾田の奴が親に言ったせいでだいぶ心配された。
かと思いきやゲームのやりすぎだのと後半七割はお説教タイムへと変身を遂げた。
いやー、でもそうなのかも。寝てもないしな。
皆さん、ゲームはほどほどに。
その日は早く寝た。ゲームなんてやる気にはならなかった。
***
「おはよ!祐介」
「…おう」
昨日早く寝たおかげで今日は楓と一緒に登校することができた。
「祐介、今日は血色いいわね」
「たくさん寝たし、朝ごはんもばっちし食べてきたんでね」
「なるほど、いつものゾンビみたいな顔じゃないわけね」
「そんなひどい…?」
今日は体調最高だ。昨日の悪夢はこたえたけど、よく寝たおかげで全快だ。
「あぁ…、なんてすがすがしい朝なんだ…」
小鳥のさえずりまで聞こえる…
素晴らしい…
「ふふっ、今日は絶好調みたいね」
「いやもう最高調よ」
「だったらさ…」
「だから学校終わったらどっかいかね?」
「えっ」
楓が驚いた顔をしている。
ふふっ、どうだ。
「…梶たちと一緒にってこと?」
「ううん、二人で」
「…」
めちゃくちゃ驚いてる…
まあそりゃ驚くよね。
「あ、あんたがそんなこと言うなんて…」
それもそのはず、今まで俺が自分から誘うなんてことなかったから。
「俺も成長してるんです」
「じゃ、じゃあそうしましょ」
楓は不意を突かれたからか、すごくテンパってる。
かわいい
「二人で遊ぶなんて久しぶりだよね。」
「確かにそうね…いつ以来かしら」
「うーん…思い出せない」
「…わたしも」
すごいな、二人とも思い出せないくらいなんて相当だぞ…
「いいね、二人で遊ぶの。すごい新鮮な感じ」
「ほんとよね。すごい楽しみ!」
楓があふれんばかりの笑顔を俺に振り向けてくれる。
かわいいなぁ、おい
「どこ行こうかしら…」
「まだ時間はたくさんあるから決めといて」
「祐介は行きたいとこないの?」
「楓が行きたいとこあるんだったらそこ行こう」
「いいの?じゃあねー…」
ホントに楽しそうだ…
そこまでわくわくされるなんて、うれしすぎる。
「おはよー、ゆうさん、楓!」
「おお!おはよ」
「おはよ梶!」
梶が後ろから声をかけてきた。
「なんか二人ともすごい機嫌いいね」
「そーおー?」
「あら、そんな風に見える?」
「うん、なんかすごい幸せオーラを感じる…」
ふむ、なかなか梶もするどいではないか…
「あとゆうさんにいたっては別人みたい」
「俺ってそんな普段顔死んでんの…?」
幸せと悲しさの両方が押し寄せてきた。