表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の作り方  作者: 水宮
第4章・悪い子が天使になる時
55/63

8・カフェ




神殺アダマンティンの剣をオモチャ呼ばわりされてソロモンが悔しそう。あたしもジュリエットの無双特異技能ユニークスキル・全叡智を甘く見ていた。


確かにこの世界(宇宙)には、レムリアだけではなく他の星にも数え切れないほどの文明があるはずだ。その中にはレムリアよりも遙かに優れた魔法や錬金術を持つ文明があってもおかしくない。



ベステトの神力を使ってジュリエットに対抗しようか?

駄目。今のあたしは神力がぎりぎりしか残っていないはず。ここで1回でも使ってしまうと最悪の場合、あたしは消滅してしまう事になる。




「私の持つこの2本の剣の名は回答報復者フラガラッハというの。惑星レムリアと同じ銀河系の中にある惑星ユグドラシルの異星人達の錬金術を利用して作り出した物よ。


惑星ユグドラシルには真金剛石アダマンタイトなんていう凄い鉱石はないの。それでも錬金技術力だけでこれほどの剣が作り出せる。この世界(宇宙)にはレムリアの錬金術など足元にも及ばないくらい優れた技術がいっぱい溢れているわ」


ジュリエットが得意げに説明してくれる。勝利を確信して余裕満々の態度だ。




「偉そうに説明してくださっていますが、それは貴女が考え出した技術ではありませんよね。全叡智の力で異星人達の知識と製造技術を盗み見たから作れたのでしょう?」


ソロモンが自分の傷を修復しながら意地悪な質問をジュリエットにする。負けず嫌いな性格だからね。自慢の神殺アダマンティンを折られて悔しいみたいだ。




「あら。それを貴方が言うの?貴方の作り出した神殺アダマンティンの剣なんか、神匠と呼ばれたドワーフからその能力を奪い取った錬金技術で作り出した物じゃない。可哀想に貴方に能力を奪い取られたドワーフは谷底に身を投げて死んでしまったわ。私は異星人達にそんな迷惑は一切かけていないもの」



うん。敵のジュリエットの言う事は正しい。ソロモンはあたしの大切な仲間だけれども、やっぱり悪人だね。



「セリカ。そこでジュリエットの言う事に納得して頷かないでください。私は貴女と生死を共にするパートナーなのですよ?」



「でもソロモンが悪い奴なのは本当の事だもの」


あたしが答えるとソロモンはがっくりと肩を落とした。



「それでは正義の味方のジュリエットが悪人を成敗してさしあげます」


2本の回答報復者フラガラッハをソロモンめがけて翳すと、ジュリエットが超加速をしてソロモンに襲いかかって来た。


その時、ソロモンに迫りくるジュリエットの背後の空間を引き裂いて、虹彩の鎖がジュリエットの体を拘束した。ジュリエットの死角になる位置に自分の右手をさりげなく置いて、そこからソロモンがオリハルコンの鎖を操作していたのだ。



「ジュリエット。貴女の体をその着ている鎧ごと切断します」



ジュリエットをがんじがらめに拘束した鎖の虹彩がひときわ輝きを増してその締め付ける力を増大させた。オリハルコンの鎖によって、ジュリエットの体がバラバラに切断されると思った瞬間、あたしは目を閉じてしまう。



「こんな貧弱な鎖で何をするというの?」


勝ち誇るジュリエットの声を聞いて瞼を開けると、そこにはバラバラに砕けたオリハルコンの破片が無数に散らばっていた。



「え、何がどうなったの?」


あたしが疑問を口にすると、ソロモンが悔しそうに歯噛みしながら答えてくれた。


「ジュリエットが鎖を引き千切ったのですよ。いくら何でもオリハルコン製の鎖を引き千切れる力がジュリエットにあるとは思いもしませんでしたね」



「私の力じゃないわ。私の着けているこの鎧のせいよ。この鎧は装着者を特異技能スキルや魔法の攻撃から守るだけではなく、装着者に巨神の膂力も与えてくれるの。ちなみにこの鎧も惑星ユグドラシルのヨツンヘイムという国の技術を利用して作っているわ」



「本当に凄い技術がたくさんあるようですね。一度、ユグドラシルという星に行ってみたくなりました」


ソロモンが悔しさを紛らわした微笑を浮かべながら呟くと、ジュリエットが本当に余裕の微笑を浮かべて答えてきた。


「それは駄目よ。貴方のようなお馬鹿が行ったら、ユグドラシルの皆さんが迷惑するでしょ?レムリアでも悪い事ばかりしている貴方には居る場所なんてどこにも無いのよ。貴方のようなクズはここで今死になさい」


