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神様の作り方  作者: 水宮
第3章・侵略国家に黒い仔猫は砂をかけたい
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10・泥棒猫なんかじゃないもん





温かいシャワーが気持良い。アロマソープで全身を泡と薔薇の香りで包む。最後にお風呂に入ったのは獅子王のお屋敷だった。最上級のアロマソープとメイドさん達に囲まれて最高のお風呂だったはずなのに、あの時はエッチな獅子王のせいでバスタイムを楽しむどころじゃなかった。


アロマソープの香りを楽しみつつ髪と体を洗い、シャワーで泡を綺麗に落とすと、いよいよお浸かりタイム。


湯気のたちこめる温かい湯船に顎まで浸かりのんびり寛ぐ。


はふぅ。

癒される。




リラックスして頭を真っ白にする。

人は集中して考え事をしているつもりでいても、必ず余計な思考や知識の成分が混じる。物事の本質を見つける瞬間って大概は余計な成分が混じりにくいリラックス状態の時なんだよね。


これを知ったのは神羅万象を理解するベステトの知識を自分の中に取り込んだから。哲学の原因発見法の初歩。




ねえ。知識照合システム。



(はい。何ですか?)



貴女はどうして感情があるの?



(セリカを効果的に補助するためにこのような受け答えができるようにベステトがわたしを作ったからです)



じゃあさ。ベステトはどうして受け答えをできるように貴女を作らなくちゃいけなかったの?



(レムリアへの回廊を通る時、神力が枯渇気味だったので自分の意識を眠らせて少しでもマナの消費を抑えるためです)



でも、ルーカスと一緒だった時にマナは増えたよね。でもベステトは目覚めなかったよ。どうして?



(・・・・・・・)



無言なのはどうして?



(その答えをベステトの知識から抜き出そうとするとわたしはフリーズしてしまうのです。ですから答えられないのです)



そうだったんだ。



(はい。申し訳ありませんが、ベステトがその時に何を思っていたのかを検索しようとするとシステムが止まる仕様になっていますね)



意図的にベステトは自分の気持ちと考えを隠したという事になる。ここからは簡単だ。ベステトの心はあたしの心のコピーなのだから。


どんな状況に陥ったら、あたしは自分の気持ちと考えを隠すだろう?

どんな問題を抱えたら自らの意識を眠らせたままにしてしまうのだろう?



それは、自分の本来の意志とは無関係に違う事を自分がしてしまう場合だ。

それは思考を何者かによって操られている。或いは抗えないほどの力で体を勝手に動かされてしまっていると自分が気づいた時だろう。


体を勝手に動かされてしまうというのはひとまず選択肢から外して、思考を操られている可能性の検証をしてみる。



知識照合システム。



(はい。何ですか?)



あたしと貴女の双方の意識、潜在意識の感情の変化を読み取れるようにしなさい。



(はい。読み取れるようにしました)



ほんの僅かな反応の変化も見逃さない精度にした?



(はい。しました)



良くできました。では今から貴女とあたしでしりとりをしましょう。



(はい。しりとりをします)



しりとり中に出てくる無作為な言葉への意識、潜在意識双方の僅かな反応の変化も見逃さないようにしてね。



(はい。分かりました)



思考加速と並列思考増殖を発動して何十億、何百億通りもしりとりをします。

では、始めます。







「ふう」


背中をバスタブにあずけて寄りかかる。ちゃぷんと音を立ててお湯が揺れた。

今、あたしの頭の中では増殖させて切り離した並列思考が思考加速しながら知識照合システムを相手にしりとりをしている。数分とかからずに何十億、何百億回分のしりとりが行われるだろう。


その中であたし側が何度も反応したワードとベステトの知識照合システム側が何度も反応したワードを調べる。その反応の違いからキーワードが浮かび上がってくるかもしれない。洗脳の類なら意識下、無意識下で故意に避けたり、逆に無反応になる言葉が必ず有るはずだからね。



湯船の中で両足を伸ばし、足の指先をちゃぷちゃぷさせて遊んでいたら女性の声が聞こえてきた。若い女の子の声だった。


何?

千里眼を発動してバスルームの外の部屋を見ると、ストロベリーレッドの見事な赤毛にブラウンの瞳を持つ女の子がスイートルームの玄関扉でソロモンと話をしていた。



「ソロモン。どうして私を置いて行ってしまったの?貴方を見つけ出すのが大変だったんだから!」


ストロベリーレッドの長い髪をカチューシャで背中に流す女の子のおでこはつるつるしていて綺麗だった。オールバックのヘアスタイルはポジティブな性格でしかも自分が美人だと自覚していないとできない髪型なんだよね。この子は自分に自信がある。



「どうしてと言われましても。そもそも、私が移動するのにどうして貴女に断わりを入れなければならないのですか?」


ソロモンのグレーの瞳がお魚の目になっている。あたしと話していた時はあんなに生き生きとしていたのに。その声も乾いた抑揚の無いもので女の子に対して一欠けらの好意も感じられない。


感情の無い表情と声で対応するソロモンに女の子はほんの一瞬、眉を下げて怯んだ心をみせたけれどもすぐに眉を上げて口を開いた。


「私が貴方を気に入っているからに決まっています!私が自分で言うのも憚れますが、これは貴方にとっても良い事!私と添い遂げてくれるなら後悔はさせません!」


うわっ!

