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第二幕 新たな旅立ち

幻術使い・狗毘羅に絶体絶命の危機に追い込まれた晴明は…このままでは力を奪われてしまうのではと危機感を募らせていた。

しかし、それでも晴明は幻術使い・狗毘羅の攻撃を回避しながら戦い挑もうとしていたが…殆ど体力を消耗していた為に戦う力を失っていて、思うように戦う事が出来なかったのである。

「こ、このままでは狗毘羅に殺られてしまうのか。」

「安倍晴明、さっきの勢いはどうした…。そろそろ観念したらどうなんだ…。」

「晴明殿、もうこれ以上戦えば…確実に死んでしまいます。一旦退却をして、体勢を整えてからもう一度戦うしかありません。」

「晴明、奴は恐ろしい術の使い手だ…。我々の力ではどうにもならない…。」

「もはや、俺たちは狗毘羅の前に戦い敗れてしまうのか…。」

晴明たちが絶望の淵に立たされ…このまま狗毘羅に戦い敗れてしまうのではと諦めかけたその時だった。

「幻術使い・狗毘羅…お前の悪事、断じて許す訳にはいかない…。」

突如何処からともなく、颯爽と現れた謎の白覆面が晴明たちの危機を救うべく…幻術使い・狗毘羅の前に立ち塞いでいったのである。

「貴様、我の邪魔をするとは命知らずな奴だな…。」

「それは誉め言葉と受け止めた方がいいのかな…。しかし、弱っている人を更に危機に追い込もうとする貴様の悪逆非道な行為を…断じて見過ごす訳にはいかないな。」

「貴様も、こいつ等と同じ目に遭いたくなければ…潔く立ち去るがいい。」

「お断りだね…。この正義の白覆面が、天に代わって成敗してやるから覚悟するんだな…。」

「言わせておけばいい気になりおって…。この幻術使い・狗毘羅が、その減らず口を捩じ伏せてやるから…左様心得ておけ。」

幻術使い・狗毘羅は謎の白覆面に攻撃を仕掛けようとしていたが、謎の白覆面は狗毘羅の攻撃を回避しながら二本の刀で反撃を開始するのであった。

「狗毘羅、貴様の攻撃など…この白覆面には通用しないぜ。」

「おのれ、逃げてばかりいないで…正々堂々と勝負しろっ。」

狗毘羅は得意の幻術で白覆面に攻撃を仕掛けていくが…白覆面は狗毘羅の攻撃を回避しながら反撃していくのであった。

「天心一刀流奥義…真空烈風斬しんくうれっぷいざん。」

夭雷辰嵬ようらいしんかい戟呻瘴霹げきしんしょうへき…。妍瞋流奥義げんしんりゅうおうぎ・火炎曼陀羅の術。」

白覆面が繰り出した真空烈風斬と狗毘羅が繰り出した火炎曼陀羅が激しい閃光を放ちながらぶつかり合い、しばらくして白覆面の必殺技が狗毘羅に命中し…遂に狗毘羅を撃破させる事に成功したのだった。

「狗毘羅、どうやらこの勝負…私の勝ちの様だな。」

「お、おのれ…。だが、これで諦める狗毘羅ではない…。いつか必ずや、この戦いの決着をつけるその時まで…首を洗って待ってるがよいぞ…。」

そう言って、狗毘羅はその場から姿を消し…しばらくして謎の白覆面は晴明たちの下へ歩み寄り始めたのであった。

「そなた、怪我の方は大丈夫ですか…。」

何方どなたかは存じませんが、助けていただきありがとうございます。」

「それより、あの幻術使いをあっさり撃退させるとは…余程の剣の使い手と見受けられるが、もし差し支えがなければ名を教えていただきたい…。」

すると、謎の白覆面は『伊賀崎隼人いがさきはやと』と名乗り…ある人物を訪ねて京の都へ来たのだと言うのだった。

「隼人殿、その人物を訪ねる為に…わざわざ京の都へ参られたのか。」

「はい…。実は、その人物と言うのは…京の都随一の陰陽師・安倍晴明様にございます。」

すると、晴明は隼人に自分の素性を明かし…丈瑠は故郷である八橋村やつはしむらに正体不明の妖怪に村を襲われ、村の全体が廃墟寸前まで追い込まれてしまった為に是非とも都随一の陰陽師である安倍晴明に救いの手を求めたのだと話すのであった。

「それで、隼人殿の故郷である八橋村に…その正体不明の妖怪が現れ、村を襲ったと言うのですか。」

「はい…。丁度私は所用で出掛けており、しばらくして村へ帰ると…家屋や祠が壊されていて、村人たちは無惨な姿で倒れていたのでございます。そのあと村長にいったい村に何があったのかを聞いてみたのですが、あまりにも一瞬の出来事だったので…妖怪の姿を見ていないと話していったのです。」

