第四話 柚月さぁん
「くそー、追い出されてもうた…」
ちくしょうっ。柚月さんとの幸せなひと時をつぶされた…。水野め、とことん邪魔しやがる…!
ま、でも、宿題写してたとこに居合わせなかっただけよかったとするべきかな。
いやしかし、もっと喋れたのなら、ばれるのもいとわない。
「しかし、有名なのもいいもんだな。」
こうやって柚月さんがしゃべりかけてくれるんだもん。
たとえ不名誉だったとしても、それだけで儲けもんだ。
「てか、俺もそろそろ戻んなきゃ」
幸せ気分だったから忘れてたけど、こっちも授業があったんだった。
「ささ、戻りましょー」
えーっと、次の先生は誰だっけ?
そうだ中田だ。あの人もきびしーんだったなー。
あ。中田が俺の教室入ってく。
…
「ダァッシュ!!!」
***
本日二回目の全力疾走いただきましたー。
まだ一限目なんだけどね。
「ほんとばかね…」
「ゆうさん…」
「つらぁい…」
「自業自得でしょ」
二人の視線が痛い…
まあ当然ですよね。
一限が終わって今は休み時間。
結局遅れて入ってしまったので、さっきの時間中ずっと当てられ続けた…。辛すぎわろた。
「お前なんであんなに時間かかったんだ?」
…来ました。俺はこの時を待っていた。
「ちょっと話し込んじゃってさ」
「あいつらとか」
「ちがうちがう。」
「じゃあ誰とだよ?」
「柚月さんと」
「え?」
「だから柚月さんと」
「…」
「…」
「…マジで?」
「…にこっ(⌒∇⌒) (満面の笑み)」
「オラぁっ!(ヒュンっ)」
「あぶなぁっ!(ガタガタッ)」
俺の目の前をストレートが駆け抜けた。
「なに抜け駆けしてんだ!」
「へっへーん、悪いね。」
「くそっ…、俺ももうちょっと時間かけていれば…」
この反応ですよ。この反応、待ってました。
「マジで!あの柚月さんとしゃべったの!?」
「せやで」
「ゆうさん…、見直したよ…」
この二人もこの反応である。
どれだけ柚月さんと話すのがすごいことか、わかっていただけただろうか?
「ゆうさんから話しかけたの?」
「いいえ、向こうからです」
「「「いいなぁ!」」」
「至近距離から見た感想は?!」
「すげぇかわよかった。」
「「「いいなぁ!」」」
「他にはどんなよ?」
「おっぱい大きい。いい匂い。」
「「「いいなぁぁぁぁぁ!」」」
「サイテーね!」
みんなこんな感じである。真面目くんの梶でさえ。ちょっとした勇者気分。
「はー…。わたしはちょっと席を外すわ…。。」
「えー、俺の話聞かないの?」
「聞くわけないでしょうが!」
楓はどこかへ行ってしまった。
俺の英雄譚を聞かないとは。
「バカで有名は泣けるけど、こんなことが起きるならありだと思えたよ。」
「バカでよかったな」
「ほんとばかでよかったね!」
「ゆうさんほどのおバカさんはそうそういないよ。」
「みんな…言いすぎ…かな。」
さすがに泣けてきた。
そんなこんなで次の授業が始まろうとしていた。