万策尽きたソロモンにジュリエットが近づき、回答報復者フラガラッハの剣を超高速で振り下ろした。



回答報復者フラガラッハの剣がソロモンの体を脳天から真っ二つにしようとしたその瞬間、あたしは今持ち得る最高の切り札を切った。回答報復者フラガラッハごとジュリエットが消滅する。



「ソロモンは悪い奴だけれども、居る場所が無いなんて言わせない。もしも本当にソロモンに居場所が無いのなら、あたしがソロモンの居場所を作る」



ジュリエットの言い方が頭にきた。ソロモンを馬鹿にしたように言われると凄く腹が立つんだよね。



「セリカ。今のは何でしょうか?」


跡形も無く消滅したジュリエットの居た場所を指差してソロモンが訊いてきた。



「神の力だよ。残量わずかなのに使っちゃったよ」


目の前が真っ暗になり、あたしはその場で気を失った。








目が覚めるとあたしは誰かに抱きしめられていた。


ソロモンのお顔が見える。


「あ、ソロモン」そう口にしたつもりだったのに出てきた声は「みゅう」という仔猫の鳴き声だった。あ、そうか。神力を使ってしまったから省エネモードの黒い仔猫の姿に変身したんだね。でも、助かった。神力がわずかしかないのに使ってしまったから、てっきり消えちゃうかと思ったよ。



ソロモンを見るとどこかのお店のテーブルを挟んで向かい側に座っている。よく見るとソロモンのお顔が凄く怒っていた。


あれ?

ソロモンが向側に座っているという事はあたしを抱いているのはいったい誰なの?

見上げると優しい笑顔であたしを見下ろすルーカスのお顔があった。



ふえ?

どうしてルーカスがあたしを抱きしめているの?

それもよりにもよって、ソロモンの目の前で?


ルーカスがソロモンに殺されちゃう!



あたしは慌ててルーカスの腕の中から出ようとしたけれども体に力が入らない。まだ全然、神力が回復していないみたいだ。



「良かったピンク。少しだけど体が動くようになったみたいだね」


ルーカスが嬉しそうにあたしに話しかけてきた。

その名前で呼ばれるのは久しぶり。



「ピンクではありません。セリカです」


瞳に殺気の炎を揺らめかせながらソロモンが不機嫌そうな声で言った。



「何を言っているのですか?この子は僕がサウス・セリアンスロープの砂漠で拾ったピンクです。ほら、この胸の所にピンク色の宝石が付いているでしょう。こんな珍しい宝石が体に付いている仔猫なんて他にはいませんよ」



「セリカの胸にも付いている」


ソロモンがさらに不機嫌そうな声で答えた。もう声のトーンが低すぎて喧嘩を売っているようにしか聞こえない。



「そうなのですか?そういえば貴方のお連れさんのハーフ獣人の女の子も名前がセリカでしたよね。仔猫にまで同じ名前をつけるなんて、よほどあのハーフ獣人の女の子が好きなんですね。まあ、どちらもとても可愛いので気持ちは分かりますが」


あたしを抱きしめたままルーカスがそんな事を言う。「どちらもとても可愛い」ルーカスの言ったその言葉が頭の中でリフレインした。



「どちらもとても可愛いのは当たり前です。同一人物なのですから」


ソロモンも「どちらもとても可愛い」と言ってくれたけれどもこっちはリフレインしないなあ。それほど嬉しくならないし、いまさら恥ずかしいとは感じない。いつも言われていると慣れちゃうんだね。


そんな感想を抱いたあたしの心を読めるはずはないのに、ソロモンがじっと見つめてきたので、どきりとしてしまう。



意識がはっきりしてくるとここはお茶を飲みながら食事と会話を楽しむカフェだと気づく。お客さんが多くて結構繁盛している人気店らしい。



ぐったりしているあたしの背中をルーカスはずっと撫でてくれていた。一撫でごとにマナがあたしの中に入ってくるのを感じる。ちょっぴり元気が湧いてきたような気がした。



神力でジュリエットを消滅させてソロモンを救ったあたしは黒い仔猫の姿になって体も透明になりかけていたそうだ。ソロモンは黒い仔猫になってしまったあたしに驚き狼狽していた。そこにルーカスが駆けつけて来てあたしに触れてくれたらしい。