「…なるほど。しかし、その村長が妖怪の姿を目撃していない点に関しては…その八橋村をもう少し調べて見る必要があるな。」

「晴明殿、村を襲ったと言われる正体不明の妖怪が何なのか…それも合わせて調べなければなりません。」

「晴明、隼人殿がこれだけ真剣に晴明を信頼しているんだ…。どうやら、旅に出掛けなければならぬようだな…。」

晴明はしばらく考え、八橋村に現れた謎の正体不明の妖怪の真相を確かめようと旅に出かける決意を固めていったのであった。

「隼人殿の頼みとあらば、この安倍晴明…そなたの頼み引き受けてしんぜよう。これも、何かの縁なのかも知れないな…。」

「それでは、一度晴明殿の屋敷に戻って…旅支度をせねばなりませんね。」

「でも、飛鳥と息子の保允を残して旅に出るのは…少し不安なのだが…。」

「そうか、晴明は確か…飛鳥どのと結ばれ、一人のご子息が居られたのだったな…。」

「でも、話せば解ってくれるはず…。長年、飛鳥と旅を続けて絆が結ばれたお陰で…今の自分があるのだと思っている。」

「そうですよね…。飛鳥どのに今回の旅の事を話せば、理解してくれると思います…。」

「そうと決まれば、早速晴明の屋敷に行こう…。八橋村への出立は…翌日の朝出発する。恐らく、旅の途中で幻術使いの狗毘羅が現れる可能性があるから…身を引き締めて行くぞ。」

それからしばらくして、晴明と於呂血…それに烈堂と隼人の四人は、一度晴明の屋敷に戻り…妻の飛鳥に旅に出かけるを告げると、飛鳥は笑顔で晴明の旅を許したのだった。

「飛鳥、本当にいいのか…。」

「ええ…。晴明様が旅に出かけられるのは、もう馴れてますから…。それに、今回の旅は…相当過酷な旅だと聞いております。しかも、相手は狗毘羅と名乗る稀代の幻術使い…晴明様、どうか無事に帰って来る事を祈っております。」

「心配するな…。私はそんなに柔な体はしておらぬぞ…。相手が狗毘羅だろうが、必ず飛鳥の所へ帰って来るさ…。」

「晴明様…。」

「それに、息子の保允も父である私に笑顔で送ってくれているに違いない…。もし、無事帰って来た時には…保允を一人前の陰陽師として育てるつもりだ。」

晴明は今回の旅が無事終わった時には、息子である保允を将来的には一人前の陰陽師として育てる事を決意するのであった。

「でも、私が旅に出てしまえば…留守の間何かと不便であろう。…そうだ、兄弟子に頼んでしばらくの間陰陽寮で過ごすといいだろう。あそこは厳重な警備も充実しているし、四六時中監視も行っているから飛鳥や保允も安心して過ごせると思うんだ…。」

「そうですわね…。正親様なら信頼出来るお方なので、晴明様は他の皆様と一緒に旅をなさられませ…。」

「すまない…飛鳥。お前のその言葉で、身が引き締まる思いをしたよ。だが、体には気をつけるんだぞ。もし、何かあったら…迷わず兄弟子に相談するといいだろう。ああ見えても、結構面倒見がいいから…気軽に何でも話すがいい。」

「分かりました…。道中…くれぐれもお気をつけてくださいね…。」

「ありがとう…飛鳥。」

そしてしばらくして、晴明は飛鳥と保允を陰陽寮に預け…その後兄弟子である鬼龍正親に今回の旅で幻術使いである狗毘羅の悪事を食い止めようとしばらく留守にする事を告げていったのだった。

「兄弟子、先ほど申された通り…幻術使い・狗毘羅が京の都に現れてから恐ろしい事が続き、このままでは京の都だけではなく…日本全体が悪の支配下になる可能性があります。」

「晴明、その幻術使い・狗毘羅が何の目的で京の都に現れたのかは分からぬが…とにかくそいつがこの世を恐怖のどん底に陥らせるのは時間の問題だな…。」

「そうですね。ともかく、狗毘羅が何者なのか…何の目的で突如現れたのか…その真相を確かめようと思うのです。兄弟子、飛鳥と保允の事を…よろしくお願いします。」

「分かった…。」

「それと、もう一つ…兄弟子にお願いしたい儀がございます。」

「何だ…。」

「修練生の涼汰を…今回の旅に同行させようと思っておりますが…。」

「しかし、涼汰は陰陽寮に入ってまだ一年しか経っていないんだぞ。修練生である涼汰を連れていくなど…とてもじゃないが外出の許可を出す訳にはいかないな。晴明、申し訳ないが…今回の旅は涼汰を連れていくのは諦めるんだな…。」