凄い口説き文句。

でもこれって普通は男性が女性にするプロポーズの言葉だよね?

逆になってない?



「お断りします。何度も申し上げましたが私は貴女に何の興味もありません。どうかお引き取りください。マーガレット様」


ソロモンは取りつく島も無い。でも、マーガレットと呼ばれた女の子の瞳に諦めの色は無い。むしろ燃えあがって挑戦的に輝いているよ。精神が強いなぁ。



「ソロモン。貴方は分かっていない。私に愛される事がどれほどに貴重で得難いものであるかを。私に言い寄る男達は有能な高官から上級貴族まで五万といます。世の男達は皆正しく私の価値を理解しているのに、どうして貴方だけはそれが理解できないの?」



「貴女の価値を理解できない私のような愚か者などさっさと見切りをつけて、貴女の価値を正しく理解している方々を選べば良いではないですか」



「嫌です。ソロモンじゃなければ嫌なの。私はソロモンが良いの!ソロモンの事が好きなの!」



「私はマーガレット様を好きではありません。そろそろ私の同行者がバスルームから出てくるかもしれませんのでお引き取りください」



「同行者?貴方、今までずっとソロで活動していたでしょ。いつの間に仲間を作ったの?」



「今日です」



「えー!今までずっと一匹狼の冒険者だったじゃない。どうせ仲間を作るなら私にしなさいよ。私ほど仲間として頼れる相手はいないでしょ」



「いえ、結構です。私は彼女でなければ他の誰とも組みたくはありません」



「彼女?今、彼女って言った?まさかソロモンが仲間にした人って女性なの?!」



「はい。それが何か?」



「信じられない!」


マーガレットさんがソロモンを押しのけ部屋の中に入って来る。そしてあたしの居るバスルームを開けて、凄い剣幕で叫んできた。


「なんて恥知らずな!自分から男性をメイクラブに誘うなんて。この泥棒猫!」



いきなり意味が分からない。あたしがいつ自分から男性にエッチを誘ったというの?泥棒猫って言い方もひどい。猫なのは合っているけれども。


というか今、あたしは裸でお風呂に入っている所を見られて恥ずかしいのですけれども。相手が同性でも無防備な裸の姿を見られるのはとても恥ずかしい。



「黙っていないで何とか言ったらどうなの?女と男が同じ部屋にいて女性がお風呂に入るのはメイクラブの誘い以外にないじゃない。夫婦や婚約者ならともかく、恋人同士でもできない破廉恥な行いを貴女はするのね。何て恥知らずなの!」



え、そうなの?

本当かな?とりあえずベステトの知識を照合。



答えが出た。

マーガレットさんの言っている事は本当にこの世界の常識だった。というか、アトランティス大陸だけではなく地球でも案外そういう意味があるらしい。


うう。

この世界の常識だと婚約者くらいの親密な関係にならなければやらないエッチの誘いを、あたしはソロモンにした事になる。


湯船に浸かって赤く染まった自分の頬が、羞恥心でさらに熱を帯びて赤くなるのを自覚する。



その時、マーガレットさんがあたしに向かって鑑定の特異技能スキルを発動させようとしているオーラが見えた。刹那、思考加速をして隠匿と偽造を発動する。



セリカ


種族・ネコ科ハーフ獣人。


レベル・20。


魔力・120。

体力・210。

速さ・220。

力 ・200。


特異技能スキル

千里眼・レベル12。

風操魔術・レベル12。

鑑定  ・レベル12。

超聴覚 ・レベル12。

俊足  ・レベル11。

跳躍  ・レベル11。

爪牙撃 ・レベル10。

金毛防御・レベル10。




「ふーん。一応はCランク上位の実力はあるみたいね。でも私に比べたら足元にも及ばないじゃない。貴女みたいな泥棒猫はさっさとここから出て行きなさい」



マーガレットさんが見ている今のあたしのステータスは偽造したもの。Cランク上位くらいの強さに見えるようにあえて設定した。さっさとここから出て行けと言われても貴女があたしの目の前にいるから湯船から出られないのですけれども。



そこにソロモンが現れる。

あたしは悲鳴をあげてお湯の中に潜って隠れた。



「自分から破廉恥な行為でソロモンのことを誘っておいて。何を今更しらじらしい」


お湯に隠れたあたしに向かってマーガレットさんが蔑んだ目と声で言った。

やめてよ。お湯の中に潜っていても聞こえるし見えるんだから。

それでなくともソロモンがバスルームに入ってきたから、恥ずかしすぎて頭の中が羞恥心と驚きで混乱しそうなのに。


<ソロモン!>


あたしは思念波でソロモンに呼びかけた。



<はい。どうしました、セリカ?>


ソロモンが応えてくれる。



<恥ずかしいからあっち行って!>



<でも、このままだとマーガレットが出て行ってくれませんよ?>



<だったらせめて、マーガレットさんをバスルームから連れ出して!>



<私も今、それを考えているところだったのですが難問です。この人は唯我独尊なので人の言う事を聞きません>



<あう。それじゃ、いつまでたってもあたしはお風呂から出られないよ>



<面倒なのでこの際、マーガレットを消してしまいましょうか?>



<な、何て事を言うの!>



<セリカを困らせる人は邪魔ですので。ちょっとしつこいと感じていましたしね。ちょうど良いのでこの場で消し去ります>






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