あたしをルーカスに触れられるのは嫌だけれども、彼が触れているとあたしに生気が甦ってくるようなので我慢してルーカスに仔猫のあたしを抱かせているそうだ。




「そろそろ本当の事を言って正体を見せてもらえませんか?」


優しい表情で撫でてくれるルーカスの手の温もりに蕩けそうになっていると、ソロモンが突き刺すような視線を送りながらルーカスに言った。



あたしの背中を撫でるルーカスの手の動きが止まる。


「本当の事?」


ルーカスの優しい表情が真剣なものに変わった。


「ソロモンは僕の正体に気づいているのですか?僕の正体を知りうるほどの存在・・・・・・まさか」



ルーカスが話している途中で、あたしの小さな体はルーカスの腕の中からソロモンの手の中に移った。ソロモンが超加速をしてルーカスからあたしを奪い取ったからだ。



「ピンクをどうするつもりです?僕にピンクを返してください!」



「ピンクではなくてセリカです。これ以上、セリカを貴方の手元に置いておくわけにはいきません」



「ソロモン。貴方はあの悪魔の仲間ではないのですか?」


ルーカスが壁際に立てかけていた鋼槍に手を伸ばしながらソロモンを睨んだ。



「何?」


弱ったままのあたしの体を左手にぶら下げて、ソロモンもルーカスを睨み返す。



「僕の正体を知り得る者など、全叡智の無双特異技能ユニークスキルを持つジュリエットを除いては、僕を封印した2柱の悪魔かそれに連なる者くらいです」



「ルーカス。どういうつもりです?訳の分からないことばかり口走って。それでセリカを取り戻せるとでも思っているのですか?」



「とぼけないでください。僕の本来の姿である神体はデミウルゴス山に封じられた。こうして魂だけは何とか生き延びましたが創造神としての力と能力の全てを失った僕が、これまでどれほど苦労してきたか封じた側の貴方には分からないでしょう」



鋼槍の鋭い矛先をソロモンに向けて叫ぶルーカスと、それを見返すソロモンの尋常ならざる雰囲気に危険を感じた店内のお客さんや従業員さんが遠巻きに様子を窺ったり、避難したりしている。憲兵に通報に向かった者もいるかもしれない。


あたしは相変わらず体に力が入らないのでソロモンの左手に掴まれたまま、ぶら下がっていた。




「本当に貴方達は悪魔ですね。僕のことを慕うジュリエットの気持ちを利用して、言う通りにしなければ僕を殺すとジュリエットを脅して従わせた!」



<ソロモン>


あたしの体を掴むソロモンに思念波を送る。



<セリカ、違います。ルーカスは何か思い違いをしているのでしょう。私を信じてください>



<うん、分かった。ソロモンがそう言うのなら信じる>



思念波を送ったらソロモンが驚いた表情であたしを見つめてきた。

そしてほんの一瞬だったけれども嬉しそうな表情になる。



ルーカスの鋼槍の先端がソロモンの心臓めがけて一直線に襲いかかった。

それをソロモンは難なく躱す。ルーカスの動きは普通の人間の動体視力では捉える事が困難なほどに素早い。でも、ソロモンはSランクの身体能力を持つ。


ルーカスの実力は、たった1人で100人の兵士と渡り合えると言われるほどのCランク。そのCランクもBランク・準英雄級の前では束になって掛かっても敵わない。そのBランクもAランク・英雄級の前では赤子同然。ましてSランクともなれば国々を簡単に滅ぼせるほどの力がある。


ルーカスの槍など直接体に当たってもかすり傷一つ付かないだろう。ソロモンがルーカスの槍の攻撃を避けたのは怪我を怖れたわけではなく服が破れるのを避けただけだろう。



「逃がすものか!」


ルーカスが全身全霊の力で放った鋼槍の先端をソロモンは右手の人差し指と親指でつまんで止めてしまった。



「なっ?!」


指先2本で自分の全力の突きを止められて驚くルーカスの鋼槍が霧散した。ソロモンの魔法だ。ソロモンの魔法によってルーカスの鋼の槍は一瞬で霧状にまで分解されてしまう。



「まだやるつもりならば次は貴方が槍と同じ運命を辿りますよ」


自慢の鋼槍が消滅してしまった衝撃にルーカスが震えていると、ソロモンが静かに言った。




<ソロモン。お願いだからルーカスを殺さないで>



<分かっていますよ。ルーカスはセリカにとって大切な人なのですよね。それに、私も彼には恩があります>


思念波で会話した後、ソロモンはルーカスの足元に跪いた。突然、恭順の意を示したソロモンにルーカスが驚きの声を上げる。


「な、何ですか!いきなり僕に跪いたりして?!」



「やはり私の事をお忘れですね。創造神である貴方様のお力で転生させてもらった者です。その時に能力奪取の無双特異技能ユニークスキルも頂いております」


ソロモンが恭しく答えると、ルーカスは首をひねって考え込み始めた。


え、能力奪取なんて凄い力を与えておきながら覚えていないの?




「ああ!」


しばらく考え込んだ後、両手を合わせるように叩きながらルーカスが声を上げた。思い出したらしい。


ルーカス。貴方、本当に忘れていたんだね。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