しかし、晴明は頑として涼汰を何としてでも同行させたいと強く訴え…その条件として涼汰を旅が終わるまでに一人前の陰陽師にしてみせると正親に約束を誓うのであった。

「お願いです、兄弟子…。涼汰を必ずや一人前の陰陽師にする事を約束します。ですから、涼汰を旅の同行者として…同行の許可をお願いします。」

晴明は正親に対して土下座をしながら涼汰を旅の同行を懇願し、その熱意が通じたのか…正親は涼汰を連れていく事を許可していったのである。

「分かった…。晴明がそこまで涼汰の事を信頼しているのであれば、断る理由なんてなさそうだな…。」

「ありがとうございます…兄弟子。涼汰は私にとって…実の弟以上に頼り甲斐のある相棒の様な存在です。涼汰を守れるのは私だけですから…。」

「ふっ…晴明らしい台詞せりふだな。待ってろ、今すぐ涼汰を呼んでくるから…。」

そう言って、正親は奥から涼汰を呼び寄せ…晴明と共に旅に出る事を告げると、涼汰は喜んで晴明の下へ駆け寄ったのだった。

「兄上、また一緒に旅へ行けるのですね…。」

「ああ…。だが、今回の旅は…恐らく過酷な旅になるだろう。涼汰、どんな危険な事があっても…絶対に最後まで諦めるんじゃないぞ。」

「わかってますって…。どんな危険な事があろうとも、兄上を命懸けで守ってみせますから…。」

「ははっ、相変わらず威勢のいい事を言う奴だな…。よしっ、そうと決まれば…明日の朝出発するから、今日中に旅支度しておくんだぞ…。」

「分かりました…。」

涼汰は早速、自分の部屋に戻って旅支度を整え…その後晴明と共に正親に挨拶をしてから晴明の屋敷へ向かっていったのだった。

「いいか、涼汰…。道中の間は兄上ではなく〔お師匠様〕と呼ぶんだぞ。」

「兄上、どうしてお師匠様と呼ばなければならないんですか…。」

「これは、兄弟子から言い渡された事なんだが…修行中の身である涼汰は私の弟子と言う事になっているんだ。だから、当分の間は…と言うより旅が終わるまでの間は師匠と弟子として兄弟子より許可をもらっているから、時々厳しい事を言うかも知れないけど…我慢してくれ。」

「兄上…じゃなかった、お師匠様…この西堀涼汰、今回の旅が終わるまでお師匠様の指示に従います。」

「よくぞ申した…。それでこそ、我が弟子である事を…誇りに思うぞ。」

「お師匠様…。」

それからしばらくして、晴明たち五人は…帝より道中手形と路銀を受け取り、翌朝には京の都を出発し…目的地である八橋村へと向かうのであった。

「晴明殿、こうして我々だけで旅をするなど…何だか不思議な気分でございますな。」

「ああ…。だが、狗毘羅は何時いつ何処から現れるか分からないから…あえて薬種問屋・蓬来屋一行として諸国を旅しながら最終目的である幻術使い・狗毘羅を探すのだから、仕方がない事だ…。」

「なるほど…。この格好なら、周りから見てもまず怪しまれませんからね。」

「それで、晴明殿は蓬来屋の主人・徳右衛門…私と於呂血殿は番頭の助太郎と格介。隼人殿は蓬来屋の若旦那・朔太郎。そして涼汰は番頭見習いの巳之吉…。これだけ役者が揃えば、幾ら相手がどんな奴でも見破られる事はありません。」

「でも、この格好だと…馴れるまでに時間が掛かるんじゃないですか。」

「涼汰…じゃなかった、巳之吉。敵を欺くにはこの格好が一番なんだ…。大変かも知れないが、我慢してくれ…。」

「分かりました…。」

「さて、これから八橋村に向かう訳だが…いったい何故村が滅びたのか、その原因が果たして化け物の仕業なのかどうかを確かめ…その真相を明らかにしない限り、先に進むのは難しいだろう…。」

「とりあえず、近くの宿に泊まって…八橋村周辺を探索する事にしよう。」

「それがいいですね。疲れた体を癒すのにちょうどいいので、翌日から村周辺を調べましょう。」

「よし、そうと決まれば…明日はだいぶ忙しい一日になりそうだから、宿に泊まって鋭気を養おう…。」

『はい…。』

その日の夜、晴明たちは八橋村近くの宿に泊まり…しばらくすると晴明はある異変に気付くのであった。

「何だか、この近くで只ならぬ気配を感じる…。」

「晴明、どうした…。」

「いや、さっきから誰かに後をつけられている様な気がしてならないんだ。」

「まさか、狗毘羅が…。」

「違う…。あの木の陰から誰かに見られているのではないかと思っていたのだが…どうやら私の勘違いだったらしい。」

「そうか、それならいいのだが…ともかく明日は八橋村の周辺を調べるのだから…なるべく夜更かしは避けた方が良さそうだぞ。」

「そうですね。お師匠様もお休みになられては如何ですか…。」

「ああ…。」

そして晴明たちは、明日に備えて早めの就寝をするのであった…。


その翌日、八橋村では不可解な怪事件が発生し…村人全員が謎の死を遂げると言う奇妙な現象が起き、原因を調べてみてもその真相は謎のままなのだった。

それからしばらくして、晴明たちは八橋村に着くや否や…目の前には黒山の人だかりが集まっていて、只ならぬ怪事件と見抜いた晴明は早速調べてみると…遺体の傍に『天誅』と書かれた張り紙が置かれていたのだったが、果たしてこの張り紙に書かれた意味とは何なのか…。

そして次回、いよいよ晴明たちの前に史上最大の強敵が現れる…。







第三幕に続く…。


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